見もの・読みもの日記

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社会学の立場から/思想地図 Vol.5:特集・社会の批評

2010-04-20 23:51:30 | 読んだもの(書籍)
○東浩紀、北田暁大編『思想地図』Vol.5:特集・社会の批評(NHKブックス別巻) 日本放送出版協会 2010.3

 冒頭には、野中広務、姜尚中、森達也、北田暁大氏(司会)による「共同討議・闘いとしての政治/信念としての政治」が2段組み・約40ページにわたって再録されている。昨年12月14日、東大で行われたイベントだ。当日は、野中さんが喋りまくりだったので(面白かったけど)、どうまとめるんだろう?と思っていたが、当日の司会だった北田さんが、大幅な解説を加筆して、なんとか形をつけている(笑)。興味のある方は、当日の様子と、読み比べてほしい。

 本書には、もうひとつ、私の注目する討議が収録されている。橋本健二、原武史、北田暁大氏による「東京の政治学/社会学」だ。橋本さんと原さんは初対面なのかあ。中央線系知識人(丸山真男、竹内好)と西武線系知識人(和田春樹とか)の違い、中央線の勉強会文化(公民館を舞台に若いミセスが集まる)と西武線の団地文化(団地の自治会・集会所を舞台に専業主婦が政治に目覚める)など、面白い指摘がいっぱい。

 ふたつの共同討議が具体的な問題に根ざしているのに対して、今号のほかの論考は、全般に概念的・理論的なものが多い。今号のテーマ「社会の批評」は、私なりに敷衍すると「学問としての社会学は、現実社会を批評(分析)できるのか?」ということだと思う。社会は物理的対象でもなく、「作品」でもない。他の社会科学(法学、経済学)では、ある程度対象領域を限定することができるのに対し、社会学では、それがなかなか難しいのだという。

 あと、個別素材、たとえばジャニーズをある学生が分析しようとするとき、同じゼミに、その人よりもジャニーズについて詳しい人がいることはめったにない、というのは、苦笑してしまった。確かにそうだろう。指導する教師も大変である。ふだん、ジャーナリスティックな社会批評を消費しているだけの門外漢には、分かりにくいところもあるが、責任編集の北田暁大氏が、今号の見取り図として書いた「社会の批評」は、社会学者のジレンマに真正面から取り組んだ論考である。堅実でボリュームのあるブックガイドつき。

 佐藤俊樹氏の「サブカルチャー/社会学の非対称性と批評のゆくえ」では、「共同体の解体」とか「大きな物語の失効」とか、私のような素人が飛びつきがちな説明原理が、実は「百年ぐらい前からいわれてきた」ものだという指摘に、唖然としてしまった。どんな世界でも、売れる(受ける)作品≒説明原理にはそれなりの価値がある。しかし、人気作品『ONE PIECE』や『NANA』で現代マンガを語ることができないように、「解体論」の図式で現代社会が描かれることに、多くの社会学者は違和感を持っているという。この、世間と学問世界のディスコミュニケーションは大きいなあ。

 個別題材を論じたものでは、東園子の「やおい」論(腐女子は妄想の共有によって女同士の絆を楽しんでいる)、瓜生吉則の本宮ひろ志論、それから、政治学界の若手研究者のポスト問題を赤裸々に論じた菅原琢が面白かった。

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