見もの・読みもの日記

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過ぎ行く時を愛しむ/中華ドラマ『那年花開月正圓』

2018-12-06 22:03:42 | 見たもの(Webサイト・TV)
〇『那年花開月正圓』全74集(2017年、華娯楽投資集団股份有限公司)

 中華圏での高評価を聞いていたところに、今年8月からチャンネル銀河が放映を始め(邦題:月に咲く花の如く)、日本の視聴者の間でも話題になっていることが分かった。これは見たほうがいいなと思ってネットで原版の視聴を始め、日本放映の最終回に少し遅れて、完走することができた。

 時代は清朝末期。陝西省涇陽(現在の咸陽市)に実在した呉氏のファミリー・ヒストリーを基にしている。孤児の周瑩は、養父の周老四とともに大道芸と詐欺で気ままに各地を渡り歩いていた。涇陽に至った周老四は、周瑩を商家の沈家に下働きとして売り、時期が来たら二人で逃げ出す計画を立てる。ところが沈家の次男・星移は周瑩を見初めてしまう。全くその気のない周瑩は、沈家を逃げ出し、呉家東院の若旦那・呉聘に助けられる。

 呉家は沈家のライバルでもある大商家。呉家東院では商人を志す若者たちのために私塾を開いていた。講義を立ち聞きして、商売に興味を抱く周瑩。その溌剌とした姿に呉聘は惹かれていく。呉家東院の当主・呉蔚文は周瑩の才能を認めつつ、商売には「誠信」が必要であることを厳しく教え込む。この序盤では「あさが来た」みたいな女商人の成功物語になるのかなと思っていたら、もっとどす黒い陰謀が渦巻き、善人も悪人もどんどん死に、推理・復讐・冒険活劇、剣撃あり、ビジネスバトルあり、波乱万丈の展開が待っていた。もちろん笑いとロマンスも。

 あるとき、軍に納品した薬材の偽造疑惑に端を発し、呉聘が暴漢に襲われ、意識不明となる。占いによれば、酉の刻に婚礼を挙げれば助かるというので、呉聘の許嫁・胡詠梅に使者が差し向けられるが、父の胡志存は呉家の将来に不安を感じて娘の嫁入りを許さない。花嫁が来ないと分かって落胆する呉家の人々。思わず周瑩が「我来!」と名乗りをあげてしまう。そして奇跡的に意識を取り戻した呉聘。周瑩は呉家東院の「少奶奶」(若奥様)になるが、礼儀も教養も知らないため、呉家の人々とさまざまな軋轢を起こす。沈星移は周瑩の奪還を諦めず、沈星移の父・沈四海は、貝勒爺(実在の皇族・載漪)に仕える杜明礼によって次第に悪の道に落ちていく。

 やがて呉聘の急死(毒殺)、呉蔚文の逮捕と獄死という不幸が呉家を襲う。災いをもたらす「災星」呼ばわりをされる周瑩。お腹にやどっていた呉聘の遺児を流産し、命も奪われかけるが、養父・周老四と沈星移に救われ、呉家の再建に乗り出す。以後、時には販路を求めて迪化(ウルムチ)まで旅をし、機械式の織布局を立ち上げ、上海で西洋人との取引を勝ち取り、呉家の繁栄を確かなものにする。さらに夫・呉聘を殺害し、義父・呉蔚文を誣告した真犯人も突き止める。一方、沈家のわがまま次男坊だった星移も少しずつ成長していく。上海に出て商売を覚え、新しい文明を知り、「変法」と「革命」に関心を抱く。変わらないのは周瑩への思い。周瑩もそんな星移に惹かれているのに、なかなか二人は一緒になれない。敢えて書かないが、最後の最後まで結末が読めず、わくわくハラハラし続けた。

 登場する男性が次々に周瑩に惚れてしまうのだが、それをご都合主義に感じさせない魅力が周瑩(孫儷)の造形にあった。最初の夫・呉聘(何潤東)は、いかにも大家の若旦那らしい、おおらかでまっすぐで温かな人柄。呉家の人々に殺されかけた周瑩が、思い出の呉家を離れることができず、その再建に奮闘する気持ちは分かる。沈星移(陳曉)は、変化していくキャラクターが面白い。そのほかにも、ウルムチで出会った西域人の大富豪・図爾丹(トゥーアルダン)(高聖遠)は真正面から周瑩にプロポーズする。呉家東院の管家(番頭)となる王世均(李沢鋒)は、思慕の情を抑えて周瑩に忠誠を尽くす。涇陽の県令として登場し、陝西巡撫まで出世する趙白石(任重)も、万事型破りの周瑩に次第に惹かれていく。はじめはみんな子供のように好き嫌いの感情に動かされるのだが、ストーリーの進展とともに、それぞれが自立した大人として、相手を思いやれる関係に変わっていくのが味わい深かった。

 もうひとり、印象的だった男性キャラは、杜明礼(俞灝明)。沈四海に悪どい商売をさせて利益の上前をはね、ボスの貝勒爺に献上して、地位の保全に腐心している。小心で貪欲。その一方、呉聘の許嫁だった胡詠梅に、純な恋心を抱き続ける。人並みの幸せを望めない境遇であるがゆえに、ひたすら金銭に執着する姿は、心を許した相棒の査坤(李藝科)とともに哀れを誘った。

 以上には、私の知っている俳優さんがひとりもいないのだが、周老四役の劉佩琦さんは、どこかで見たことがあると思ったら、映画『北京ヴァイオリン』(原題:和你在一起)のお父さんだった。本作でも、大ぼら吹きで手癖も悪いが、どこか憎めない父親を演じている。ウルムチで西域人に化けて、あやしい中国語をあやつる姿には大爆笑。沈四海役の謝君豪さんが『三国機密』の曹操だったことも、調べるまで気づかなかった。

 終盤、義和団事件の影響で北京から西安に落ちのびた西太后と光緒帝が、涇陽の呉家東院に滞在するエピソードがある。御前に召された周瑩は「父祖の伝統も大切だが、西洋の文物も悪くない」と述べて不興を買ってしまうが、涇陽からの去り際、西太后は周瑩に暖かい言葉をかける。確か、その後の西太后は、積極的に西洋文明を取り入れるようになったはずで、うまい史実の取り入れ方だなと思った。

 なお、中国語の原題はストレートに訳しにくいが、英文の副題「Nothing Gold Can Stay」はきれいな訳だと思う。アメリカの詩人ロバート・フロストの詩の一節で、美しいもの(善きもの)は儚い、という意味らしい。大切な人に何度も先立たれながら、短い生涯を生きた周瑩を見事に象徴している。

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