見もの・読みもの日記

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手軽な甘いもの/日本まんじゅう紀行(弟子吉治郎)

2018-07-18 23:04:39 | 読んだもの(書籍)
〇弟子吉治郎『日本まんじゅう紀行』 青弓社 2017.7

 今月は仕事が忙しいのと、暑くて体力がもたないので、なかなか読書ができない。読み終えても感想を書く時間がない。こういうときは、ゆるく付き合えるグルメ本から。類書がいろいろある中で本書を選んだのは、たまたま開いたページに載っていたのが、私の全く知らない饅頭だったからである。

 珍しい名字の著者は、滋賀県米原市のまんじゅう屋の生まれで、毎日毎日まんじゅう屋の空気を吸って育ったのだという。へええ滋賀県か。滋賀県びいきの私は「はじめに」を読んで、俄然、親しみを感じた。著者が「まんじゅう」と呼ぶものの範囲はかなり広く、本書は、あんこを小麦粉の生地でつくった皮でくるんで蒸した、いわゆる「饅頭」から、どら焼き、最中、羊羹、きんつば、団子、ぼた餅、大幅など、かなり広範囲の「甘いもの」を扱っている。ただ、著者にとってそれらは、黒文字で気取っていただく「和菓子」と別カテゴリーにあるという意味で、すべて「まんじゅう」なのである。

 著者は元来、つくる側にいた人なので、どこでも原材料やつくりかたの取材に熱心なのが興味深い。ある店は上白糖でなくグラニュー糖を使っているとか、ある店はきび砂糖をブレンドしているとか、白双糖(しろざらとう)を使っているとか…個々の違いはよく分からないのだが、工夫があるものなのだなあと感心する。

 全国各地の「まんじゅう」が50種以上紹介されており、こうしたグルメ本で必ず名前の挙がる名店・銘菓と、聞いたことのないものが半々くらいの印象だった。書店で最初に開いたページに載っていたのは、広島県呉市の天明堂がつくっている「鳳梨萬頭(おんらいまんとう)」である。中華風の雷文を控えめに配したパッケージといい名前といい、これはパイナップルケーキではないか。造船の町、海軍の町で、こんな「まんじゅう」がつくられている(しかも呉でしか買えない)ことを知らなかったので、とても驚いた。いつかきっと食べてみたい。そして由来が知りたい。

 やっぱり著者の地元である滋賀県については詳しい。長浜市一帯でつくられているという「がらたて」及び「親玉まんじゅう」は食べてみたいと思った。三重県亀山市の前田屋製菓の「志ら玉」、桑名市の永餅屋老舗の「安永餅」、大阪府堺市の八尾源来弘堂の「肉桂餅」、大阪・北浜の菊壽堂の「高麗餅」など、関西圏の情報が充実している。

 その一方、神楽坂のマンヂウカフェ(ムギマル2)とか築地市場の福茂(茂助だんご本店)とか東京・新川の翠江堂の苺大福の情報もありがたかった。よしよし、ぜひ行ってみよう。

 あと、ぼた餅が牡丹餅であることは知っていたが、蕪村に「命婦よりぼた餅たばす彼岸哉」という句があること、「棚からぼた餅」の「棚」は「店(たな)」で、大きな店の出入り職人が何かの行事でぼた餅を貰ってきたので、家族で大喜びするさまであろうこと、「ぼた」はぼたっとしていることで、女官の間であまり美しくない女官を「ぼた」と呼んだことなど、思わぬ知識を仕入れることができて興奮した。しかし、(江戸時代の)宮中に、特別美味しいぼた餅がつくれるほど、高価な砂糖がふんだんにあったのかどうかは疑問である。最後に、本書が青弓社の出版というのも興味深かった。

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