見もの・読みもの日記

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なごみの白磁/朝鮮陶磁(日本民芸館)

2010-04-18 23:21:52 | 行ったもの(美術館・見仏)
日本民芸館 『朝鮮陶磁-柳宗悦没後50年記念展』(2010年4月1日~6月27日)

 私ごとだが、転勤に伴う引っ越し先を決めた。結局、3年前まで住んでいたところの近くに戻ることにした。代々木上原が徒歩圏内で、もう少し、てくてく歩いて行くと、日本民芸館に出る。戸栗美術館やBunkamuraにも、歩いていけないこともない。根津美術館へのアクセスもよくて、私の休日には最適のロケーションなのである。

 その日本民芸館では、朝鮮の美術を愛した柳宗悦の没後50年を記念して、同館所蔵の朝鮮陶磁、約270点が展示されている。水滴、化粧皿などの小品も多いので、数には驚かなくていいが、さすがに質は高い。チケット売り場で「2階に上がって左奥の展示室からご覧ください」と案内されたが、まあ、そう焦らずに。私は、企画ごとに一変する、玄関ホールの雰囲気が大好きなのだ。今回は、大階段の左右の展示ケースには、白磁(文様なし)の小品が並んでおり、壁には独特の朝鮮絵画(民画、文字画)、2階へ向かう階段の踊り場には、すらりと形のいい細身の箪笥が立っている。

 目が釘付けになったのは、左手の展示ケースの最下段に飾られていた『孤山戯墨 尹善道筆』という書帖(法帖)。生気とスピード感にあふれ、のびのびした草書は、完全に私好みである。調べてみたら、尹善道(ユンソンド、1587-1671、孤山は号)は、朝鮮時代の三大詩人の一人。時運に恵まれず、19年間を僻地を転々しながら過ごしたって、杜甫みたいだなあ。このひとの名前、覚えておこう。

 さて、案内に従って、2階奥の、いちばん大きい展示室に入ろうとして、はっとした。壁に沿って、点々と設置された展示ケースは、全て木製で、展示ケースというより、使い込まれた家具の趣き。展示ケースの間には、実際に朝鮮家具の箪笥や絵画も飾られていて、個人宅の広間に通されたようだ。ライティングは自然の明るさに近い。というか、見上げると、細い天窓から自然光が差し込んでいる。最近の美術館は、暗くて無機質で、作品ばかりにスポットライトを当てて鑑賞する空間が主流だけど、あれは度を過ぎると疲れる。こういう、普通の暮らしの延長にあるような展示室も、心なごんでいいものだと思う。中央の椅子とテーブルでもくつろげるし。この大展示室に飾られていたのは全て白磁(文様あり)。私は、赤錆色の辰砂で絵付けをしたものが好きだ(葡萄文とか虎鵲文とか)。黒い鉄砂の絵付けもいいけど、これは色が薄いほうが味があると思う。

 大展示室の外には、黒釉、鉄釉、飴釉などの陶磁が飾られていた。また、別の展示室には「高麗時代・朝鮮時代前半」の陶磁が特集されており、李朝(朝鮮)白磁に対して、前時代の高麗は青磁(ただし、珠光青磁みたいな灰緑色)が主だったことを学んだ。絵付けにしても掻き落としにしても、余白をとらず文様で全体を埋めつくすタイプが多い。今日、韓国土産の定番となっている青磁象嵌(私もティーカップをひとつ持っている)も、高麗時代に発達した古い技法なんだな。見ていて楽しいのは、形態がバラエティに富む水注と水滴。私のお気に入りは、元気よく体を反らせた鯉の水注(浅川巧蒐集)。目の下に施された辰砂釉が、頬を染めているようだ。あと、ポンポコ饅頭みたいな狸の水注。平たい尻尾はビーバーにも見える。

 陶磁器以外にも、いろいろ見どころあり。『絹本狗子図 李厳静仲筆』(桜の枝の下に、黒、白、灰色っぽい3匹の仔犬)は、栃木県立美術館の『朝鮮王朝の絵画と日本』展に『花下遊狗図』として出品されたものかな? 民画の『瀟湘八景図』(「洞庭秋月」と「平沙落雁」の2幅)は、すごい破壊力だった。なぜ大津絵並みの画力で、この格式ある画題を描こうと思ったのか、謎である。掲示板ふうには「wwwww」としかコメントしようがない。いや、愛情表現としてね。同じ意味で『山中閑談図』も好きだ。よく見ると小さい字で「飛流直下三千尺 疑是銀河落九天(疑うらくは是れ 銀河の九天より落つるかと)」(お、李白だ)という書き入れがあるが、画中のどれが滝なんだか、不明。

 なお、本展は、めずらしく展示図録がつくられて売られている。しかし、写真はいいんだけど、解説が物足りなかったのと、陶磁器以外にも興味があったので、『日本民芸館所蔵 李朝の工芸』(そごう美術館発行、2002年)のほうを買ってしまった。引っ越し荷造りの最中なのに…。

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