見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2011歳末のんびり奈良・京都:奈良公園

2011-12-29 12:24:08 | 行ったもの(美術館・見仏)
○奈良公園:春日大社~東大寺~奈良国立博物館

 関西に来るときは、博物館の特別展だの秘仏公開だの、いつも目的に縛られて、駆け足になるので、年に1回くらいは罪滅ぼしの平常心旅行。朝の空気が温まり始めた頃に起き出して、奈良公園に向かう。



 以前なら、まっすぐ東大寺境内に入るところだが、昨年(2010)末に春日大社権宮司の岡本彰夫さんの本を読み、今年の秋は根津美術館で『春日の風景』展を見るなど、最近、親しみの増した春日大社に向かう。参道を歩きながら「春日曼荼羅でいうと、あのへんだな…」と描かれた風景が頭に浮かぶのが、味わい深くて楽しい。

春日大社宝物殿 特別公開『春日権現験記の世界-絵巻に中世人の息吹が見える-』(2011年10月1日~2012年1月22日)

 春日大社宝物殿も、いつも割愛していたので、これが初訪問。『春日権現験記』(または春日権現験記絵、鎌倉時代末)の原本は、明治時代に皇室に献上された名宝であるが、春日大社は、田安宗武・松平定信によって制作された模写本を所蔵する(もと桑名本、1982年に同社に奉納されて以降は、春日本と称する)。私は、江戸時代の模写本と聞いて、軽く考えてきたが、春日本はすごく質が高い。数えてみたら、本展には全20巻のうち、16巻が展示されていた。

 ただ『春日権現験記』20巻は、春日大社の霊験説話のアンソロジーであるのに、各巻が一部しか開いていないので、パネルの説明などを読まないと、場面の意味が分かりにくいのは残念である。そのため、絵画としての完成度が高いわりにファンが増えないのだろう。今回、私は宝物殿で売っていた60ページほどの冊子『春日権現験記』を買って来た。各巻のあらすじと名場面がコンパクトにまとまっていて便利である。

 本殿を拝し(幣殿・舞殿から遙拝)、若宮神社(修復工事中)にも参拝。背後の鬱蒼とした森が御蓋山(みかさやま)なのだな、と地図で確認する。しかし、冬でも木々が茂りすぎて「御蓋」のかたちは分かりにくい。水谷神社・水谷茶屋を通って、春日大社の境内を離れる。若草山、手向山八幡宮を経ると、東大寺の三月堂(法華堂)が見えてくる。※補記しておくと、春日大社ホームページの「境内のご案内」は、書き手の人柄がうかがわれるような文章で、いいと思う。

東大寺:三月堂(法華堂)~四月堂~二月堂~大仏殿~戒壇堂

 あ!三月堂が閉まっている…。



 この秋、東大寺ミュージアムで不空羂索観音と日光、月光菩薩を拝見したときは、あれ?三月堂はどうなっているんだろう?と思ったが、確かめにまわる時間がなかった。やっぱり、完全に拝観停止になっていたのか。



 堂前の立て看板には「法華堂は国庫補助修理事業のため、平成25(2013)年3月末迄拝観停止です」「但し、本尊 不空羂索観音菩薩立像は、ミュージアムに仮安置されています」とある。はあ、そうかあ…。いずれにしても私が好きだったのは、三月堂の仏像というより、あの空間だったんだなあ、ということをしみじみ感じる。

 それから拝観できるお堂をゆっくり巡る。四月堂に「三月堂のご朱印も受け付けます」旨の貼り紙がしてあったが、止めておく。二月堂の今日のご朱印は「観音力」だったが、ちらりと横を見たら、隣りのおじさんは「観自在」を書いていた。書き手によって異なるのかな。誰もいない二月堂の裏にまわったら、若いお坊さんが護摩を焚いている背中が見えた。

 戒壇堂(戒壇院)には久しぶりに寄った。ここの四天王は、もちろん正面もいいのだが、これほど横顔のいい仏像は他にないなあと思って、うっとり眺める。それにしてもご朱印が、宝珠の中に、たぶん釈迦如来と多宝如来を表す梵字二文字なのに、墨書が「国宝四天王」ってどうよ、と思ってしまう。

奈良国立博物館 特別陳列『おん祭と春日信仰の美術』(2011年12月6日~2012年1月15日)ほか

 12~1月の『おん祭』は、2~3月の『お水取り』と並んで、奈良博恒例の特別陳列だが、見に来たのは初めてのこと。春日大社所蔵の『競馬図屏風』(16世紀。おん祭の競馬を描いたものではないが、競馬図屏風の最古例。乗尻の衣装が、5月の賀茂の競馬で見たものと同じだった!)、岡本彰夫さんの本にも出てきた『春日赤童子像』など、古物も面白かったが、むしろ現在のおん祭風景を紹介する写真パネルに見入ってしまった。私は、深夜に行われる遷幸の儀(せんこうのぎ)のイメージしか持っていなかったが、へえー17日の午後は流鏑馬があったり、相撲があったり、神楽・田楽があったりするのか。知らなかった。見てみたいが、2012年のカレンダーでは平日に当たってしまう。次の機会を逃さないようにしよう。

 名品展では、『写経手鑑 紫の水』が印象に残った。写経だけを集めた(古文書1件を含む)手鑑で、類品に比べて1枚ごとの行数が多いのが特徴である。あと、最近どこかで見逃した『子島曼荼羅』が見られたのも嬉しかった。

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