見もの・読みもの日記

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リアル?虚構?/三国志(東京国立博物館)

2019-08-26 00:22:07 | 行ったもの(美術館・見仏)

東京国立博物館 日中文化交流協定締結40周年記念特別展『三国志』(2019年7月9日~9月16日)

 「本展は『リアル三国志』を合言葉に、漢から三国の時代の文物を最新の成果によって読み解きます」という宣言を読んで、すごく期待していたのだが、結局「リアル」と「虚構」のどっちつかずの印象が残った。展示作品リストに掲載されている文物は160点余り。全て中国各地の博物館の所蔵品である。1箇所や2箇所でなくて非常に多くの博物館、省級以上と思われるところだけでも、上海、内蒙古、天津、山東、甘粛省、雲南省、遼寧省、武漢、南京など中国全土に及び、かなり力の入った企画であることは分かる。

 ただ、やはり日本人の(だけではないかも)観客の「親しみやすさ」を重視したのか、展示は明清代の壁画や図巻や塑像によって「伝説のなかの三国志」を提示するところから始まる。写真は河南省・新郷市の関羽像(明、15~16世紀)。「16世紀以降顕著となる武神としての神格表現はまだ認められない」という。神格表現が顕著でない段階で、何のためにこんな「美関羽」を造像したのだろう。不思議だ。

 あと展示室の要所要所には、横山光輝のマンガ『三国志』の原画や、NHKの人形劇『三国志』で使われた川本喜八郎の人形も飾られていた。写真は曹丕なのだが、なぜ海老柄のエプロンみたいなものを付けているのだろう。

 私は横山光輝のマンガもNHK人形劇も素通りして今日に至っているので、これらを見ても、う~ん何だか余計なものを、という感想しか持たなかった。

 印象に残った展示品は、まず「弩」。時代は違うけど、ちょうど「長安十二時辰」を見終わったばかりだったので。呉の出土品(弓は復元)である。

 鉤鑲(こうじょう)。盾の一種で、戟に対して効果を発揮したが、戟が主要な武器でなくなる南北朝以降、姿を消す。曹丕は一対の鉤鑲を両手で扱う武芸を学んだと解説にあり、そんな描写あったかしら?と最近見た中国の古装劇を思い出している。

 私は曹操・曹丕びいきなので、2008年から2009年にかけて発掘された曹操高陵(西高穴二号墓、河南省安陽市)に関する展示はたいへん興味深く見た。白磁の罐(貯蔵用の器)の美しさよ。白磁の誕生は6世紀後半(隋代)と言われているが、突発的にこうした器が生まれてもおかしくないという。奇跡のようなものだろうなあ。

 そしてこれが、曹操墓の決め手となった石牌。「魏武王常所用挌虎大戟」と刻まれているのだ。いや~まさか日本にいながらにして、これを拝めるとは!!

 図録には河南省文物局外事処の陳彦堂氏による解説「曹操高陵の考古発見と研究」が収録されており、それによれば、副葬品の修復作業は現在も続けられているそうである。将来的にはさらなる発見があるかもしれないというのが嬉しい。あと斜め読みしているだけだが、中国社会科学院考古研究所の朱岩石氏の「近年における三国時代考古学の新発見」も興味深い。三国時代の考古学の発見はこれからも続くだろうとのこと。長生きして見守らなければ。

 ひとつ言っておくと、司馬氏への言及がほぼなかったことは大いに不満。最後は「晋平呉天下太平」の文字のある磚(南京市博物館)でうまく幕を閉じていたけれど、司馬氏関係の考古文物をもう少し見たかった(単独で日本で見られる機会はないだろうと思うので)。


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