見もの・読みもの日記

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コレクターの愛好品/大津絵(東京ステーションギャラリー)

2020-10-18 23:13:43 | 行ったもの(美術館・見仏)

東京ステーションギャラリー 『もうひとつの江戸絵画 大津絵』(2020年9月19日~11月8日)

 大津絵というものを知ったのはいつだったろう? ぼんやり覚えているには、大学生の頃、関西方面にふらりと旅行に行くのが好きで、その頃、持っていた大津周辺のガイドブックに「大津絵の店」が載っていて、三井寺(園城寺)に行ったら、必ず寄ろうと思っていた。三井寺の境内にも大津絵を売っているお店があると書いてあって、確か私は三井寺の境内で、藤娘を描いた小さな色紙を買って、かなり長いこと、部屋に飾っていた。私にとっての大津絵は、美術品というと口はばったいが、生活を彩る工芸品だと思っていた。

 だから、本展の開催趣旨に「これまで大津絵の展覧会は、博物館や資料館で開催されることが多く、美術館で開かれたことはほとんどありませんでした」とあって、びっくりした。そうなのか。確かに美術コレクションの一部に大津絵が含まれることはあっても、大津絵だけの展覧会というのはなかったかもしれない。私はだいたい日本民藝館で、定期的に大津絵を見ているのだが、あれも美術館とはちょっと違うのかも。

 そういうわけで本展は、近代日本の名だたる目利きたちによる旧蔵歴が明らかな「コレクターズ・アイテム」「名品ぞろい」の展覧会であることを強調する。ポスターのキャッチコピーも「欲しい!欲しい!欲しい!」と直球。展示品は約150点。

 中心となるのは、笠間日動美術館が所蔵する、画家・小絲源太郎の旧蔵コレクション。そのほか、福岡市博物館、浜松市美術館、静岡市立芹沢銈介美術館、大津市歴史博物館など。あ、見たことある、と思ったのは日本民藝館の所蔵品だった。柳宗悦は持ち前の眼力で古作や珍品、稀少な逸品を数多く収集した。現在、日本民藝館は、柳旧蔵の40点ほどに加え、柳の没後に寄贈を受けたコレクション100点ほどを収蔵しているという。道理で見覚えのない作品もあるわけだ。雨宝童子とか勝軍地蔵とか阿弥陀三尊来迎とか、宗教性の強い大津絵は珍しくて面白い。それから、何も知らずに見ていた『不動尊(黒不動)』は柳の前の所有者が黒川真頼だったり、『塔』は渡辺霞亭だったり、『提灯釣鐘(担いでいるのはサルなのか?)』は浅井忠だったり、コレクターのつながりが分かって面白かった。本展の図録、主要作品は表具も図版に収めてあるのはありがたい。誰が表装したのかな、と想像が広がる。

 大津絵の面白さは、やっぱり「巧まざるところ」だと思うのだが、時々すごく巧い作品にも遭遇する。吉川観方旧蔵で、さらにその前は三井寺の旧蔵品だという『大津絵図巻』(26図所載)は、どの絵もかなり巧い。人物は全くバランスが崩れず、フレームにきちんと収まっている。『塔』を立体的に描けるのにも感心した。いちばん好きなのは『酒呑猫』の顔! 大きな盃を咥えた口元が生き生きしている。『雷と奴』や『五人男(雁金文七)』の表情(目元)も、癖のある絵師が描いているなあ、と感じる。

 逆に、どうしてこうなった的な面白さを感じた作品は、日本民藝館蔵の『頼光』(いい顔だ)とか個人蔵(三浦直介→梅原龍三郎)の『鬼の念仏』、浜松市美術館蔵『瓢箪鯰』(ナマズ!)など。「大黒外法の相撲」「大黒外法の梯子剃」は定番の画題だったらしく、何パターンもあって、どれも面白い。大黒と外法(福禄寿)はいいコンビだったんだなあ。

 東京ステーションギャラリーは相変わらず完全予約制で、インターネットでは3時間前までしか予約できない。ローソン・ミニストップの店内端末だと30分前まで購入ができ、丸ビル地下のナチュラルローソンで、ぎりぎり購入することができた。早く以前のように、気が向いたときにふらりと入れるようになって欲しい。


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