見もの・読みもの日記

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正倉院展何回分?/正倉院の世界(東京国立博物館)

2019-11-04 21:20:18 | 行ったもの(美術館・見仏)

東京国立博物館 御即位記念特別展『正倉院の世界-皇室がまもり伝えた美』(2019年10月14日~11月24日)

 11月の三連休、今年も奈良の正倉院展を見てきたところだが、まず先週、東京で見たこちらの展覧会から。素人の感想では、今年は東京の展覧会にごっそり名品を取られてしまって、奈良の正倉院展が少し寂しい感じがした。本展は、新天皇の即位を記念し、飛鳥・奈良時代の国際色豊かな造形文化に焦点を当てた特別展。正倉院宝物43件(前後期展示替えあり)に加え、法隆寺献納物16件など、同時代の文物が集結する(キャプションカードの色分けによって、遠目にも正倉院宝物が分かるように工夫されている)。

 奈良の正倉院展には、もう10年以上、毎年行っているので、そんなに珍しいものはないだろうと思って出かけたが、そうでもなかった。『東大寺献物帳(国家珍宝帳)』は全文が開いていて、「書法」の見出しの下「王羲之書巻」がいくつも並んでいること、撥鏤(ばちる)とか犀角とか螺鈿の琵琶等々があったあと、太刀・弓・挂甲など武具が延々と続き(この分量がすごい)、最後に鏡、屏風があるという構成を興味深く眺めた。『平螺鈿背円鏡(へいらでんはいのえんきょう)』や『海磯鏡(かいききょう)』など大型の鏡は、奈良で見たことがあるとすぐ分かったが、逆に『銀平脱合子(ぎんへいだつのごうす)』(碁石入れ、草花と象の図)のような小型の文物は、初めて見るような気がした。

 『鳥毛帖成文書屏風(とりげじょうせいぶんしょのびょうぶ)』『墨画仏像』(雲に座る菩薩像を麻布に大きく墨書したもの)は奈良で見たことはあるが、たいへん珍しいもの。染織物は、東博が収蔵する「正倉院頒布裂」(明治時代に研究資料として内務省博物館に寄贈されたもの)をあわせて展示する。ポロをする唐子を描いたフェルト製の『花氈』、素朴でいいなあ。仏前で香を焚いた『白石火炉(はくせきのかろ)』は、たらい形の火炉を獅子のかたちをそた五本の足で支える。当時の灰がそのまま固まって残っているのが貴重である。

 後半はいよいよ至宝中の至宝『螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)』である。私は2010年の正倉院展で一度だけ見ている。はじめに復元模造品(2019年作成だ!)があって、その奥に本物が展示されているのだが、あまりにも美麗なので(明治の修復技術が素晴らしい)「これホンモノ?」「いや復元だろ?」と混乱しているお客さんも多かった。いちおう最前列は「進みながらご覧ください」と促されるが、それほど人が多くないので、何度でも並んでじっくり見ることができた。裏面も側面も、糸巻き部分さえも美しい。会場には復元品の演奏音(たぶん)が流れていた。琵琶の音を聴くと、空想は飛鳥・奈良時代というより大唐・長安へ広がっていく。この美しい琵琶、『長安十二時辰』に登場する男装の麗人・檀棋に持たせたいと思った。

 さらに伎楽面、佐波理水瓶、青い瑠璃壺(ガラス壺)、楽器『甘竹簫』など多様な宝物があったが、衝撃的だったのは『塵芥(じんかい)』。正倉院宝物の残片のことで、地道な分類作業が現在も続けられているという。その様子がビデオで流れていたが、布片、金属片、玉やガラス玉などを根気よく手作業で寄り分けていく。定年後のボランティアで手伝わせてもらえないかと思ったが、経験と鑑識眼が要るんだろうなあ。ここから宝物の新たな情報が発見されるかもしれないのだ。

 館内には正倉院の模型および施錠の模型があって、勅使が年に一度、正倉院を開封する様子もビデオで流れていた(お迎えする正倉院事務所の方々が茶色い事務用スリッパなのに、勅使だけ白い高級なスリッパなのが面白かった)。この勅封については、2014年に正倉院整備工事現場を見学したときもお話を聞いた。

 最後に明治の復元模造品『螺鈿紫檀阮咸(らでんしたんのげんかん)』と『螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)』があって、撮影可。

 しかし、あらためて今回の展覧会はすごい。毎年の正倉院展の目玉になるような文物が、あれもこれも来ている。そして展示図録を見たら、後期(11/6-11/24)には相当数が展示替えになる。2回目、行くことができるだろうか。なんとか算段しなくては。

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