見もの・読みもの日記

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近世日本のアーツ&クラフツ/大琳派展(東博)

2008-11-16 10:13:59 | 行ったもの(美術館・見仏)
○東京国立博物館 特別展『大琳派展-継承と変奏-』(2008年10月7日~11月16日)

http://www.tnm.go.jp/

 なんだよ、また琳派かよ、と思っていた。チラシを見ると、既知の作品ばかりで、全く意欲をそそられない。けれども世間の人気は上々らしくて、めったに美術の話などしない同僚からも「よかった!」と聞いたし、入館者数も落ちる気配がない。やれやれ、と重い腰を上げて、最後の週末に見に行った。

 会場に入ると、最初の展示品は宗達筆『槙檜図屏風』(石川県立美術館)。小さめの金地屏風に水墨の瀟洒な作品。おや、なかなかいいじゃないか、と嬉しくなる。大和文華館の『草花図屏風』、大田区立龍子記念館の『桜芥子図襖』など、「伝」宗達筆ではあるが、よく集めたなあ、と感心する。

 次のコーナーに進むと、いきなり視界に飛び込んできたのは『風神雷神図』。この展開には、かなり慌てた。え、2点? 3点? あ、4点も!? 宗達・光琳・抱一・其一の4つの『風神雷神図』が揃い踏みなのである(其一筆はあまり原本に忠実でない)。2006年、出光美術館の『風神雷神図屏風』展には、宗達・光琳・抱一の3点が出ていたが、3作品をまとめて見比べることができない会場のつくりになっていた。今回は、それができるのが嬉しい。とりあえず4組の風神雷神を見渡せるポジションに陣取り、至福のひとときを過ごす(やっぱり宗達最高)。あとで、宗達の『伊勢物語図色紙・芥川』にも、小さな雷神(ポーズまでそっくり)を見つけたことを附記しておこう。

 私がいちばん楽しみにしていたのは、宗達筆『白象図・唐獅子図杉戸』。所蔵先の京都・養源院では、保護ガラスが嵌まっていて、よく見えないんじゃなかったかしら。それにしても、胸のすくような大胆なデフォルメである。白象図の裏が別の唐獅子図、唐獅子図の裏が「波に犀」図であることは、初めて認識した。1本角の霊獣・犀は、シカのような体型だが、鎧をまとったような背部は、西洋の博物図鑑のサイをお手本にしているように思う。

 宗達については、唯一の自筆書状(!)に興奮。醍醐寺の紙背文書から発見されたもので、醍醐寺の僧・快庵に、蒸筍(むしたけ)の礼を述べたものだという。蒸したタケノコが醍醐寺の名物って本当?と調べてみたら、春日局が好んだ「竹の子のすもし」を今に伝える雨月茶屋というお店があるらしい(京都駅にも)。よしよし、今度、宗達にならってタケノコを食してこよう。

 光悦と光琳は、工芸品が粒揃い。私のイチ押しは光琳の『水葵蒔絵螺鈿硯箱』(MOA美術館)で、なめらかな黒漆が高級チョコレートのように美しい。こういう作品とじっと対峙していると、シャネルもルイ・ヴィトンも何するものぞ、という気概が湧いてくる。日本人が日本の伝統に誇りを取り戻すには、他国にケンカを売る必要なぞ全くないと思うのだが。

 抱一はまだ、宗達・光琳を師と心得ているように見えるが、其一は、さまざまな画風を多角的に試している。仏画も描くし、南蘋派ふうの蔬菜画なども描いている。

 最後にグッズコーナーを物色。商品をつくるには、琳派ほど楽しいコンセプトはないだろう。オリジナルハンドバッグには、かなり惹かれた。写真は、大琳派展公式サイトの「グッズ」→「キタムラ『大琳派展』オリジナルバッグ」で。私が買ったのは500円の「光琳文様飴」だけですが。

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