見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

関西旅行11月編:正倉院展(奈良博)

2008-11-09 23:25:49 | 行ったもの(美術館・見仏)
○奈良国立博物館 特別展『第60回 正倉院展』

http://www.narahaku.go.jp/

 毎年通い続けている正倉院展。今年はいいかなあ、と思っていたのだが、行ってきた友人の話を聞くと、やっぱり行きたくなる。名古屋に前泊して、いちばん早いのぞみに乗り、8時過ぎに奈良博着。なんとか1本目の列に並ぶことができた。8時半を過ぎると、入館待ちの列は、博物館前面のピロティで3本に折り返し、どこまで伸びているのか、見当もつかなくなる。

 今年、ほほう、と感心したのは、ピロティの屋根の下に、薄型モニタが何台か設置されて、正倉院宝物を紹介するビデオが流されていたこと。入館待ちのお客を退屈させないためのサービスだろう。けれども、なぜか、会場内MAPは配ってくれなくなってしまった(出品リストと一体化したかたちで、どこかに置いてはあったみたい)。

 そのため、今年は会場に入ってから、どこに何があるのか分からず、キョロキョロ。最初に目に留まったのは、今年の目玉として各方面で取り上げられていた『白瑠璃碗』(厚手のカットガラス碗)である。実は、ネットやポスターで写真を見ても、あまりぐっとくるものがなくて、それで、今年はやめようかと思っていたのだ。ところが、本物はよかった。光を通したガラスの美しさって、写真では伝わらないものなんだなあ。しかも、透明な台に碗を載せ、真下に鏡を設置することで、伏せたときの姿を映し出しているのだが、口のすぼまった球形の底が、神秘的な天体のように見えて魅力的である。ササン朝ペルシアからもたらされたものの由。どんな職人が作ったのだろう。あとのほうに、ほぼ同形の出土品が参考出品されていた。

 隣りにあった『紫檀木画双六局』は、いかにも正倉院宝物らしい、花唐草、鳥、鳥にのる人物などの愛らしい文様が木画(嵌め込み細工)で表されているが、三日月をモチーフに取り入れているのが、西アジアっぽく感じられた。(私、時代背景を間違っている?)

 いちばん見たかった『山水人物鳥獣背円鏡』も無事、発見。鹿角を有する水鳥が描かれていて、先日、皇后さまが「せんとくんみたいね」とおっしゃったというもの。このおことばは、ぜひ正倉院の歴史に書き残しておいていただきたい。「海磯鏡」の一例だというけれど、こんなふうに人物や動物が目立つものは珍しいように思う。

 ほか、天蓋と天蓋骨、匙と包丁(果物ナイフみたい)などが、興味深い今年のミニ特集。ココヤシで作った人面容器(椰子実、大きさは夏ミカンくらい)、それから虹龍(こうりゅう)、実は貂(テン)のミイラは、かなりの珍品。「この小龍がある故に宝庫の開検時には毎回雨が降る」と記す記録もあるという。そういえば、私は都合10回ちかく正倉院展に行っていると思うが、雨に当たったのは今年が初めてかもしれない。

 会場の混雑は相変わらずだが、運営側も観客も、この状態に慣れてきたように思う。だいたい日本人は、順序良く展示物を見ないと気がすまないようだが、正倉院展に限っては、空いているところから見ていく人が多い。確か前年までは、「ケース内の温度が上がるので、ガラスに触れないでください」なんて無理な注文をしていたが、今年は、ケースの周囲に手すりを設けて、はじめから観客が近づき過ぎないよう配慮してあった。案内係を主に女性にしたのも、ソフトムードを重視したのかな。むやみにギスギスした雰囲気がなくなったのは、ありがたいと思う。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする