前回からの続きです。
Yさんのご要望に沿って最終的には次のようなシステム配置となった。
CDトラポ「DP-UB9000」→DAC「A-22」(GUSTARD:ハイレゾ受け)→プリアンプ「マランツ7型」→パワーアンプ「071シングル」→SP[AXIOM80」(初期版)
そして、一聴したとたんに「これ、これっ、いつものAXIOM80が戻ってきましたッ!」と、いかにも満足気なYさん。
たしかに、一枚も二枚もベールが剥がれたような生々しい音に改めて打ちのめされた。さして好きでもない曲がコロッと魅力的になるのだからオーディオの威力は凄まじい。
それからは、二人とも急におとなしくなって無言のまま聴き耽った。音に透明感があるため少しもうるさく感じられず澄み切った音響空間がリスナーを静かに包み込む。
「美しいものは諸君を黙らせます。美には、人を沈黙させる力があるのです。これが美の持つ根本の力であり、根本の性質です。」(小林秀雄「美を求める心」より)
結局、音楽鑑賞ってのはこういう沈黙の力に耐える経験を味わうことなんですよね~!(笑)
で、テスト盤はこれ。
左が「スパニッシュ・ハーレム」(レベッカ・ピジョン)で、Yさんが持参されたもの。
有名なオーディオショップさんがSNSでの発信に「レファレンス」として使っている盤だそうで、たしかにしっとりとした潤いのある美声と静寂に満ちた音響空間の広がりが秀逸そのものの録音だった。
そして、右側は「ディヴェルティメント K136」(モーツァルト)で、20歳前後に作曲されたものだが、いかにも青春時代を彷彿とさせる溌剌とした「天馬空を駆ける」という言葉がぴったりの、個人的にもメチャクチャ大好きな曲。
いろいろ聴いてきたが指揮は「トン・コープマン」に限る!
哀愁味を帯びた第二楽章を聴いていると、ついセンチメンタルになって目頭が熱くなる~。
「モーツァルトらしさ」からいえば、この曲が最右翼ではないでしょうか。
「まったく天衣無縫とはこの曲のことですね!」と、意見が食い違うことが多いオーディオとは打って変わって、珍しく同感されるYさん。
最後には音質よりも音楽を通じて心から共感できる境地に至るのだから、やはり音楽とオーディオとでは役者が違うようですよ(笑)。
なお、試聴の途中でYさんがポロリと洩らされた。
「このところWE300BシングルアンプやPX25アンプの出番が無いようですね」
「ハイ、71系アンプに比べるとどうしても球自体をはじめ大がかりになってスピードがかったるくなりますね。AXIOM80以外のSPならもってこいなんでしょうが・・、やはり適材適所ということになりますか」
以上、今回の試聴会は「ディテール」を意識して3回に細分化して投稿してみたが、うまくいったかな~(笑)。
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