「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

「AXIOM80」のネガティブ・キャンペーン?

2014年07月08日 | オーディオ談義

このブログで再々記しているように日頃から愛用しているSPユニット「AXIOM80」(以下、「80」)だが、残念なことに2ペアとも1970年代に復刻されたもの。

1950年代初頭に発売されたオリジナル・ユニット(以下、「オリジナル」)は別格の存在という話をよく聞くので、どれほどの違いがあるのか、一度自宅のシステムの中に組み入れて鳴らしてみたいとの思いは尽きない。

先日のことだが「オリジナル」の愛好者のSさん(東京在住)から、次のようなメールが入った。

「R形状マグネットエッジの最初期型オリジナル80がペアでヤフオクに出てます!〇〇で整備済とのことで状態良さそうです。片方のコーン紙に補修がしてあるようですが、左右で特性が合っているのなら問題ないでしょう。補修の有り無しよりも、折り返し形状エッジのオリジナル軽量コーン紙がついている事が最重要ですから。

破れたからといって後期の重いコーン紙に取り替えられていたら、オリジナルの最大の美点が失われてしまうところでした。今回の物件は、ウェンブリー工場製造であることは勿論のこと、ベークライト製カンチレバーの厚さが薄いこと、マグネットカバーのエッジ部にRがついていること、サブコーンの色が焦げ茶色であること、どこをとっても1950年代末頃から1960年代前半にかけて製造された第Ⅰ期バージョンです。

その中でも最初期の製造と判定できるAXIOM80でしょう。この先、完動品がペアで出てくることは相当稀だと思います。30万円までで落ちるなら間違いなく買いでしょう。既に結構な数の入札者が居るのが気になりますが、頑張ってください。」

          


久しぶりに“血湧き肉躍る”話(笑)。

とはいっても、メールにあるように(入札額が)30万円以上の勝負をするつもりはない。いくら「音楽=オーディオ=命」といっても、それで飯が食えるわけでもない。

また“お金優先”と言われるかもしれないが、オーディオに限らず何ごとにつけ「性能 ⇔ 対価 ⇔ 満足度」の相互の兼ね合いをはかるクセをつけておくことは「頭の体操 → ボケ防止」にとっても非常にいいと思う(笑)。

冗談はさておき、すぐにウォッチリストに登録して注意深く見守っていると、中古専門のストアからの出品なので例によって「1000円」スタートながら、あっという間に21万円まで跳ね上がってそこから小康状態に入り、いよいよ落札当日になった。

夕食を終えて、就寝前になってからいよいよおもむろに始動開始。これで結着だといわんばかりに「299000円」でいきなり入札したところ、何とその額以上のもっと高値をつけた入札者が既にいたのには驚いた!

な~んだと、一気に冷めてしまった。物事にはすべて“のり”(法、則、典、範、矩)というものがあるように思う。いくら「オリジナル」といってもこれ以上追いかけるつもりはないので、いつものとおり「足の裏叩き」を終えてご就寝(笑)。

翌朝、いったいいくらで落札されたんだろうとパソコンを開いてみたら「301000円」で落札されていた。

ウーム、2000円差かあ!ただし、本気で自分が勝負を仕掛けたらおそらく競り合いになってもっと値上がりしたことだろう。

というわけで、今回も「オリジナル」とは縁がなくてとうとう涙を呑みました(笑)。

しかし、改めて考えてみるのに「AXIOM80」はそもそも30万円に匹敵するような性能を持っているんだろうか?

オリジナルを使っているオーディオ仲間のKさん(福岡)によると「とても30万円以上の値打ちはありませんよ。」と、はっきり仰る。Kさんは歴戦の強者で、アルテック、JBL、タンノイなどを経て「80」に至った方で、しかも無数のアンプを使いこなしてきた方である。

これに勇気を得て、今回はいつもとは違って「80」をマイナスの視点からいくつか列挙してみよう。

いわばネガティブ・キャンペーン(笑)

 「80」はけっして万能型のユニットではない。たとえば、弦楽器群のファンダメンタルな響きはとうてい望むべくもないし、あの雄大なワーグナーやマーラーなどの音楽には向かない。線が細すぎる。したがって、せいぜいボーカルやヴァイオリン・ソロを聴くぐらいが関の山でとてもメインのシステムとなる資格はない。

 とにかく中低音域が物足りない。その辺も含めてうまく鳴らそうと思うと
メチャ手間がかかるユニットである。そもそも完璧に鳴るかどうかも定かではない。実際にいろんな方々の「80」を聴いてみても、自分も含めて“あと、ひとひねり必要”という印象を受けるばかり。

 とても気難しいユニットなので全体的なシステムの構成にも配慮しなければならず一か所でも手を抜くとすぐに反応する。取り分けパワーアンプの選択が難しくてとても一筋縄ではいかない。

我が家の例では、WE300Bアンプ(1950年代オールド)、PX25アンプ(ナス管)、刻印付き2A3(1940年代)アンプなど一般的に定評のあるものを使ってみたがいずれも「帯に短し、たすきに長し」で決め手に欠けており、いまだに「ああでもない、こうでもない」と迷路を彷徨っている。

実際に「80」の紹介記事が掲載されている「いまだからフルレンジ」(別冊ステレオサウンド)にも次のような箇所がある。(115頁)

「このユニットの本領を発揮させるには相当の力量が必要で、当時としても独特の繊細で、ふっくらした艶やかな響きを堪能していた人は稀だったと思う。」とある。

おそらく筆者は「瀬川冬樹さん」(伝説のオーディオ評論家、故人)に違いない。瀬川さんほどの方が後になって「80」から「JBLシステム」へ転向されたが、今ではその気持ちが分かるような気がしている。

とまあ、以上のとおりで結論から言えば“うかつに手を出さないほうがいい”ユニットである。

ところで、今回の例にもみられるとおり「80」の近年になっての高騰ぶりは目に余るものがあるようだ。

原因はいろいろあろうが、実をいうと「80が異常に値上がりしたのはあなたのブログにも一因がある」と、一部の方から責め立てられている。

たかが自分のブログごときが”それほどの影響力があるかな?”と半信半疑だし、むしろそう言われるのは光栄なくらいだがこのネガティブ・キャンペーンの効果によって、少しでも市場の「80」への熱が冷めてくれれば、それに越したことはない。

なぜなら「オリジナル」の相場が少しでも下がると手に入れやすくなるから(笑)。
 

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