大いなる勘違い ~ 早稲田MBA奮闘記

早稲田大学ビジネススクール(WBS)での入学から卒業までの記録 + その後

SIMフリーでユーザはどう動く?

2010年03月29日 | 経営戦略
SIMフリーでユーザーは、キャリアは、そしれ端末メーカーはどう動くだろうか?

携帯電話において、ユーザーに縛りを掛けている、つまりユーザーのスイッチングコストを上げている要因は、主に次の3つだろう。

(1) 電話番号 (2) メールアドレス (3) 各キャリアのサービスプラン

このうち、(1)の電話番号は、MNP制度でキャリアを変えても変更しなくて良くなった。
一方、仮に自分が加入する以外のキャリアでお気に入りの端末が出たとしても、乗り換える場合(2),(3)は引き継がれない。 このことが、ユーザーの利便性を阻害すると同時に、携帯電話端末メーカーはキャリア依存が強まり、端末のユニーク性・革新性によるユーザーの獲得を怠たり、世界から遅れを取ってきたと指摘する声も多い。

そこで議論されるのが「SIMフリー」だ。

SIM(Subscriber Identity Module)は、携帯電話の所有者情報を認識するICチップ(写真)である。

海外ではこのICチップを携帯電話端末に差し込むことで自分の携帯として使えるため、加入しているキャリアを変更することなく (つまり、上記(1)(2)(3)をすべて引き継いで)、どのメーカーの携帯端末でも利用することができる。この状態を「SIMフリー」と呼ぶ。 一方、日本でも同様にSIMを内蔵しているが、キャリアごとに制限(ロック)がかかり、キャリアを超えて端末を利用することはできない。(各キャリアの規約には、同キャリア内であっても正規の機種変更以外は利用を制限すると書いてある。)

言い換えると、「SIMフリー」の導入は、一種の市場開放化政策であり、ガラパゴス化した日本の携帯のジレンマを一気に解消する特効薬のように見える。

SIMフリーは、ユーザーにとっては、携帯端末の選択に自由度を与え、利便性をあげることは疑わない。

しかし一方で、携帯端末メーカーの過当競争が始まり、優劣がはっきりとしてくることが予想される。メーカー間の勝ち組・負け組が明確になり、負け組は市場撤退を余儀なくされる。

韓国や台湾など海外メーカー攻勢も激しくなるだろう。

さらに、キャリア間の競争も激化する。

現時点での通信エリアや電波状態からすると、ドコモが優勢となる可能性が高く。auやソフトバンクは、顧客を維持するためには価格競争を余儀なくされるであろう。それを避けるためには、月額使用料以外の収入源を確保する収益モデルを早急に構築する必要がある。

SIMフリーはユーザー側にとっては当面の便益は大きいが、結果として日本の携帯端末メーカーの衰退やキャリアの衰退にもなりかねない危険性もある。

ただ、これまで保護され蜜月の関係だったキャリアとメーカーに対して、市場開放によって試練と刺激を与えることも必要であろう。そうしないと、日本からiPhoneのような革新は生まれてこないと思う。


SIMカード

「携帯電話のSIMロック解除を検討へ - 総務省が公開ヒアリングを開催」 CNET Japan 2010/03/29