Compass of my heart

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宇宙人の悲劇

2014年02月14日 | 創作・小説・ショートショート
宇宙人A:さぁ、次の調査対象は太陽系の3番目の惑星だな。この星の住人は地球と呼んでいるのか。

宇宙人B:いや、この星には様々な言語があるから、呼び方はもっとたくさんあるようだ。EarthとかTellus、Terra、Tierra、Erde、うーむ、どの言語で話しかければいいのか下調べが必要だな。

A:そうか、この星の住人と交流するための言語を今のうちに左脳にインストールしておこう。

B:ああ、到着まであと18時間あるから、インストールしながら一眠りしておくか。

~~自動操縦の宇宙船は順調に地球へ近づいていった。~~

A:では最初に交流する対象は、あそこを歩いている女性にしよう。

B:よし、この地域の平均的な姿に擬態するぞ。

A:こんにちは。

女:え?誰?マジキモいんすけど、男か女か若いのか年取ってんのか、かっこいいのか悪いのかもう混じり過ぎてわかんない!とりま逃げよ。

B:お待ちくだされ。

女:わ、イミフ!こっち来んなって!げきおこぷんぷん~~

A:怪しまれてしまったな。仕方ない場所を変えよう。

B:それにしても、言葉がよくわからなかったぞ。いったいどこの言葉だったんだ…。

~~再び場所を変えて小学生男子に話しかける宇宙人~~

A:こんにちは。

男子:じぇじぇじぇ~~~!(逃げていく)

B:じぇじぇ?そんな言葉はインストールされていないぞ。

A:一旦宇宙船に戻って作戦を練り直そう。

~~宇宙船の中~~

A:おい、よく調べてみると、ひとつの言語にも何十種類もの変化パターンがあるぞ。

B:なになに、方言というのか、狭い地域のみで通じる言葉のようだな。

A:この星の住人は広い範囲でコミュニケーションを取りたくない種族ということか。

B:タイムサーチで歴史を見てみると、同じ星に住んでいる仲間同士で戦いを繰り返しているな。

A:ふうむ、ワレワレに敵意がないということを伝えてからでないと、近づくのは危険ということなのか。

B:仕方ない、時間はかかるだろうが、すべての言語をインストールして、この星でもっとも数の多い種族からコミュニケーションを図ろう。

~~1年後~~

A:ふあぁぁぁ、なんと言語をインストールするだけで一年もかかってしまった!

B:まぁいい、これでどの民族のどの方言でも大丈夫ということだ。

A:よし、この星でもっとも数の多い種族に接触を図るぞ。

B:ああ、どんな場所にも分布しているな。できればリーダー格に話しかけたいんだが、どこにいるのかわからんな。仕方ない手当たり次第聞いてみるか。

A:随分小さいな、よしこっちも小さく擬態して…。ちょっとお話を聞きたいんですが…

バクテリアその1:なに?

B:あなたがたのリーダーはどこにいらっしゃるんでしょう?

バクテリアその2:リーダーって何?ぼくはそろそろ分裂するんで‥‥‥

A:あれ、ちょっと待って。

B:どっちに話しかけるか迷ってたらまた分裂したぞ。ああ、会話にならないじゃないか、なんてことだ。

A:一旦宇宙船に戻って作戦を練り直そう。

~~宇宙船の中~~

A:今まで調査した星の中でもっとも調査が難しいな。

B:一旦ワレワレの星に戻って上司の指示を仰ごう。

A:そうだな、とりあえず「どんどん分裂する小さな種族がこの星を支配していること、他の種族とのコミュニケーションを取りたがらず、戦いの多い危険な星」であることは報告できるからな。

B:ああ、あとは星を一回りして、映像を記録してから戻るとするか。

~~映像撮影飛行中~~

地球上では…

オカルト好きな人「わお!UFOのビデオ撮影に成功した!テレビ局に高く売れるぞ。」

終末論を信じる人「おお!神の降臨だ。正しい宗教を信じた人間だけを救って下さる!」

台湾人「お祭りで飛ばすランタンだね。」

空軍の軍人:ここ1年ほど地球の上空を飛び回っている未確認飛行物体があります。地球の地形を観察して調査している模様。我々とコミュニケーションを取る様子はなく、この後大編隊を組んで侵略を企んでいる可能性があります。

空軍の指揮官:危険だ!攻撃される前にこっちから撃ち落とせ!






ドッカーーーーーーン!!



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考古学者の悲劇

2014年02月03日 | 創作・小説・ショートショート
私は古い遺跡を発掘して研究している考古学者。
歴史に残る遺跡を発掘したいと思っている。
自分が生まれる遥か以前に、一体どんな時代があったのか、何か見つけるたびにいろんな想像をして本当にワクワクする。

そしてなんとつい先日、ここには何千年も文明などなかったと思われていた土地に、とても大きな文明の痕跡を発見したのだ!
一体どんなものがそこから出てくるのか、世界中が注目する中で、私のチームは少しずつ発掘を進めていった。

かなり深く掘ったところに最初に出てきたのは、大きな壁のようなものだった。
なんということだろう、この壁には継ぎ目が見当たらないのだ。
おそらく材料は鉱物だと思われるのだが、非常に精巧に出来ており表面はとてもなめらかに磨かれている。
なんとか全貌をつかみたいと、我々は日夜掘り続けた。
しかし、それは掘れば掘るほどどんどん広がりを見せ、ついには町一つ分はあろうかと思われる巨大な建造物が姿を現した。

一体これはどんな遺跡なのだろう?権力者の墓なのか?それとも宗教儀式の施設なのか?
とにかく継ぎ目のない壁に覆われているだけで、入り口も出口もない。
壁の一部を壊して中へ入ろうと試みたのだが、とにかく厚い壁でなかなか内部に辿り着けない。
仕方なく私は、壁を壊すチームと、この遺跡の近辺を新たに調査するチームに分けて、他の痕跡を探し始めた。

それから数日経って、近辺の調査をしていたチームからうれしい報告があった。
なんと文字板を発見したというのだ。
同じ地層から発見されているので、おそらくこの巨大な遺跡と同じ時代に作られたものであろう。文字があるということは、高度な文明がかつてこの地にあったということなのだ!
人生最高の瞬間だった。私は歴史に名を残す考古学者として有名になるだろう。
私は古代の文字を専門に研究している博士に解読を依頼した。
「少し時間はかかるでしょうが、絶対に解読しますよ」
と心強い返事を頂いた。

その後もいくつもの文明の痕跡や新たな文字が発見されていき、壁を壊していたチームからも「ついに内部に通じました」と連絡が入った。なんとうれしいことだろう。
早速我々調査団は人1人がやっと入れる穴から内部への潜入を試みたのだ。
内部には、金属でできた筒状のものが大量に並べてあった。やはり墓のようだ。我々はその一体を持ち帰って詳しく調査することにした。今夜は自宅に持ち帰って眺めていよう。これは発掘者の特典だな、ふふん。

そしてその夜、ついにあの最初に発見された文字板が解読されたという連絡があった。
なんと書いてあるのだろう、王の名前か、それともこの巨大遺跡の解説なのか、ああ待ち切れない。

解読を依頼した博士からの手紙にはこう書いてあった。
「 ここは高レベル放射性廃棄物の地層処分施設である。 10万年間発掘を禁止する。」


なんということだ、
一体この施設ができてから今が何年後なのかわからないじゃないか!
だいたい高レベル放射性廃棄物ってなんだよ。
しかたないな、明日知り合いの科学者に聞いてみよう。


しかし…
かわいそうな考古学者は二度と目覚める事はなかった。




(「100,000年後の安全」という映画にインスパイアされて書いた作品です。未来の考古学者のためにも脱原発を。)



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「人生ゲーム」

2014年01月30日 | 創作・小説・ショートショート
A:なぁ、お前このゲーム毎日やってるけど飽きないの?

B:うん、まぁ何回やってもまったく同じ展開になるってことがなくてさ、
ついつい何回もやっちゃうんだよな。

A:今までに一体何回ぐらいやったの?

B:うーん、エンディングまで完全にクリアしたのが50回ぐらい?
途中で放置したままのセーブデータも10回ぐらいあるかな。

A:やりこんでるねー。

B:君は何回やったの?

A:おれはまぁ1回でストレートにクリアしたから、もういいかなと思って売っちゃったよ。

B:え?そりゃもったいない。こんなアナザーストーリーがあるの知らないでしょ?
これはエンディング5種類全部見た人だけがチャレンジできるやつだよ。

A:そういうのがあるってのは聞いてたけどさ、他にも新しいタイトルが次々に出るからね。
一番新しいこのゲーム「超新星開発野郎 Aチーム」、お前もやってみろよ。

B:へー!面白そうだね。でももう少しゲームする人が増えてからにするよ。
新しいゲームは攻略サイトが増えてからやらないとリスクが大きいでしょ。

A:ばかだなぁ、そのスリルがいいんじゃん!フロンティア精神だよ。
だいたいお前さ、その50回もやってる「地球転生ゲーム」でも、
攻略サイト見ながらやってるわけ?
しかも攻略サイトも3つも4つも開いてるんじゃん。
なになに、こっちが「イエスキリストを信じれば天国へのゴールは確実です」。
でこっちの攻略は「輪廻を終えて解脱することこそが人生のゴール」。
「お稲荷さんがあなたを助けてくれる」なんてのもあるの?

B:んー、でも今一番参考にしているのはこのサイトだよ。
「スピリチュアル生活で誰より早くアセンションしよう」


****
何度でも、同じ星に生まれるのも自由。
違う星に違う種族として生まれるのも自由。
人間をやめて守護霊として生きるのも自由。
あなたはこの地球にいくつの過去世を持っていますか?
そしてこの先何回生まれ変わりたいですか?
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羊たちのアセンション

2013年02月09日 | 創作・小説・ショートショート
「神々の牧場」の続きです。こちらから先にどうぞ。



メリー「もぐもぐ、もぐもぐ。」

メー太郎「もぐもぐ、もぐもぐ。」

メリー「クシュン!」

メー太郎「おや、メリーちゃん風邪かい?くしゃみなんかして」

メリー「だって、今朝すっかりふわふわの毛を刈られちゃったのよ。寒くてたまらないわ。」

メー太郎「ああ、そうかどうりでなんかスッキリしてると思った。もぐもぐ。」

メリー「もう!あんたはどうしていつもそうなのよ!私が髪型変えても、まつげのエクステしても、
  まったく気付いてくれないし。」

メー太郎「うん、ごめん。もぐもぐ。」

メリー「ねぇ、あんたは食べることとヤルことしか興味ないわけ?」

メー太郎「もぐもぐ、もぐもぐ。」

メリー「羊ってさ、なんのために生きてると思う?」

メー太郎「食ってヤッて子孫残すためだろ、もぐもぐ。」

メリー「ほんとにそれだけなのかな。あの柵の向こうに何があるのか知りたくない?」

メー太郎「そんなこと考えたってムダムダ。
  ここにいればさ、とりあえずメシ食えるじゃん。
  安心して子育てできるじゃん。柵を出たやつはオオカミに食われるんだって聞いてるぜ。
  そりゃふわふわの毛を刈られるのは辛いけどさ、それは羊の義務でしょ。
  その代わり、柵で敵から守られて、飢えることもないんだからさ、いいじゃん。
  メリーったらもしかして欲求不満なの?後から乗っかってカクカクしてあげよっか~?」

メリー「やめてよ!もうこんな生活うんざり!
  昨日まで一緒に草を食べてたメー助が、どこに連れていかれたのか、あんたは気にならないの?
  羊は死んだらどこに行くのかあたしは知りたいのよ。」

メー太郎「行いのいいヤツは天国。悪いヤツは地獄って決まってるじゃん。」

メリー「そんなおとぎ話、あんた本気で信じてるの?
  あたしは自分で確かめたいのよ。
  あの柵の向こうに何があるのか、死んだ羊がどうなるのか、一体何のために生きているのか。」

メー太郎「またその話かよ。考えたってわかんねぇんだからよ、
  考えるのをやめて、毎日、草食って楽しく生きて行けばいいじゃん。」

メリー「もういいわ。あたしひとりで行くから。
  あの柵を越えて、きっと真実にたどり着いてみせるわ。さよなら。」

メー太郎「はいはい。もぐもぐ。もぐもぐ。」


~~~天上の神々の会話~~~

「お、ちょっと見てみろよ、こっちの牧場で、一匹アセンションした羊がいるぜ。」

「ほう、この羊、この後オオカミに食われる予定だろ?
そしたら魂の経験値上げてもらうためにさ、土星とかに生まれ変わらせようか。」

「あ、それいいかも。またちょっと個性的な魂が食えるぞ~!楽しみだなぁ。」


  



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神々の牧場

2013年02月08日 | 創作・小説・ショートショート
「おい、今晩ヒマ?一緒に飯食おうぜ、あの幻の食材がついに手に入りそうなんだよ。」

「お、すげぇじゃん!行く行く!」

「ここしばらくはさ、ありきたりなものしか食ってなかったじゃん。
こっちの牧場では、早く成長するようにいろいろ新しい餌を与えていたのに、
さっぱり効果を感じなかったもんな。」

「確かに、まぁ育つのは早いっちゃ早いんだけどな、中身がないっていうか、
ちっともおいしいと思えなかったよなぁ。」

「あっち側の牧場はさ、ちょっと厳しい環境でも育つかなぁと思って、
ほとんど日が当たらないようにして、あまり栄養も与えなかったんだけど、意外にうまかったよな。」

「うんうん、なんていうか味が複雑で、噛めば噛むほど味が出るって感じだった。」

「今日のは特別だぜ。
いろんな牧場を定期的に移動させて育てたんだ。
しかも、こいつはそのすべての牧場で、他の家畜たちのリーダーになったんだぜ。」

「牧場は全部環境が違うし、家畜たちはみんな性格も違うのに?」

「ああ、運動能力の高いグループでは、誰にも負けないパワーを出したし、
ちょっと賢いグループに放った時も、他のやつらが一目置くようになったんだ。
大食いのグループじゃ、一番餌を食ってたし、
餌を与えないグループに放り込んだ時は、水だけで生きていやがった。」

「すげぇな、どんな環境にも適応できるなんて、完璧じゃねぇか!
こいつの遺伝子をクローン増殖させれば、もう他の家畜は必要ないんじゃねぇのか?」

「ああ、もちろんやってみたさ。
だけど、クローンじゃダメなんだ。
大事なのはDNAじゃなかったんだ。」

「ってことは何か他に大事なものがあったのか?」

「ああ、家畜たちがうまく育つために一番大事だったのは何だと思う?
経験値だよ。
環境をどんどん変化させれば、それに対処できたやつは、それだけ経験値が上がる。
経験値はDNAに書き込まれるんじゃないんだぜ。」

「どこだよ?」

「魂だよ。」

「ああ!そうか!経験値の高い魂が一番うまい!ってことか!
今までいくつも魂を食ってきたのに、気付かなかったぜ。」

「今日の魂はな、最初はオリオン座の牧場で生まれたんだよ、
その後、M78星雲を経て、太陽系の金星で長い事育てたんだ。
でも、こいつが経験値を一番上げた星はどこだと思う?」

「うーん、アンドロメダ?じゃないよな?」

「お前、知ってる?すげぇ小さな星でさ、太陽系の中にある地球って星なんだぜ。」

「ああ、知ってるよ、ほとんど地獄って呼ばれてる星だよな。」

「その地球で育てた、経験値の高い人間の魂が、もうすぐここへ届くのさ~!
とびきりの食材だよ。」

「その家畜、地球じゃなんて呼ばれてたんだ?」

「ああ、確かイエスとか言ったかな。
さぁ、やつの魂が、そろそろこっちへ上がってくる頃だな。
ツルッと踊り食いしちゃおうぜ~~!」


「羊たちのアセンション」へつづく



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「檻」からの脱出

2012年12月11日 | 創作・小説・ショートショート
おいら、いつからここにいたんだろう…?
気がついたらとても小さな部屋にいた。
たぶん「檻」と呼ばれる場所だと思う。

部屋にはおいらしかいない。
時々、壁の向こうから、誰かが話しかけているような気がするけど、
何を言っているのかおいらには聞き取れなかった。

お腹がすくと、
誰かが飯を運んできてくれた。
おいらの担当はひとりじゃないらしい。

おいらは、そのうちのひとりの女性に恋をした。
彼女が飯を運んできてくれるのが待ち遠しくて、
違う人の時はがっかりだが、
彼女が来た時には、最高の笑顔で話しかけてみたさ。
彼女はとても優しく接してくれた。
たぶん、彼女もおいらに好意を持っていたはずだ。
だけど、彼女は決しておいらの部屋には入って来なかった。
そりゃそうだよな…檻だもんな。

ある日、なぜか、
本当に突然、おいらはその檻から出ることができた。
車に乗せられて、どこか違う場所へ移動させられるらしい。
だけど、誰も何の説明もしてくれなかった。
あの彼女はほんの少しだけ悲しそうな顔をして、
それから、最高の笑顔で見送ってくれた。

車を降りて、連れていかれた場所は、
思いのほか広い、明るい、とても気持ちのいい部屋だった。
「檻」じゃなさそうだ。
そして、何よりひとりぼっちじゃなかった。

車を運転していた女性がその部屋で一緒にいてくれるらしい。
監視役ってことか…。
ただ、言葉が通じなかった。
彼女はしきりにおいらに話しかけてくれたし、
おいらも一生懸命伝えようとしたが、
どうしても意思の疎通が図れなかった。
時間をかけるしかなさそうだ。


そんな彼女との暮らしが始まって間もなく一年が経とうとしていた。
おいらは少し前から彼女とベッドを共にするようになっていたが、
相変わらず、彼女の言葉はおいらには理解できなかったし、
おいらの気持ちも、彼女には伝わらなかった。
おいらは部屋の外へ出たいと思っていたが、彼女が絶対にそれを許してくれなかった。
やっぱり、ここもちょっと広いだけの「檻」なんだな。
おいらは、いったいどんな罪を犯したんだろう。まったく思い当たる節がないんだが…
誰も面会に来ないってことは、家族もおいらのことを見放しているのか…。

それでもたぶん、おいらはだいぶ、彼女のことを好きになりかけていたんだと思う。
外には出られないが、そんなに苦痛というわけでもなかった。

しかし、チャンスは突然やってきた。
ある日、宅配便かなにかがやってきてドアを開けたんだ。
彼女はちょうど着替えていて、すぐに出られなかった。
今だ!
もう無我夢中だった。宅配便の人の脇をすり抜けて、
外に出てとにかく走り続けた。

太陽がまぶしい。
風がおいらのヒゲとしっぽを優しく通り抜けていく。

遠くで彼女が叫んでいる。
「きゃ~!誰かうちの猫をつかまえてください!」

おいらには彼女がなんて言っているのか全然理解できなかったが、
「檻」に連れ戻されるだろうことは予想がついた。

「やだぁ~!ペットショップで買ってきた血統書付きなのに~!」
なんだかわからないが、彼女は叫びながら泣いているようにも見えた。

自由だ!
おいらは自分の意思でどこにでも行けるんだ~!

次の日…
自由ってのは腹が減るなぁ。

その次の日…
やっと言葉が通じるやつに出会えたけど、
そいつにひっかかれたぜ。「俺の縄張りに入るな!」って言われたよ。ちっ。

その次の日…
ああ、腹減った…。もうだめだ。
うぉっ!あぶねえじゃねえか!黒い丸い早い転がるやつに襲われそうになったぜ。
おいらはそいつを睨みつけてやったさ。逃げていったよ、ははは。

「わ!あぶなく猫をひくところだったわ!
さっさと道路を横切れば良いのに、
なぜか猫っていったん道の真ん中で立ち止まるのよね~」

それにしても、腹減ったぜ。
あ…なんか聞いたことのある音だな…
キラキラのグラスを銀色のスプーンで叩くような音…
この音が聞こえたら、おいしい缶詰にありつけるんだよな。

おいらはふらふらしながら音のする方へ導かれていった。


「あああああ!ミィちゃん、今までどこに行っていたのよ。
本当に心配したんだから~~!こんなに痩せちゃって~、
でも帰ってきてくれてよかったぁ~~~」

「檻」の暮らしも悪くはないよな…。
だけど、やっぱり一度は外に出てみたいってもんだろ。
じゃないと、「檻」が快適だったなんてことに気付かないもんな。
うん、おいら、もう脱走はしないぜ。
ゴロゴロ…ゴロゴロ…





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透明人間

2010年10月02日 | 創作・小説・ショートショート
わお!オレ透明じゃん!
やったぜ~!透明人間になれたよ~!
女湯とか覗き放題だぜ~!
あはは!何からやろうか~

まずは、
ほんとにバレないかどうか確かめないとな。
母ちゃんの目の前に立ってみよう。
目の前で手を振っても全然気付かないみたいだ。
なんだよ、誰と話してるんだか、さっきからず~っと電話してるし。
ま、いいさ、やったね!大成功じゃん!
オレって天才!

次は、片思いだったあの娘の家に忍び込んじゃおう~
お、意外にこざっぱりしてんなぁ。
もっとぬいぐるみとかいっぱいあるのかと思ったんだけどな。

料理中だな、そのエプロンがいいね~
あ、誰か来た、やべ!
ってオレ、別に隠れる必要ないんだった、あはは。

なんだ、男かよ…
彼氏…?ではなさそうだな。
ふたりでなんだか相談してるみたいだけど、
あれ?彼女泣いてる…?
ちっ!おれが透明じゃなかったら、この男ぶっとばしてやるのに。

あ~なんか面白いことできね~かなぁ。
銀行強盗してみるか!
いや、強盗じゃないよな。
誰にも気付かれないんだから、誰かを脅す必要もないし。
ん~、でもオレが透明でも、札束は透明じゃないんだから、
ふわふわと金が浮いて移動してたら、やっぱバレるよな…

よっしゃ、密航だ!
飛行機に乗って世界一周するぜ~!

>>>世界一周中>>>

ふぅ~
世界ってのは広いもんだなぁ。
オレが知らない風景や、びっくりするような常識がいっぱいあるもんだ。
そろそろ家に帰るか。

>>>帰宅>>>

なんだ?葬式?
オレがいない間に誰か死んだのかよ?
母ちゃん、ただいま!
って、オレ透明なんだった~~!
うーん、どうやって元に戻ればいいんだよ。
っていうか、オレ、そもそも、どうやって透明になったんだっけ…?
透明になる直前、オレは…
バイクでツーリングに出かけていて…




うおぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!
事故に遭ったんだよ~
オレ死んでるのか~~~?!
オレの葬式なのか~~~~~?!
だから肉体がないのか~~!



ってことは…





やっぱり、女湯覗き放題じゃん!!
やったぜ~~~!
幽霊ばんざ~い!



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ひとばしら~あとがき~

2010年04月04日 | 創作・小説・ショートショート
創作「ひとばしら」いかがでしたか?

すでにお気づきの方もいらっしゃると思いますが、
これは、実際にあったお話を、クリキンディが脚色したものです。

ケイコさん(仮名)は、霊能者に、この前世の出来事を伝えられて以来、
ずっと自分を責め続けており、さぞかし苦しかったことと思います。

平岡さん(仮名)は、そんなケイコさんの事情を知らずに、
このことをたまたま話題にしたそうなのですが、

それ、どう考えても必然、ですよね。
ケイコさんと平岡さんが、
本当に親子だったのかどうか、それはわかりません。

でも、おそらく似たような時代を生き抜いて、
同じような苦しみを抱えていたのは、
この二人だけではないと思うのです。

自分の立場と、考え方だけでは、計れないものがある、
いろんな感じ方、見方がある、ということに気付くだけで、
楽になれることもあるんだなぁと思います。

こんな風に人の心がほどけていく瞬間に立ち会えるのは、
すごくうれし~~~~!!


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ひとばしら~その3~

2010年04月03日 | 創作・小説・ショートショート
<ひとばしら~その1~>
<ひとばしら~その2~>
のつづきです。


「あら、ケイコさんも、こういう話に興味あります~?」

聞けば、取引先の女性、平岡さんは、
最近ヒプノセラピーを受けたのだそうだ。

「そこでね、なんか映像が浮かんできちゃったんですよ。
自分が、キレイな赤い着物を着せてもらって、
普段は食べられないような、お餅をもらって、
すごくうれしいと思ってる映像が!」

「え?うれしいんですか?平岡さん、これから生き埋めになるのに?」

「ええ、確かに、土をどんどんかけられて、
息苦しいなぁ、イヤだなぁ、と思う気持ちもあるんですけど、
この過去生の時、私はちょっとおつむが弱かったみたいなんですよね~。
だから、赤い着物やお餅がうれしくて。」

ケイコは、あの時の霊能者の話をハッキリ思い出していた。
あの時、差し出した自分の娘も、知的障害を持っていた。
もしかしたら、
平岡さんが、あの時の自分の娘?!
だとしたら、とても言えない…。
ごめんねって、何万回言ったって、きっと許してもらえない。

「ケイコさん、大丈夫ですか?顔色悪いですよ。」
平岡さんが覗き込む。

「ケイコちゃんは、怖がりの癖に、こういう話、好きなのよね。
社員旅行で箱根に行った時も、ブルブル震えながら聞いてたもんね~」
と同僚に突っ込まれて、顔の左半分で笑い顔を作る。

「それでね、あの時、私は、おつむが弱くて、何もできなくて、
家族のお荷物になっている、ってことを認識してたんでしょうね。
だから、人柱に立つことで、私が、人の役に立つことができる、
そのことが、とても誇らしかったんですよ。
いつも悲しそうな家族に、何かしてあげたい、そう思い続けていたんですよね。」

「へ~、人柱になった人って、みんな恨みを持ってるのかと思ってましたよ~」
同僚の相づちに、ケイコも、慌てて頷いた。

「ただ、ひとつ後悔があって…
私、言葉がうまくしゃべれなかったから、
あの時、泣いているお母さんに、ちゃんと別れの言葉を伝えられなかったみたいなんですよね。
私が、ちゃんとしゃべれなくて、頭も悪いせいで、
お母さんがいじめられて、ごめんねって言いたかったんだと思うんですよ。
だけど、人柱にしてくれたから、やっと自分も、お母さんの役に立つことができた、
しかも、赤い着物においしいお餅ですよ!
うれしかったという思いが強かったですね~。」

「あ、もしもし…」
ケイコは、鳴ってもいない携帯電話を耳にあてて、
平岡さんと同僚に、軽く会釈すると、
急いでトイレに駆け込み、しばらくおいおい泣いていた。

ケイコの強張っていた背中が、すーっとやわらかくなった。

(完)


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ひとばしら~その2~

2010年04月02日 | 創作・小説・ショートショート
<ひとばしら~その1~>のつづきです。

興味半分で、霊能者のもとを訪ねたケイコ、
しかし、そこで、前世の自分が「自分の娘を人柱に差し出した」と言われ、
ケイコの心は罪悪感でいっぱいになっていた。

この後に、なんと言われたのか、よく覚えていない。
レコーダーを持っていって録音しておけばよかった…
そう思ったけれど、後の祭だった。

障害を持って産まれた子供は、
あの時代、一生隠れて暮らすしかなかった。
土蔵で一生を終えるくらいなら、
人柱に立つことで、お城を守るお役に立つのだから、
とみんなに説得され、
首を縦に振るしかなかった。

「あなたは、娘のことを愛していたし、娘もそれをわかっていたのよ。
彼女は、人柱に立つことを、むしろ誇らしく思っていたの。
だから、あなたが現世で罪悪感を持つ必要はないのよ。」

そう霊能者は言っていたと思う。

「あなたが、今の人生で先に進めないのは、
この時の悲しみの記憶が、心の奥底にあるからなの。
もう手放しましょうね。自由になっていいのよ。」

そんなことも言われた気がする。

だけど、
罪悪感を持たない、なんて無理…
だって、自分が産んだ子でしょう?
どんな障害があったって、手放すなんて考えられないし、
今の私なら、絶対に「うん」と言わない。
自分が人柱に立ったって、娘を守るはずだわ。
なぜ…



ケイコは、この日以来、今までに試してきた、
スピリチュアルリーディング、チャネリング、ヒプノセラピーなど
一切のセラピーを封印してしまった。



霊能者が、ケイコに、人柱のことを語ってから、数年が経っていた。
あの日以来、涙腺のスイッチがおかしいと、自分で思う。
ここ、普通泣くとこでしょ?と思うところで泣けなかったり、
突然涙があふれてきたりする。

胸の奥に、時折、チクリと痛みが走ることはあったけれど、
あの日のことを、思い出すことはほとんどなくなっていた。


そんなある日、
職場でたまに顔を見る、取引先の女性に、
ケイコが書類を持っていった時のこと、
すでに、打ち合わせは終わり、会話は雑談に入っているようだった。

「それでね、私、昔、っていっても、今の自分じゃないですよ、
生まれ変わりってあるじゃないですか~、
その生まれ変わる前の人生で、
橋が流されないように、人柱に立って死んだことがあるらしいんですよ~」

打ち合わせテーブルから離れようとしていたケイコは、
ぎょっとして思わず振り返った。

「い、今、ひとばしら、って言いました?」


<ひとばしら~その3~>につづく

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