火星への道

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RADは、かく語りき

2013-06-03 22:17:44 | MSL

日本時間31日3時30分からNASAが media teleconferenceでCuriosity搭載のRADによる測定結果を発表した内容がWhat'sNewで纏められています。
その詳細は、「the journal Sciencethe」の5月31日版に「Measurements of Energetic Particle Radiation in Transit to Mars on the Mars Science Laboratory」として発表されています。

今回の発表は、地球から火星までの惑星間飛行中の宇宙線量についてでしたね。
火星地表面での測定もされていますが、まだ検証中なのでしょう。
当ブログの2012年11月16日「REMSとRADの競演=気圧と放射線の関係」に火星地表面でのRADの測定結果を紹介してますが、まだ測定データーのままなので、発表を待ちたいと思います。

やはり、かなりの被爆を覚悟しなくてはならないことがハッキリしました。
Curiosityは、地球から火星まで約253日間で5億6000万キロメーターの旅でした。
その間、2012年12月14日の当ブログ「宇宙放射線を測定開始です」に記載してから7月13日までの7ケ月間の測定をしています。
その7ケ月の測定結果は、当ブログ8月5日「初めての測定です」でも紹介していますが、今回はそのデーターを元に地球から火星まで6ケ月で飛行した場合の被爆量を下図の通り見積もっています。
6ケ月間というのは、現在の技術で最短で地球-火星間を飛行できる期間と考えられています。
*もっと早く行くことも可能ですが、火星に到達できても着陸が困難になるのと搭載荷重が減るため、現実的ではありません。
この結果から、地球-火星間を往復した場合の宇宙飛行士が浴びるであろう宇宙線量は、660 ± 120 ミリシーベルトと見積もられています。

 

片道6ケ月で約330ミリシーベルトを浴びるとなると、蓄積線量の点では、5日か6日に一度全身のCTスキャンをしているのに等しいとの事です。
それなりの防御法が必要となると言うことですね。

とにかく、通常の状態ではありませんが、NASAとしては、対応策はできると考えています。
事務局もそう思っています。

例えば、現在のISSでの被ばく線量管理をみると下記のサイトの10ページ以降にあるとおりです。
この数字を見る限り、火星に行く希望を今すぐに捨てる必要はなさそうです。
「国際宇宙ステーション搭乗宇宙飛行士の放射線被爆管理について」 

1)生涯実効線量制限値(単位:ミリシーベルト)(全身)

 *リスク:放射線被曝により、がんで死亡する確率

__________女_______男
被曝開始年齢 _____(リスク)______ (リスク)
___27-29___600 (3.2%)___600 (2.9%)
___30-34___800 (3.1%)___900 (3.1%)
___35-39___900 (3.1%)__ 1000 (3.1%)
___≧40___ 1100 (3.0%)__ 1200 (3.1%)

2)等価線量制限値(単位:ミリシーベルト)

組織・臓器___ 1週間___ 1年間___ 生涯
_骨髄_____-_____500____-
水晶体_____500___2000____5000
_皮膚____ 2000___7000___ 20000
_精巣_____-____ 1000____-

*放射線による障害が発生しないよう、組織ごとに線量制限値を定めている。

3)飛行中止レベル(暫定)
現在、ISS参加各宇宙機関の調整において、次の飛行中止レベルが暫定的に合意され、Flight Rules(ISS飛行時の運用手順書)に盛り込まれている。 

骨髄等価線量
30日間 250ミリシーベルト
1年間  500ミリシーベルト
*飛行中止レベルとは、値を超える被曝があったときに飛行中止が検討される基準であり、実際のISS飛行時には全宇宙飛行士がこの基準に従った被曝管理運用を受ける。

以上です。
放射線被爆は、この宇宙で暮らす限り避けることの出来ないものであることを認識して、やたらと恐がるばかりではなく、冷静に対応していくべきではないかと考えてます。
生命は、放射線と切っても切れない関係で進化してきたのであり、今後も付き合っていかなくてはならないのでしょう。

下図は、2011年12月から2012年7月の間にCuriosityが測定した自然放射線のデーターです。
5回の太陽活動による影響が記録されています。
大変、興味深いデーターだと思います。
じっくり眺めていると、自分があたかも実際にCruiseStageに乗っていたような感覚がしてきますね。 


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