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葬式費用は、喪主の負担か?

2005年11月02日 | 民法(親族、相続)
 葬式費用は誰が負担すべきでしょうか? 喪主(相続人)でしょうか、亡くなった故人(被相続人)でしょうか? 

 この問題は、特に、相続人が相続放棄や限定承認をする場合に相続債権者との間で問題となります。つまり、被相続人が負担すべきものでしたら相続債務となり、相続財産から支出され、相続人が負担する必要はありません。逆に、相続人の負担であれば、葬式費用は自己の財産(又は香典)から支出しなければなりません。

 東京大学の内田貴教授は、次のとおり喪主の負担だと考えておられます。
 
 内田貴著『民法Ⅳ 債権各論 』364頁
 (財団法人東京大学出版会、1997年7月7日発行)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4130323024/qid=1132186237/sr=1-4/ref=sr_1_10_4/249-9233012-7382739
「葬式費用についても説が分かれ、費用に含まれるとする立場は、葬式費用に関する一般先取特権の306条、309条はこれを前提とした規定であると解する。
 しかし、309条でいう葬式費用の債務者が、既に存在しない死者自身であるというのは奇妙である。喪主が債務者と解するべきであり、したがって、葬式費用は喪主の負担というべきでだろう(『新版注釈民法(26)136頁(泉)』参照)。」

 私は、相続人が喪主の場合は原則として、その喪主の負担とすべきだと考えます。 しかし、相続人間で相続争いがあったり、葬式という儀式を取り行う者が必ずしも相続人とは限りませんので、例外として、条理をもって判断すべきだと思います。

 ところで、相続人が、葬儀費用等を被相続人の郵便口座から支出したため、相続放棄の申述を却下した家庭裁判所がありました。しかし、その決定を取消した大阪高決平14・7・3(家月55・1・82)がありますから、相続財産から葬式費用を支出したとしても、相続放棄等が認められないわけではありませんので、お間違えのないように願います。私もこの決定を支持します。
 次に、この決定を紹介する論稿がありましたのでご紹介します。

『法律時報(76巻6号) 臨時増刊』96頁 「判例回顧と展望/民法」(日本評論社、2004年5月24日発行)
https://www9.milai.pref.mie.jp/MEPLIB/servlet/search.detail_list?tilcod=2999002671968&volumeFlag=1
「4 相続放棄
 相続放棄に関して、⑧大阪高決14・7・3(家月五五・一・八二)がある。本件は平成十○年四月にAの死亡後、Xら(妻X1、長男X2、二男X3)には香典とし144万円のほか、被相続人A名義で300万円の郵便貯金が残された。Xらは、これらから葬式費用、仏壇・墓石購入費として計493万円余を支出し、不足分46万円余をXらが負担した。その後、平成13年10月になって、信用保証協会Yから被相続人宛に求償権および損害金総計5941万8010円と記載した残高通知書が送付され、はじめてXらはAに多額の借財があることを知った。そこで、この時点から三ヵ月以内にXらは相続放棄の申述をした事案である。

原審は、X1/X2については、貯金を解約して墓石購入費にあてたことは、921条1号の「相続財産の処分」に当たる、として申述を却下した。

これに対しXらが抗告した。本決定は、被相続人に相続財産があるときは、それをもって被相続人の葬儀費用に充当しても社会的見地から不当とはいえず、相続財産があることがわからないまま遺族がこれを利用して仏壇や墓石を購入することは自然な行動であるから、Xらの行動は「相続財産の処分」には当らない、として原審決を取り消し、Xの申述を受理した。」 

内容証明郵便を作成するにあたって

2005年11月02日 | 法律一般
 内容証明郵便とは、非常に効果がありますが、逆に、発信した者にとっても大きな逆作用があり、まさに諸刃の剣です。
 
 次は、少々古いのですが、内容証明郵便を作成する際に、現在においても、なお、有用な指針となる論稿だと思いますので、お知らせします。
 それは、『弁護始末記1 法廷からの臨床報告』(弁護実務研究会編集 昭和55年12月10日付け大蔵省印刷局発行)の中で、東京都弁護士共同組合専務理事(当時)の高橋保治氏執筆『内容証明郵便』です。その中から、一部を次に転記します。

「さて、最後に内容証明に関する七つのチェックポイントを紹介しておこう。
1 この文章は何を目的として書いたのか。
2 相手方を不当に傷つける不穏当な記載はないか。
3 この文章は撤回し難い最後通告だと何度も考えてみたか。
4 相手方に誘発されて書かされた文書ではないのか。
5 この文書が相手方の有力証拠になることはないか。
6 この文書の内容が所定の法律要件を備えているか(契約解除の場合(民法541
条)など催告期間をおいたかどうか等)。
7 この文書の効果がなかったとき次に打つべき手段を考えているか。」

以上