いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

尖閣に領土問題はない?・・・この言い方を、何もしないことのエクスキューズにしてはいけません。

2012年10月16日 02時43分02秒 | 日記

 またか、という思いがします。
 玄葉外相は、来日中のウィリアム・バーンズ米国務副長
官と15日に会談し、
「尖閣諸島をめぐる領土問題は存在しない」
 という「日本の立場」を説明しました。

 本当に「またか」です。
 
 日本政府が、あくまで領土問題は存在しないと言い張る
姿勢でやっていくなら、2点、注文があります。

 注文の第一は、領土問題は存在しないと言うのであれば、
その姿勢を、もっと世界に向かって発信しなければならな
いということです。
 すでに、中国は、アメリカの主要紙に、尖閣は中国の領
土だという大きな広告を出しています。
 欧州では、中国の駐英大使が、英紙に論文を投稿し、第
二次大戦の戦勝国である中国とイギリスは、敗戦国である
日本に対し、肩を並べて当たっていこうと訴えました。
また、台湾は台湾で、同じように、アメリカの主要紙に
尖閣は台湾の領土だという広告を出しています。

 では、日本政府は、そういう広告を出しましたか?
 残念ながら、出していません。

 尖閣をめぐる領土問題は存在しないというのなら、中国
や台湾が「尖閣は我が国のものだ」という広告を出したの
に対し、「いや、領土問題は存在しません。なぜなら、そ
もそも、尖閣は日本の領土だからです」という広告を出し
返さないのでしょう。

 日本国内で、「領土問題は存在しない」と訴えても、ま
ったくなんの意味もありません。

 注文の第二は、領土問題は存在しないという言い方を、
政府というより、はっきりいえば、役人・官僚が、何もし
ないことの言い訳に使わないでほしいーーということで
す。

 尖閣をめぐる領土問題は存在しないと言い続けていれ
ば、何もせず、黙っていればいい。政府には、いや、
役人・官僚には、そういうところが、はっきりと見られま
す。
 中国や台湾がアメリカの主要紙に広告を出したのに対
し、外務省は、広告を掲載した新聞に抗議したということ
ですが、そんな抗議は、「しないよりまし」という程度の
ことでしょう。
 広告は、お金を払えば出せるのですから、広告を掲載し
た新聞に「なぜそんな広告を掲載したのか」と言ってみた
ところで、意味のないことです。
 それよりも、なぜ、同じように日本政府が「尖閣は日本
の領土です」という広告を出さないのでしょう。

 それは「尖閣に領土問題はない」と言うからです。
 尖閣に領土問題はない、そもそも日本の領土なんだから
と言ってしまうと、「だから、尖閣は日本の領土だという
広告なんて、ださなくていいんだ」ということになってし
まいます。結局、何もしないということになってしまいま
す。
 ここにあるのは、「領土問題はない」という言い方を、
政府、役人・官僚が、何もしないことの言い訳に使ってい
るという構図です。

 これは、このブログでも書いた役人の習性
  「備えなければ憂いなし」
 そのものです。

 あろうことか、政治家である玄葉外相まで、アメリカの
国務省の副長官に
 「領土問題はないんです」
 と話している。

 仮にも、アメリカは、日本の数少ない同盟国ですよ。
 その国務省の副長官に、「尖閣に領土問題はありません」
は、ないでしょう。
 言うのであれば、
 「ご承知のように、尖閣で、中国との間でやっかいなこ
とになっています。中国を沈黙させるには、どうしても、
同盟国であるアメリカの力が必要です。
  尖閣が中国の領土になれば、西太平洋で、 中国の影
響力が増してしまい、アメリカの太平洋政策にも支障を来
すでしょう。
  尖閣では、どうか、日本をバックアップしていただけ
るよう、お力添えをお願いしたい」
 と言って、アメリカの積極的な助力を要請しないといけ
ません。

 それなのに、「領土問題はない」と言えば、
 アメリカ政府は、「ああ、そうなんですか。じゃあ、ア
メリカは、とくに何もしなくてもいいんですね。それなら、
あとは、日本政府でよろしく頼みますよ」
 ということになってしまいます。

 「領土問題はない」という言い方が、結局のところ、何
もしないことのエクスキューズになっているとしか思えま
せん。 
 このままでは、日本は、尖閣をめぐる情報戦争に負けて
しまいます。
 


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