
米国のエヌビディアは、グラフィックス処理ユニット(GPU)の開発で知られ、特にAIや機械学習のトレーニングにおいて重要な役割を果たしてきました。しかし、2025年1月27日、エヌビディアは市場で約92兆円の時価総額減少を経験しました。この背景には、中国のディープシークの登場があるとされています。ディープシークは、生成AIの分野で急成長しており、その革新的な技術がエヌビディアの市場シェアに脅威を与えているのみならず、トランプ大統領のAGI戦略に大きな影響を与えていくでしょう。
・AIとAGIの違い
この話を始める前に前提として、人工知能(AI)と汎用人工知能(AGI)の違いを理解することは重要です。エヌビディアがGPU技術でAGI開発を目指す中、ディープシークが競争相手として台頭。トランプ大統領は中国のAGI進展に危機感を抱き、米国の半導体戦略を強化する必要性を感じています。競争が激化する中、技術革新が鍵となります。
AIは特定のタスクに特化したシステムであり、画像認識、音声認識、自然言語処理、ゲームプレイなど、「特定の領域」で高いパフォーマンスを発揮します。
これに対して、AGIは「人間の知能と同等の幅広いタスク」をこなす能力を持つ理想的なAIです。AGIは、異なる領域の知識を統合し、新しい状況に適応する能力が求められるため、その実現はAI技術の最終的な目標の一つとされています。
・エヌビディアのGPU開発とディープシークの台頭
AGI覇権議論で特に注目すべき企業がエヌビディアです。エヌビディアは、AI技術の進展において重要な役割を果たすグラフィックプロセッシングユニット(GPU)を開発しました。彼らのGPUは、機械学習や深層学習のトレーニングを加速し、AI技術の発展を支えています。エヌビディアは、AGIの実現を目指すプロジェクトにおいて、自社のGPU技術を活用し、業界での優位性を確立しようとしています。このため、AGI開発におけるリーダーシップを維持することを目指しており、その影響力は世界中のテクノロジー業界に広がっています。
しかし、ディープシークは、エヌビディアにとって新たな競争相手として注目を集めています。ディープシークの「R1モデル」は、特に数学的推論や高度なコーディングタスクにおいて、従来のGPUを超える性能を持つとされています。R1は複雑な問題解決や多様なタスクに対応する能力が高いことが評価されており、その性能向上はMixture of Experts(MoE)アーキテクチャの採用や、大規模なデータセットを活用したトレーニングによるものです。この進展は、AI技術の進化において重要なマイルストーンとなるかもしれません。
・株価への影響
ディープシークの技術力向上は、エヌビディアの株価にも影響を与えました。
ディープシークが技術的な優位性を持つことで、エヌビディアの市場シェアや将来の成長性に対する懸念が高まり、投資家がエヌビディア株を売却する動きが広がった結果、株価の急落が引き起こされました。ディープシークが低コストで高性能なAIモデルを開発したと、エヌビディアを含む米国のハイテク企業がAI分野での優位性を失うのではないかという懸念が広がり、エヌビディアの株価は17%下落しました。時価総額はなんと5890億ドル、92兆円が一瞬にして失われたのです。
著名なリスクアナリストのナシーム・ニコラス・タレブ氏は、この急落を「ほんの序章に過ぎない」と警告し、今後さらなる下落が予想されると指摘しています。タレブ氏は、AI関連株の過大評価についても警鐘を鳴らしており、投資家がAIの可能性を過信していることに注意を促しています。
このように、新たな競合の出現が既存の企業に対して与える影響は、無視できないものです。競争が激化する中で、企業は常に革新を求められ、その結果として市場のダイナミクスが変わることもあります。
・ディープシークの技術力向上の背景に中国共産党あり
ディープシークが技術力を向上させた背景には、いくつかの要因があります。まず、大規模データセットの利用が挙げられます。膨大なデータを用いたトレーニングにより、モデルの理解と精度が向上しています。また、最新のアーキテクチャの採用も重要であり、MoEアーキテクチャなど、先進的な技術を取り入れることで、リソースの効率的な利用が実現されています。さらに、AIや機械学習の分野での専門知識を持つ人材が集まることで、技術の革新が促進されています。資金調達も重要な要素であり、投資家からの資金提供により、研究開発が進んでいるのです。これによりディープシークは短期間で急成長を遂げたと考えられます。
中国政府のAI技術推進政策も、ディープシークのような企業にとっての追い風となっています。中国政府はAI技術の発展を国家戦略として重視しており、企業に対して資金提供や優遇措置を行っています。この支援により、企業の成長が促進される可能性があり、競争環境が一層激化しています。中国の企業は、国家の後ろ盾を受けることで急速に技術を発展させ、国際的な競争力を高めています。この点が資本主義社会にない共産主義社会の強みと言えば、そうとも言えるでしょう。市場原理とは全くかけ離れた国家的な投資戦略です。
・トランプ大統領の危機感と半導体戦略
このような競争の激化に対して、トランプ大統領は危機感を抱いているはずです。特に、中国のAGI技術の急速な進展は、米国の国益に対する脅威と見なされることが多く、米国の半導体産業の競争力を強化するために、政府は国内生産を促進し、研究開発への投資を増やす戦略を展開する必要があると感じているでしょう。具体的には、税制優遇や産業への直接的な支援を通じて、米国企業が技術革新を続けられる環境を整えることが求められています。このような施策は、米国が再び技術のリーダーシップを取り戻すための重要なステップとなるでしょう。その就寝となる計画がスターゲートプロジェクトである事は先のブログに記した通りです。詳細はこちらをご参照ください。
・競争の未来
これらの要因を考慮すると、エヌビディアとディープシークの競争は今後も続くと予想されます。技術革新や市場ニーズの変化、パートナーシップ、政策、ユーザーのフィードバックが、競争の行方に大きな影響を与えるでしょう。特に、ディープシークが提供する技術がコスト効率に優れている場合、エヌビディアに対して競争優位性を持つ可能性が高まります。また、エヌビディアがどのようにして自社の技術を進化させ、競争に打ち勝つのかも注目されるポイントです。
コスト的な観点から見ると、エヌビディアのGPUは高性能ですがコストが高くなる傾向があります。ディープシークが効率的なアーキテクチャを採用し、エネルギー消費や計算リソースのコストを削減できれば、全体的な運用コストを低く抑えることができます。さらに、エヌビディアは生産規模が大きいため、スケールの経済が働き、コストを抑えることができますが、ディープシークも競争力のある価格設定を行うことで対抗可能です。
今後の技術発展や市場動向は、両者の競争にどのような影響を与えるのか、注視する必要があります。AGI技術の進展は、私たちの生活やビジネスにおいて大きな変化をもたらす可能性を秘めているだけではなく、人間の叡智を超えた全く新しい世界が展開される、「新しい人類」が誕生すると言った壮大な世界像、哲学的な要素を含んだ未来設計図議論に展開していくのです。
だから、米中は「ここまで競いあう」のだという本質を理解していかなければなりません。現段階で日本はと言うと、メインステージではなく、メインステージを構成する、ほんの一部の部品にしか過ぎないのです。内政も大切ですが、革命的な世界の動きにこのままでは遅れてしまうと言う危機感が、抑えても、抑えても吹き出してくる毎日です。
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