二人のユダ

その日⸺⸻
神よ、神よ、なぜ私を見捨てられたのか!?と、その人の声がとどろいて、灰色の空に無数の罅(ひび)を入れた。

第8章 横顔  Qはヨハネの“視える”力が羨ましい。その2

2018年05月18日 | 日記
「これは生まれつきですからね~」
布教の旅を続ける道すがら、Qはふいに声をかけられた。
声の主はヨハネ。
(自分にもヨハネさんのように先生のオーラが視えたら、もう迷ったりしなくなるのにな~)
と、Qが思った時のことだった。
繰り返すが、思っただけで、声に出してはいない。
しかしQは「やっぱり駄目なんですかね~」と、いつの間にか隣を歩いていたヨハネに普通に返答していた。
もう慣れたというか、諦めていた。
ヨハネの円い顔は宗教家特有の善意丸出しの笑顔に満ち満ちていて「心を読むのは止めてください」などといちいち抗議する気を失くさせるものだったから。
とくにQとは波長が合い、耳に入ったのが“心の声”か“肉声”か区別がつかないらしく、また、その“声”がどちらであるにしても、ヨハネはQが知られたくない類いのことは決して他所で口にするような人柄ではなかった。
(俺がマリヤさんに憧れていることなんか、みんな知られてるんだよな~)
そう思い至れば、無抵抗状態にならざるを得ないということもある。
むしろ、誰にも言わないでくれてありがとうございますと感謝する気にさえなってしまうのだった。
「子供の頃からオーラを見ることはできました」
「特別な能力ですよね。ほんとに羨ましいです」
「・・・・・・」
「?」
「・・・・・・いいことばかりではなかったですけどね・・・・・・」
ヨハネの口調が唐突に重くなり、見ると、あの笑顔が消えていた。
もしかしたらとQは思った。
ヨハネの“力”はヨハネを幸せにはしなかったのかもしれない。
人の心を覗く子供だと気味悪がられたのかもしれないし、知らない方がいい人間の悪意にずっと晒されてきたのかもしれない。
少なくとも、Qが軽々しく「羨ましい」と口にするようなものではなかったことが、初めて見るヨハネの無表情から感じ取ることができた。
「で、でも、ほら、先生の黄金のオーラが視えるから、ヨハネさんは先生を信じて迷うことがなかったんでしょう?」
「ええ、それはもう・・・・・・。黄金の太陽が歩いてるんですからね。先生と巡り合ってから、迷うということはありませんでしたね」
「それはやっぱり凄いことですよ。自分は駄目ですね。こうしてお仲間に加えて貰っても、自分に理解できないことがあると、すぐに迷ってしまうから」
「それでいいんですよ」
「え?」
「先生は私におっしゃったことがあります。人間は迷うから強くなれるんだと」
「迷うから・・・・・・」
そしてヨハネは言った。
「私はね、思うんですよ。きっと私なんかより、迷い抜いて強くなったQさんの方がずっと先生のお力になれるんだろうなあって」
「それはないです」
Qはきっぱりと否定した。




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