私の好きなベーシストの一人、スタンリー・クラークのソロ作品CDのいくつかが2008年2月から順次リイシューされます。今回リイシューされたタイトル群は70年代のアルバムを単品で集めたい人にはとてもいい機会になりそうです。
Stanley Clarke
リターン・トゥ・フォーエヴァーの成功からソロ・デビュー盤『Children of Forever』をリリースしましたが、チック・コリアの影響下で制作されたことに不満が残ったらしく、このセカンド・アルバムから独自色を打ち出そうとしていることはアルバム・タイトルに表れています。アコースティックベースのイメージが強かったクラークが、エレクトリックベースの使い手としてもその名を轟かせることになったセカンド・アルバム。トニー・ウィリアムス、ヤン・ハマー、ビルコナーズとの《ロプシー・ルー》がイチオシ。1974年作品。
Journey to Love
ジェフ・ベックと初共演。その後も度々共演する契機となったサード・アルバム。強烈なファンクビートの《シリー・パティ》のほか、コルトレーンに捧げた曲や、オーケストラを動員した大作も収録し、作・編曲にも力を注いだ1975年作品。アコースティック、エレクトリックを使い分けていますが、ロック~ファンク~ジャズ~クラシックの要素を一枚にまとめた分、やや散漫な印象も残る。
School Days
クラークのソロ名義代表作といえばこの盤に止めを刺します。タイトル曲のイントロが強烈に印象に残ります。エレクトリック・ベースソロも圧巻。それに輪をかけて凄いことになっている#6《Life Is Just a Game 》はグラミー候補にもなった。唯一のアコースティック・ベース使用曲《Desert Song》でアルコソロを披露。同曲でジョン・マクラフリンのアコギソロも聴きもの。
I Wanna Play for You
熱狂のライブ音源とスタジオ録音で構成、1970年代の活動を総括した第4作(1978年作品)。このあたりからアコスティック・ベースのスタジオ録音は影を潜める。スタン・ゲッツがバックで参加した#3《Streets of Philadelphia》ではお得意(?)のヴォーカルを披露。後の『クラーク・デューク・プロジェクト』への布石となった。#10《My Greatest Hits》、#11《School Days 》のライブ演奏が熱い。LPリリース時は二枚組みでしたが、リイシューされたら3曲少ない!これはCDのデータ容量の制限によるものだそうです。
The Clarke/Duke Project, Vol. 1
共演の機会が多かったジョージ・デュークのヴォーカルを大々的にフィーチャーしたブラコン・アルバム。クラークはエレクトリック・ピッコロベースを駆使してギターの音を擬似的に作っていますが、出来栄えはギターそのもの(この手法はブライアン・ブロンバーグも『ベース・アクワーズ』で取り入れていますね)。シングルカットされた#3《Sweet Baby》はヒットチャート入りするなど商業的にも大成功を収めました。後にVOL.2、VOL.3と続編をリリースするほか、近年までクラーク・デューク・プロジェクトとして2人で世界各地をツアーで回っています。個人的には#1《Wild Dog》がのインパクトが忘れられません。
If This Bass Could Only Talk
『クラーク・デューク・プロジェクト』の商業的な成功により1980年代はブラック・コンテンポラリーにシフトした作品が多くなったが、久々にインスト作品としてリリースした88年作品。ジャコに捧げた#2《Goodbye Pork Pie Hat》はウェイン・ショーターが参加。どことなくウェザー・リポートを思い出すつくりのアレンジ。映画『タップ』に主演したグレゴリー・ハインズ(故人)のタップ・ステップとベースのデュオを試みる。
Live at the Greek
ビリー・コブハム、ラリー・カールトンら70年代から活躍していたスタープレイヤーとのライブ音源。#2《Stratus》、#7《School Days》など、参加メンバーのオリジナルのほか、ここでも#5《Goodbye Pork Pie Hat》を取り上げている。続編やスタジオ盤は制作されませんでした。
The Bass-ic Collection
1970年代から80年代までのアルバムから選び抜かれたベスト盤。スタンリークラークの多彩な活動がこの一枚で把握できます。
At the Movies
1980年代後半からクラークの仕事の範囲は映画音楽にまで及ぶようになり、ジャズ作品としてのリーダー作のリリースは少なくなった。彼が関わった映画音楽(自ら演奏もしている)のベストトラックを集めたました。
1, 2, To the Bass
ジャズ作品としては1993年リリースの『East River Drive』から10年のブランクを経てリリース。スムース・ジャズ、ヒップ・ホップの要素を盛り込んで10年間のやりたかったことを全部詰め込んだ結果、やや滅茶苦茶(笑)。ただ、一曲一曲の完成度はさすがに高く、お世辞にも上手いとはいえないヴォーカルも披露。アコースティック・ベースによるソロ#9《Touch》のライヴ演奏は圧巻。
上記は全て輸入盤で、それぞれ一枚あたりの価格が742~860円(『The Bass-ic Collection』のみ982円)。ずいぶん安く設定したものです。
クラークのオススメ盤はRTFのファースト・アルバム『Return To Forever』と、ソロ名義では『Children Of Forever』~『School Days』までの計5枚かな…と思っています。
Return to Forever
Children of Forever