小島と広島と私たち

島爺の倉橋島での農作業と,
広島を中心とした孫たちとのくらし

老いを生きる

2009-11-11 23:48:51 | 私見
 新聞から

「老いの壁」と向き合う 【毎日:11月11日,養老孟司×中川恵一対談から抜粋】

・ 100歳以上の長寿者が今年9月現在で4万人を超えた。そのうち86%が女性。
・ がんの死亡は男性が女性より1.5倍ほど多い。
  乳がんや子宮がんなど女性特有のがんがあるにもかかわらず男性が多いのは生活態度が原因
・ 年を取り,独り暮らしになった時,圧倒的に女性が長生き。
  男性は家事をせず,身体を動かすことが少ない。若い頃は脳だけあればそれでよいと考えていたが,ようやく身体が大事だと考えるようになった。
・ 日常生活が普通にできる健康寿命は女性が79歳,男性は73歳。その後は介護の問題が生じる。
・ 日本の寝たきり人口は約400万人。65歳以上の認知症が約200万人。
・ 寝たきりにならない秘訣は,身体を動かすこと。
  脳を支えているのは身体であり,それをおろそかにするとまともなことが考えられなくなる。
・ 介護と同時に,課題は,日本の自殺者の多さ。年間3.4万人。
  がん志望者は年間34万人。その1割にあたる人が自殺している。
・ 高齢者は,以前は大家族の中で自分の生き方を家族に示すことができた。
  病院で亡くなる人が85%という時代で,子供たちが老いや死を間近でみることが少なくなった
・ がんで死なないためには検診が特効薬
  欧米では8割近くが受診するが,日本では2~3割
・ 私たちの身体では毎日,がん細胞が生まれ,それを免疫が殺している。
・ たった1個,見のがされた乳がんの細胞が1㌢になるまで15年。
・ 1~2㌢ までが早期がんだが,この間の2年間に定期検診を受ければ発見される。
・ 近代医学は病気を何とか治すと言ってきたが,年(年齢)は治せない。
  高齢になれば,がんになる確率が高まるのは仕方がないこと。
・ 親が年を取って病気になるのは仕方のないことなのだ。これを問題と考えないこと。介護もだ。
                 (共に東京大学医学部卒,現,名誉教授と准教授)

※ 見習いたい最期の姿 
      【毎日:11月11日,「がんから死生を見つめる」から抜粋】:中川恵一
 先日亡くなった50歳の患者さん。膵臓がん。学生時代に起業した上場企業のオーナー。
別の病院で手術を受けたが再発。がんが神経を圧迫し,みぞおちに痛み。膵臓がんには,ジェムザールという抗がん剤が特効薬だが,「(倦怠感などの)副作用が仕事に差し支える可能性がある」と,拒否された。自ら主治医に放射線治療を提案,東大病院の中川Drにかかる。
 放射線の治療で痛みは軽くなったが,肝臓への転移を確認。がんは転移すると,窓から出ていった小鳥が捕まえられないのと同じように,治癒はほぼ不可能で,本人もそのことはよく知っていた。
 日本では,まず家族に病状を説明するのが普通だが,この人の場合,すべて,本人とだけ話をしてきた。「奥さんにも説明した方がよいのでは」との提案にこう答えた。
 「腫瘍マーカー(がんによって作られる血液中の物質)の上昇が緩やかになっただけで,女房がすごく喜ぶ。来年までもたないかもしれない,なんていうと,『そんなこと言わないで』って泣くんです。女房のことを考えると,少しでも頑張らなきゃなって思います。女房をがっかりさせたくない」
 彼は,自分の死を恐れるのではなく,家族や友人が,自分の死を嘆くことを恐れていたのだ。そして,亡くなる前日まで自宅で過ごし,まだ小学生のお子さん,一人ひとりとお話をして,来客とも会われたそうだ。
翌朝,容体が急変し,救急車で東大病院まで搬送され,そのまま亡くなった。
 自分もがんで死にたいと思っている。見習いたい死の姿があった。