Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「脳内ニューヨーク」チャーリー・カウフマン

2009-11-19 03:04:26 | cinema
脳内ニューヨーク [DVD]
クリエーター情報なし
ポニーキャニオン


脳内ニューヨーク公式サイト

脳内ニューヨークSYNECDOCHE,NEW YORK
2008アメリカ
監督・脚本:チャーリー・カウフマン
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン、サマンサ・モートン他



最近時間があるのでいろいろと映画を観ており、
結果感想文がまったく追いつかない。
そのうえ今回の財布事件のダメージで、
気力も萎えている。

なので、いつもの調子でだらだら書いていると追っ付かないので
もっともっと適当に書き散らしていくことにしようと思っている。

*******

『脳内ニューヨーク』とても面白く観ましたよ。
そして泣きました。

見た感じでは邦題のニュアンスから感じられるイメージとはまた違った作品だったと思います。
ニューヨークを再現することにはあまり重きを置かれない。
御しがたくやるせない自分の人生というものを
生きながら同時に生き直す、そんな感じの、
仮想というよりはメタ化のニューヨークでした。

原題のSYNECDOCHEは、もう一見して理屈っぽそうな単語なんだけど(笑)
[名][U]《修》提喩(法), 代喩:sailでshipを表すように一部で全体を, 全体で一部を, 特殊が一般を, 一般が特殊を表す法.
という意味だそうで、こちらのほうが作品の内容をよく表している。(って当たり前か)
でも売れなさそうなタイトルww


【さて、以下はネタバレでござるよ~】


夫婦関係がうまくいかないケイデン。
奥さんは娘を連れてベルリンにいってしまう。
体の具合もあちこちガタが来ている。
洗面台の蛇口ですら彼に冷たい。
恋人ができそうなときにも、そんな生活が心の重荷になってうまく振る舞えない。

というケイデンのありがちな悲しい人生を追うのが前半。
わりとテンポがよくあっという間に10年くらい過ぎてしまう。
ここらへんはテンポがいい割にはちょっともたる感じがした。

けれどもケイデンがマッカーサー・フェローを手にして生涯をかけた劇作を始めるところからは、前半で示されたモチーフに劇での演技が重なりあい、全体が有機的につながりはじめる。
ここから映画全体も大きく運動し揺らぎ始める。
この感じはすばらしい。

演技をし演出をする姿もまた演技の素材となるという、入れ子状態が、
人物の役割の重層化を生んで、観ていて心地よい混乱を覚える。
と同時にリアリズムの枠も緩み始め、幼少のころに書かれたものしかないはずの娘の日記が成長した近況を語り出したり、火事につつまれた家で恋人と結ばれたりする。

ああ、うまく語れない。
この映画のすばらしさをどう言葉にして良いかわからない。

この人生を再現するというケイデンの試みにより
人生も、彼や周囲の人間たちのあり方も変わっていき、
その変化がまた再現にとりこまれる。
そのなかで、物事の意味や感情的な側面が多様にうかびあがり、また変化する。
こんな手法があったのか。
そしてなんて人生って切ないのか。

手法に驚くとともに、泣けもする。
う~ん。こんなんではよさが伝わらないかも。。。

*****

とにかく、入れ子感にくらくらした。
広大なセットを作る巨大な倉庫?の建物自体が、
そのセットのなかに組み込まれている。
となると、そのセットの倉庫の内部には、もう一回り小さなセットが作られているはずで、さらにその小セット中の倉庫には小小セットがあるはずで・・・・

くらくらする
倉庫に張られた地図だって同じで、ぐんぐん入れ子になるはず。

これはケイデンのやっている劇もおなじこと。
演出するケイデン自身の役が設定され、演出するケイデンを演じる。
となると、演出するケイデンを演じる役者は、演出するケイデンを演じる役者を劇中で設定することになる、とその役者に設定された役者は・・・・

ああ、目が回る。

この入れ子状態はそれ自体で十分面白いのだが、
この入れ子はある意味メタレベルの増殖でもあるわけで、
これによって醸し出されるさまざまな視点が、
ケイデンの人生の悲しみをひしひしと感じさせることにつながっていく
そこのところがいいと思うんだよね。

なんども繰り返される、元妻のマンションのドア前での鍵の受け渡しとか、
そういうところで悲しみの層が折り重なって、泣ける。



うむむ
うまく表現できないのであきらめる。

******

あのピンクの箱ではケイデンと一緒に本当に泣きました。
でもあの箱があそこにまだあったというのは
心の底で娘も父親の記憶を断ち切れなかったということだろうとあとから思い、また泣きました。

子供を持つ父親ならばこの映画のことがよくわかるのではないかとも思います。
とてもよい映画です。



****

エミリー・ワトソンはやっぱり歳取ったな。

娘オリーヴを演じたセイディー・ゴールドスタインがかわいかったな。あの子にタトゥーされたらそりゃボコボコにしたくなるよ。うん。




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8 コメント

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神経症映画は好き (かえる)
2009-11-29 01:03:48
お父さんなmanimaniさんは切ない共感度も高かったのですねー。
私には泣けるほどではなかったのだけど、ぐるぐるウダウダ感はわかるわかるーって感じで面白かったですー。
心の機微。 (BC)
2009-11-29 14:56:03
manimaniさん、こんにちは。
トラックバック&コメントありがとうございました。(*^-^*

>とにかく、入れ子感にくらくらした。

地球の中に国があって、その中にニューヨークがある。
そして、倉庫の中には・・・。
入れ子状態にする事で人間が存在する位置づけを示し、
その中での心の機微を表したかったような気もしました。

ピンクの箱を見つけてケイデンが泣く場面はせつなかったですね。
お父さん (manimani)
2009-11-29 22:47:45
☆かえるさま☆
そうそう。かえるさんも一度でいいからお父さんをやってからこれを観てください。
そうすっとうるうる泣けますから。
(ムリ)
特に子供が娘である場合には。
入れ子 (manimani)
2009-11-29 22:50:30
☆BCさま☆
こんばんは~
入れ子ってだけでなんか妙に魅力的に感じてしまうのはなぜなんだろうか??

人生を入れ子状に見始めると、生きる気力のあり方が根底から変わってしまうんじゃないか?
そんなことも思いました。危険な映画~

ピンクの箱、泣けますね~~;;
パリ記、お疲れ様でした (真紅)
2009-12-03 20:58:50
manimaniさん、こんにちは。
オリーヴちゃん、かわいかったですね。
ケイデンは時間の感覚を失っていくわけですが、そもそもその時間自体が幻だったんじゃないか、などと妄想してしまいました。
お財布、結局見つからなかったのでしょうか?
もう立ち直られたかな。。元気出して下さいね。。
まぼろし (manimani)
2009-12-03 21:55:02
☆真紅さま☆
こんばんは~~
オリーヴちゃんのことを思うと今でも泣ける~です。
人生って幻のようだなと言う映画でもあったのかなとコメ拝見して思いました。

で、「財布」の二文字はずっしり響きますね^^;はげましありがとうです。どうも出てきそうにありません。せめて保険証だけでも戻ってほしいのですが・・・
 (とらねこ)
2009-12-11 21:29:20
この映画を見た時に、一番にまにまにさんのことを思い出しましたよ。
まにまにさんの役は私がやろうかな。立候補します。私もこの映画、ボロボロ泣いてしまいましたね。でもこれについて考えれば考えるほど、元気がなくなりそうで、それも怖い。
財布もそうですけど、お金も、記憶も、人生も、気づかないうちになくしそうな気がします、私も。。
 (manimani)
2009-12-12 00:14:29
☆とらねこさま☆
やれやれ、思い出していただけましたかww
泣き仲間ですね。
考えるには何度か見ないといけないですね。DVD買っちゃうかもしれません。
財布・・・ずっしり・・

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