J’sてんてんてまり

はじまりは黎明期。今は、記憶と記録。

白髭

2007年06月17日 | 人にぞっこん

何年前だったろう。
静岡祭りの特別番組を放送するのにあたって、地元の地図を広げていた。
そうか、静岡と清水の合併を記念した年だった。
両市内の結び目を探していたのだ。
何か、見えてくるものはないか、さまざまな角度と新しい視点を得ようと、やがて地図を出したのだった。

記された旧東海道筋を追っているうちに、神社のマークが数多いのに気付く。
そして、神社を確かめていると、同じ社名の並びに、当時のディレクターとともに声を上げた。

「白髭神社って、多いねえ。」

どうしてだろう、というところで白髭神社の謎だけが心に残った。




全国に190社、小さな祠を入れれば376社という説もある白髭神社のうち、約3割が、旧静岡市内にある。

県内96社、安部川流域に、そのうちの半数以上46社。
清水区と庵原郡に合わせて22社。

やはり、随分多いのだ。

祀られているご祭神は、猿田彦乃尊と、竹内宿禰命。

総本社を琵琶湖西岸に置く白髭神社の分社が、何ゆえ、これほど静岡の地に多いのか。

これも、推論研究様々らしい。

そして、岐阜県には60社、木曽川、長良川を含む揖斐川水系に集中しているという。

静岡歴史民族研究会の望月茂さんは、各地を歩き、文献を当たった。

そのなかから、幻のように浮き上がってくる、古人の足跡を検討する。



安部川流域に広まる白髭神社を、河口から見る。
すると、まずは、海に程近い下島の地に始まり、南アルプスに向かって安倍川流域をなぞるように祀られている。

しかも、安倍川の西岸、支流の中河内川西岸、そして、もちろん西の支流、藁科川流域には、猿田彦乃尊を祭る白髭神社。

東には、竹内宿禰尊を祀る白髭神社。

清水区では、巴川下流に竹内宿禰を祀る白髭神社があり、付近の興津川沿いにも点在する。

木曾三川では、輪中地帯に白髭神社。

総本社の琵琶湖西岸では、水辺に、まるで厳島神社が如く神社が建ち、近江最古の大社として威厳を誇る。
背後の比良山系の山には、天の岩戸と称する磐座があり、その下には、横穴式古墳。





治水、雨乞い、水の神としても崇められる白髭神社。

ご祭神の猿田彦乃尊は、山から春を招く。

静岡市服織(はとり)の建穂寺には、自然石に注連縄をはってご神体が祭られる。
これは、新羅の秦氏が伝える、蛇を注連縄に模した眷属の祀りで、蛇は春を伝え、
同様に、猿も春を伝えると、望月さんは解く。

春ともなれば、稲作の事始。水は、大きな役割を持つ。

総本社の天武天皇に従四位下を授かった比良明神は、白髭明神と同一神、
背後の比良山系の古墳が横穴式で、渡来系、
そして、新羅と白髭の音の相似を鑑みて、渡来の先人を、猿田彦乃尊とみなしたのではなかろうか、と推察。

当時、農耕技術と治水技術などを持った人々が、海を渡り、日本海側や琵琶湖周辺に定住し、
またそこより伊勢湾に出て、黒潮に乗り、駿河湾に入り、安倍川沿いに移入してきたのではないか。

6世紀後半の賤機山古墳や、機織りにちなんだ地名が多く残る地域を見れば、
農耕、治水のみならず、機織りや養蚕にも卓越した集団が、駿河の地に広く住みついたのだろうと見ている。

安部川水系西に、まず最初の集団が移り住み、その後の集団が、
先の人々に遠慮して、東に広がっていったのではないか、という説も、地図を眺めると、あながち想像に尽きるとは思えなくなる。





白髭神社は、川に向かっている、
入ってきた川に向かい、神社を設けていったのではないか、と望月さんは語る。

渡来人が川を遡ったように、望月さんも、白髭神社の推論する流れを遡り、朝鮮半島にも調査に出かけた。

農耕、治水、養蚕、機織り、鉄、紙、高温で焼く器、たくさんの人と技術が、海を渡り、かの地から伝えられた。
海を渡る海人族であるから、また白髭神社は航海の安全のご利益もあることと一致するのではないか。

ご神紋の三つ巴は、ここからもたらされ、静岡市清沢相俣に残る雷石の伝説にも関連してゆく。

いくつもの推論を編み、解いては、また、編みなおし、残る事実の光を当て、ほころびを見つけることにも余念がない。

一つの大きな俯瞰図を、ほぼ手中にしながら、微に入り細に入る調査研究を重ねてゆく。

望月さんの白髭神社を解く旅は、まだ終わってはいない。

静岡の里山に残る登り窯や、古墳、朝鮮式山城、機織り地名、川除地蔵や水神社、
調査の予定は、ますます裾野が広がっている。

今と昔の結び目を探し、日本と他国の結び目を繋ぎ、人と人とを結びながら、今あるここから世界を結ぶ。

まだまだ分からないことだらけ。

私達の知る歴史は、飛び石のようにしか時の川に置かれていない。





望月茂さんが会長を務める静岡歴史民族研究会は、いつでも会員を募集し、会員以外の参加をも歓迎している。

7月の定例会では、郷土玩具、水神、川除け地蔵がテーマになる予定。





◎白髭神社総本社公式サイト
http://www.biwa.ne.jp/~h-ume/

◎琵琶湖側から見た写真
http://www.biwa.ne.jp/~uminoko/biwako/sirahige.html

◎白髭神社・白髭大明神 総本社の写真も
http://www.kadode.com/sirahigejinjya.htm

◎白髭神社 総本山の岩戸の写真あり
http://www60.tok2.com/home/nowaki/shrine/sirahige_013/sirahige01.html

◎安部川流域、有東木の盆踊りの鎮守白髭神社
http://www.bonodori.net/zenkoku/utogi/utogi_rekishi.html




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