野原ではない。
実りの田。
登呂遺跡の田。
登呂遺跡には、古代米である黒米、赤米、紫米を今でも植える田んぼがある。
毎年、市内の小学生たちが田植え体験をする区画も、用意されている。
ザリガニ釣りのメッカなほどに水生生物も豊富で、今の時期、トンボが気持ちよく群れている。
スースーと伸びたススキのようなこの稲は、もち米なんだよ、と散歩の老人が教えてくれる。
並んだ実りを刈り取ってゆく時、いつの季節に増して、汗は快感だろう。
あちこちの田で、一年間の労苦の収穫が行われる。
刈り取っていく中に、いとおしく見つめる目が無ければ、今日の日は無かったのだろう。
日本の田には、たくさんの米の品種の中から消費者の好むコシヒカリが植えられている。
藤枝市の自然農法農家、松下明弘さんの田にも、力の或るコシヒカリが実った。
そのなかに、松下さんは、見つける。
アレ。。。なんだか違う。。。。。
コシヒカリなのに、コシヒカリでないものを見つける。
8年前の秋の日のことだ。
一緒にプロジェクトを組む安東米店の五つ星米マイスター長坂さんが、
稲オタクと尊敬する松下さんの目は、ナニカを見逃さなかった。
並ぶ稲穂の中に、何かを感じる稲を発見する。
ひょっとするとそれは、かぐや姫の竹のように、光り輝いて彼を呼んだのかもしれない。
コシヒカリの突然変異種との出会いだった。
それから研究が始まる。
何年も、データを取り、育成の様子や実り方、品種としての固定、穂のつき方。。。
やるべきことは山積だ。
しかし、米は一年に一回づつの成果しか見られない。
もちろん、相応の収穫量が無ければ農業として扱える品種ではないし、
何より、うまくなければ消費者に受け入れられない。
毎年、毎年、稲の実りと同じ速度で研究が進んだ。
これだけ日本中にあるコシヒカリの中から、自然育成の中で初めて発見された突然変異種。
初めての、新品種の登録。
人為的な開発による新品種はあるものの、
今まで誰も見つけえず、手をつけていなかった、自然交配から生まれた新しい米。
農水省への申請登録が、ついに昨年済んだ。
今秋、巨大胚芽米カミアカリは、いよいよ発売の日を迎えた。
発売のために、松下さんが今年の実りを安東米店へ運んでいる時間、
当の店主は、私と共に、ラジオ局のスタジオにいた。
「今頃車の中だと思いますよ。今、聞いてるかなあ。稲オタクなんていって、怒ってるかなあ」
持ち込んでくれた昨年のカミアカリを見る。
米の様子は、小粒。コシヒカリの特徴だ。
ただ、既に発芽米のような大きな胚芽がついている。
巨大胚芽米というだけある。通常の、3.4倍もの胚芽があるのだ。
ということは、栄養も、3.4倍なのか。
「ああ、そうだとおもいますよ。今度、調べてみよう。」
長坂店長は、松下さんを”稲の神に見込まれた男"だといった。
しかし、それは、松下さんが、稲に宿る神に喜びと共に寄り添い、絶えず自身を捧げてきたご利益だ。
実は、長坂店長だって、それは承知の上。
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彼の農に対する考え方は、これまで「アンコメ米作りプロジェクト」でもレポートしてきたとおり、
生命の自立性や多様性を何よりも大切に考えているところにあります。
それは、稲はもちろん、雑草や微生物、昆虫、そして人間・・・
およそ生命と呼ばれる、すべての生き物の発生の背景を考え、その意味を知り、その価値を受け入れる。
たとえそれが一見異物のように見える個体であっても、尊厳を持って受け入れます。
これが彼の生き物と向かい合うスタンスであり哲学でもあるのです。
そんな彼だからこそ、この突然変異の稲を、視界の隅に見つけ出し、
自立した一つの品種に育てあげたに違いありません。
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安東米店ウェブサイト アンコメ通信「カミアカリdream」より
http://www.tokai.or.jp/ankome/
一口大に握られたカミアカリ。
頬張る。
おお。香り立つ。
「フレーバーが強いでしょ?」
ふむ、ふむ。。。甘い。みずみずしい。いや、とにかく、旨い。
それに。。。。
それに、このプチプチくる歯ごたえの楽しさ。
なんとも楽しい旨さ。
「新しい穀物だと思うんですよ。」
そうか。
そう言われると、得心が行く。
今までも玄米がスキで食べてきたが、カミアカリは、存在感が違う。
口の中で、玄米だよ、とは言わない。
カミアカリだよ、と言っている。
長く日本人と共に生きてきた稲が、今またこの地で、新しい命になって誕生した。
今後、カミアカリを育ててみたい農家には、定着する3,4年をかけて付き合っていきたいという。
新品種は、ひとり立ちのできるまで、生みの親と名付け親が面倒を見てゆく。
これがそうだ、というカミアカリの本筋が定着するまで。
話に寄れば、いくつかの品種が生まれても、
育成や販売の手落ちで良くない風評がたち、消えていくものも少ないないらしい。
これだけ楽しく美味しい米を、そんな目にはあわせて欲しくない。消費者としても。
幸いに、カミアカリという名は、字画もいいんだ、と長坂さん笑う。
見てもらったらしい。親心、であろうか。
さあ、この地の力で、日の光浴び、風を受け、雨を浴び、共の生き物と戯れてがっしり育った旨し米、
カミアカリの時代がやってくる。
あとは、上手に美味しく炊いてみよう。
一昨日の記事の如く、2時間は吸水。
この間に、アミラーゼが働いて、米は自分で柔らかく甘くなる準備をする。
そして、水を替えて、その重量は、1対1。
土と日と雨と、米の神に感謝しながら、米の巫者松下さんと神官の長坂さんにも感謝して。
あほな質問をしてしまった。
”玄米が苦手な場合は、精米してもらったら、どんな味になるんですか。”
「コシヒカリになります。」
巨大胚芽米であった。
胚芽を磨いてしまっては、いけないのだった。
写真は、ご明察、、米の花です。登呂遺跡では、種類がいろいろなので、開花や実りの時期も少しずつずれていて、見に行くと面白い。
学区ってことは、富士見小学校??
田植えは、市内の学校の幾つかがやってきていますねえ。
今は、中学も含め、各学校から出揃ったかかしが田んぼの番をしていて楽しいよ。
な、なんとーーーびっくり!
変装してるのか♪
ぷちぷちって惹かれるなぁ~
ちなみに、うちは『ななつぼし』
という北海道米を食べています。
コシヒカリより美味しい気がするの。
すごいぞ、それは。
コシヒカリ系なのかなあ。調べたら、競馬馬まで出てきて、結局わかんなかった
で、カミアカリは、巨大胚芽米なので、コシヒカリからの突然変異種なので、胚芽を磨くとコシヒカリになっちゃうのでした。
沢山出回るようになったら、食べてみてね。
覚えててね。