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遙けくも来つるものかな

2007年12月14日 | ムサシ
「遙けくも来つるものかな」
 いつのまにか還暦を過ぎ,この20日過ぎに満65歳の誕生日を迎えます。比較的若く亡くなった両親の年を既に越えました。充実していたけれども忙しく生きてきたなとつくづく思います。「遙けくも来つるものかな」というのが実感です。健康には注意しているつもりですが,無理もしていますし肥満体なので,いつ何が起きても不思議ではありませんが,「かくしゃく超百歳」を目指すつもりです。
 最近は,これまでの人生でやり残したことは何だろうか,それをやり遂げたいものだとしきりに思うようになりました。やり残したことは多いのですが,そのひとつに,あくせくと生きてきたご褒美に「ゆっくり散歩したい」というのがあります。大好きな夏目漱石の俳句に「生きて仰ぐ 空の高さよ 赤とんぼ」というのがあります。これは胃潰瘍で死の淵から生還した漱石が万感の思いを詠んだとされているようですが,私もブラブラと散歩し,芝生に寝ころんでゆっくりと高い空を眺めたいのです。その空が真っ青であればどんなに素敵でしょう。おそらく色んな思いが溢れるように湧いてくるだろうと思います。妻はそんな散歩につきあってくれるかなー。「君とともに 四十年の 秋を見し」(高浜虚子)なんちゃって。
 そういえば,やはり大好きな小椋佳の「デビュー」という歌に,「そんな星空を見過ごしてきたんだ これまで」という歌詞があります。これまでの人生で,私は思う存分に空を眺めることを忘れて過ごしてきたように思います。小学生のころ,岡山市の近郊の片田舎で毎夜見事な天の川を眺めて暮らし,将来の志望として「天文学者」と書いた,あの頃のことを懐かしく思い出しているせいなのかも知れません。
 私の家から500メートルの所に岡山後楽園があり,嬉しいことに満65歳になると入場無料となるそうで,無料パスポートが送られてきています。そうだ,これからは月1回岡山後楽園を思う存分散歩することにしよう。できれば妻と一緒に。時には芝生に寝ころんで空を眺めたり,ゆっくり読書しようと考えると胸が弾みます。早く誕生日が来ないかなと今から待ちかねる思いです。考えてみると入場無料ということは,私の気持ちの中で岡山後楽園がわが家の庭に早変わりすることを意味します。私にとっては,突如としてわが家が少なくも1億円くらい主観的に価値を高めることになります。これは愉快だ!
 人は甚だ勝手なもので,私はこう考えてひとりで喜んでいるのです。これからも忙しく過ごしてゆくに違いありませんが,人生は考え方ひとつで随分違ってくるように思います。もっと心豊かに散歩したり,空を眺めたり,妻と来し方を語ったり,しかしよい仕事も頑張りながら,「かくしゃく超百歳」を目指して生きてゆこうと思うのです。(ムサシ)

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