2016年にゴンクール賞を受賞した、モロッコ生まれのフランス人作家レイラ・スリマニの「ヌヌ 完璧なベビーシッター」(松本百合子訳・集英社文庫)。
パリ10区のこじんまりしたアパルトマンに住むマッセ家で、幼い長女とミラと、赤ん坊の長男アダムが、ヌヌ(ベビーシッターのこと)であるルイーズに惨殺された。。
その事件から遡って、マッセ家がヌヌを雇い入れるまでの夫婦の葛藤、ルイーズがこの家のヌヌになるまでとなってからの状況が無駄のない文章で淡々と(調書のように)描かれている。
ルイーズは子守りだけでなく、料理も掃除も手を抜かずにこなし、ワンルームのアパルトマンはブルジョア家庭のように変わった。一方で、気難しく抜け目のないミラの我慢できないワガママや、手のかかる赤ん坊のアダム、口では感謝を言いながらもどこかヌヌに対して壁を作っているマッセ夫妻。。。文章を読みながら、その時その時の情景を想像しながら、この悲劇の伏線が普段の日常に潜んでいることを察していく。
何故ルイーズは子ども達を殺したのか。。。。?
「人は同時に、虐待者にも犠牲者にもなれるという事実を暴き出している」という仏 ロブス誌の書評が帯に紹介されているが、普通に暮らしている日々がこんなにも脆くあやふやなことは、どこの国でもあること。
時にはマッセ家の立場になったり、時にはルイーズの目で感じたり、角度を変えて読むと受け取り方も違う。
最後まで目を離せない物語でありました。