中能登に、たいそう立派な白藤を育てている家があると聞き、
見学させてもらいに行って来た。
その白藤は、高さ2mくらいの藤棚を這い、
広いお庭いっぱい、一糸乱れぬ姿で、咲きそろっていた。
おびただしい数の真っ白な藤の花が、
ぴしっと同じ長さで、等間隔で、
天井から下がっている。
その下を歩く人を遠目で眺めると、
まるで洗車の機械に、人間が入っているような
シュールな光景でもあった。
こんな形で咲かせたい、という
人間の支配欲に応えて、立派に花を咲かせる強さ。
植物の しなやかな生には、こうして時々驚かされる。
なぜかお庭の藤の写真は、すべて消えてしまっていた。
上の写真は、野性の白藤。
すぐ近くの、空き家の庭に咲いていた。
ツル性の藤は、しがみつけるものにしがみつき、
天をめざして伸びていく。
そして上から滝のように、花を咲かせる。
能登は今、藤の花の甘い香りで満ちている。
家々の裏手の森や山に
からまるように、かぶさるように、藤の花。
しがみつく木の形に合わせて、
縦横無尽に繁っていく。
野性の迫力に圧倒され、言葉を失ってしまう。
からまれる植物にとっては、
ちょっと恐い存在でもあるのだろう。
その魅惑的な甘い香りの奥に 、
したたかな野望が見え隠れする。