語りかける花たち

角島 泉(かどしまいずみ) 花日記
 ~石川の四季、花の旅、花のアトリエ こすもす日々のこと


野性の藤

2011年05月20日 | 能登の花
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中能登に、たいそう立派な白藤を育てている家があると聞き、

見学させてもらいに行って来た。

その白藤は、高さ2mくらいの藤棚を這い、

広いお庭いっぱい、一糸乱れぬ姿で、咲きそろっていた。

おびただしい数の真っ白な藤の花が、

ぴしっと同じ長さで、等間隔で、

天井から下がっている。


その下を歩く人を遠目で眺めると、

まるで洗車の機械に、人間が入っているような

シュールな光景でもあった。

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こんな形で咲かせたい、という

人間の支配欲に応えて、立派に花を咲かせる強さ。

植物の しなやかな生には、こうして時々驚かされる。


なぜかお庭の藤の写真は、すべて消えてしまっていた。

上の写真は、野性の白藤。

すぐ近くの、空き家の庭に咲いていた。

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ツル性の藤は、しがみつけるものにしがみつき、

天をめざして伸びていく。

そして上から滝のように、花を咲かせる。


能登は今、藤の花の甘い香りで満ちている。

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家々の裏手の森や山に

からまるように、かぶさるように、藤の花。

しがみつく木の形に合わせて、

縦横無尽に繁っていく。

野性の迫力に圧倒され、言葉を失ってしまう。

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からまれる植物にとっては、

ちょっと恐い存在でもあるのだろう。


その魅惑的な甘い香りの奥に 、

したたかな野望が見え隠れする。




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チューリップ、壮絶

2011年05月16日 | 庭の花たち
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ただでさえ春が遅れたというのに、

雨が続いた5月の半ば、

いつもの年より悪条件の中で、

一気に花を咲かせたチューリップ。


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その渾身の美しさ。

人間の私がどきっとするくらいだから、

本来の恋のお相手には、

迷わず吸い寄せられるほどの魅力だろう。



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限られた時間で命を燃やし、

壮絶に花びらを落としていく。



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みんなでそろって咲いても、

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やがて ひと花ごとのドラマが始まり、

独りで、大地に消えていく。


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工藤和彦さんの器と山吹

2011年05月07日 | 花の作品
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華やかにひらいた山吹(やまぶき)を

工藤和彦さんの花器に生けた。


北海道で掘り出した 太古の土には、

2億年前の黄砂が混ざっているそうだ。

ほんのり黄味かかった、唯一無二の、黄粉引の陶器。


秋の花もさんざん生けたけど、

この優しい黄色には、春の花もよく似合う。

嬉しそうに、あふれ咲く山吹。

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菜の花いただきます。

2011年05月05日 | 庭の花たち
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家の菜園は、菜の花が真っ盛り。

いろんな葉野菜の花。

白菜の花、

キャベツの花、

ブロッコリーの花、

水菜の花 . . .


茎の先につけた つぼみを摘んで、かごに集める。

摘んでもまた2日もすれば、

新しい芽が出てすぐつぼみをつける。

三月から延々、摘み続けている。


暖かいので、あっという間に花を咲かせるが、

花も一緒に、さっとゴマ油で炒めて、

塩胡椒をふっていただく。


ちなみに上の写真では、

上方の鮮やかな黄色の菜の花が、白菜。

下方の細くて小さい菜の花が、ブロッコリー。



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口に運ぶと、ふわっと甘い花の香り。

種類ごとに、食感も味も違う。

春の楽しみ、最高のごちそう。


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春の能登路~海辺の風景

2011年05月02日 | 能登の花
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能登半島の one day trip は いつも

往きが 内陸の道、

帰りが 海沿いの道。


西側の外海に、夕日が落ちていく光景を

ずっと眺めながら帰路につく。


輪島の海のきわに作られた千枚田は、

田植え直前のこの時期、

水がたっぷり張られて、

鏡のように 空の色を映す。

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空と海の間で、お米を作るのは

どんな気分なのだろう。

小さな悩み事なんか吹き飛んでしまいそうだ。


満開の桜も、その光景を見下ろしていた。











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能登半島一帯に広がるヤブ椿は、

特に海岸線に群生していて、

長い期間咲くが、今が盛りのピークのようだ。

















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常緑の椿は、こんもりと茂り、

群れ咲いて、異界のような風景を作る。

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黄泉の入り口に来たかのようで、背筋が寒くなるのだが、

花に誘われると、取り憑かれたように奥へ向かってしまう。










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能登では、椿の下にお墓があったりするので、

死と再生を、この植物に重ねるのだろうか。












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海の道の、ゆるやかなカーブを曲がるたびに

小さな集落が現れる。

似ているようで、村ごとに個性があり、

自分の村を通る道を、それぞれ大切にしているようだ。














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色とりどりの花を植えたり、

地場のもので、工夫を凝らし、

生活している様子がうかがえる。






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美しい風景は、

一人ひとりの感性とこつこつ努力が積み重ねられ

出来上がっていくのだなぁ。

「街づくり」と銘打って、

短期間できれいに整備された街には、

こんな味わいのある美しい風景は消えてしまうだろう。





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うつろう色も、流れる風の音も、

何度訪れても、同じものには出会えない。


きっと明日には散っている花たちとの

一瞬の出会いも、眼に焼き付けておこう。














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コメント (2)
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