能登半島の one day trip は いつも
往きが 内陸の道、
帰りが 海沿いの道。
西側の外海に、夕日が落ちていく光景を
ずっと眺めながら帰路につく。
輪島の海のきわに作られた千枚田は、
田植え直前のこの時期、
水がたっぷり張られて、
鏡のように 空の色を映す。
空と海の間で、お米を作るのは
どんな気分なのだろう。
小さな悩み事なんか吹き飛んでしまいそうだ。
満開の桜も、その光景を見下ろしていた。
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能登半島一帯に広がるヤブ椿は、
特に海岸線に群生していて、
長い期間咲くが、今が盛りのピークのようだ。
常緑の椿は、こんもりと茂り、
群れ咲いて、異界のような風景を作る。
黄泉の入り口に来たかのようで、背筋が寒くなるのだが、
花に誘われると、取り憑かれたように奥へ向かってしまう。
能登では、椿の下にお墓があったりするので、
死と再生を、この植物に重ねるのだろうか。
海の道の、ゆるやかなカーブを曲がるたびに
小さな集落が現れる。
似ているようで、村ごとに個性があり、
自分の村を通る道を、それぞれ大切にしているようだ。
色とりどりの花を植えたり、
地場のもので、工夫を凝らし、
生活している様子がうかがえる。
美しい風景は、
一人ひとりの感性とこつこつ努力が積み重ねられ
出来上がっていくのだなぁ。
「街づくり」と銘打って、
短期間できれいに整備された街には、
こんな味わいのある美しい風景は消えてしまうだろう。
うつろう色も、流れる風の音も、
何度訪れても、同じものには出会えない。
きっと明日には散っている花たちとの
一瞬の出会いも、眼に焼き付けておこう。
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