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今の世の中を見てみれば その16

2020年10月16日 | ブログ
技術漏洩の現状

 日経ビジネス2020年10月12日号に「スペシャルリポート」として、急増する産業スパイ事件を取り上げている。2019年に「営業秘密侵害」で容疑者の検挙に至った事件数は21件。これは6年前の4倍の水準という。

 勿論この数字は氷山の一角であり、ほとんどの被害企業は、経営者が株主や取引先から営業機密の管理責任を問われる恐れがあること、訴訟には費用や時間が掛りすぎることなどから告発をしないケースがほとんどであるという。漏洩を経験した企業が告訴に踏み切った割合は、民事で2.9%、刑事ではわずか1.9%にとどまるという。

 そのことは、技術流出の実態が明らかにならず、各企業に情報漏洩対策を手薄なまま放置させ、流出させる犯罪者にも情報を盗み取る企業にも見透かされ、技術窃取犯罪は増え続ける一因ともなっているようだ。

 日経ビジネスの当該記事では、京都の電子部品メーカーNISSHA(ニッシャ)の漏洩事例を取り上げ注意喚起している。「開発陣の血と涙の結晶が一瞬にして奪われた」事例である。40代の社員がNISSHAを退社後、中国企業で働いており、技術情報をコピーして持ち出し、それを手土産に中国企業に転職したと疑われた。元社員は昨年6月帰国中に「不正競争防止法違反」容疑で逮捕された。

 日本企業から漏洩した営業秘密は通常、国内に留まることがほとんどであった。社員が独立して事業を立ち上げるのに活用したり、転職先の国内企業の業務に役立てるケースなどである。ところが近年、中国への持ち出し懸念が急速に広がっている。中国政府(中共)のハイテク産業振興策「中国製造2025」推進のため、官民挙げて日米欧などの外国企業から技術を貪欲に吸収しているが、それは企業買収や技術提携といった正当な手段に限らない。外国から盗み出された技術情報を基に発展を遂げる企業もある。

 日本には100万人の中国人が暮らし、日本企業で働く中国人は42万人いるという。日本人でありながら自身の勤めた企業の技術情報を中国企業に提供する輩がいる。中国人を採用するなどは論外と思うけれど、このような雑誌のこのような記事には必ずと言ってよいほど、「日本企業で働く中国籍の従業員を、色眼鏡をかけて見るのは良くない(危険である)。産業スパイ行為を働くのは、ほんの一握りであるということを忘れてはならない」という注意書きが見られる。

 中共や中国人からみれば、何というお人好し国家かと思うに過ぎない。「日本昔話」(善行は幸いをもたらし、悪行は必ず成敗される)は、古来この列島に暮らす島民の間にさえ通用しなくなって」いる。

 情報の流出を放置すれば日本の競争力が低下すると、記事は警告するが、すでに手遅れ感が拭えない。例えば2005年から2018年の名目GDPの推移をみると、その間中国は2兆2,860億ドルから2010年に日本を抜き去り、13兆8,949億ドルと6倍となっているのに対して、日本は4兆7,581億ドルからアベノミクス開始年(2012年)の6兆2,018億ドル(民主党政権時は超円高で名目数値が高く出ている)をピークに、2018年では4兆9,564億ドルに留まっている。政権と経済界の目先の損得勘定だけの無為無策が、中国に貢いだだけの結果というのがよくわかるではないか。

本稿は「日経ビジネス2020.10.12号」を参考に構成しています


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