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5Sと見える化 第2回

2016年11月04日 | ブログ
躾(しつけ)

 5Sでは最後にくるこの躾(しつけ)は、実は5Sの基盤である。躾というと最近はペットの犬や猫の躾を考える方も多かろうが、実はこの人間社会の家庭というものにあって、わが子の躾ほど重要な役割はない。

 世の中の科学技術が進み、複雑化した社会では、本能でカバーできる範囲は限定的である。まず、身の回りの安全。熱いもの、口に入れてはいけない物、そして幼稚園に行くようになると、「横断歩道を手上げて渡りましょう」となるごとくである。

 次に衛生。朝起きれば顔を洗い、歯を磨き、トイレに行った後や外出先から帰れば必ず手を洗う。床や地面に落ちた食べ物は廃棄することを原則とする。下着は毎日取り換え、風呂には肩まで浸かりましょう、などなどである。

 このような基本的な習慣が身についている人々が働く職場においては、品質管理の基本的な教育の一部は履修済といえる。しかし、開発途上国にアウトソーシングした場合に国内同様の気分で管理を手抜くと大変なことになる。マクドナルド*1)の委託先工場で起こった事例は、恐らく氷山の一角ではないか。顧客はマクドナルドに限らないけれど、食品加工を海外工場に依存していれば、そのブランドを信じて能天気に不潔な食品を口に入れ続けているかも知れないと思ってしまう。

 5Sにおける躾は、「ルールを守る」ということだが、そのルールも当たり前と思われることは条文化しない恐れがあって、「ルールを守っています」だけでは不足なことがあるのだ。本来海外工場へのアウトソーシングは相当慎重に行わねばならないが、円高とか、国内のコスト高を指摘されて、誰もが海外へ走った。海外進出は経営トップの判断があったと思うが、その後のフォローはどのような視点で行って来たかが問われる。

 1流メーカーの電機製品を購入したが、メイドインチャイナとかマレーシアであったため、過去のメイドインジャパンでは起こりえないような不良品に遭遇した経験があるし、企業勤務時代には、電機製品ではないが、取引先メーカーの海外生産品でも思わぬ不具合で要らぬ手間を取らされた。勿論其処らあたりの管理は、経営トップの仕事ではないが、電機メーカーはその後、海外企業に身売りするような羽目となり、また経営陣が絡む不正会計が大問題となったりした。現場の仕事とトップの仕事は離れているようで繋がっているのだ。

 人体の毛細血管が脆くなるのは、その人の生活習慣や食生活に問題がある。現場に問題を生じるのは、経営トップの傲慢や経営に対する基本的な考え方への軽視に起因することが多いように思う。

 5Sと言えば、「なんだ5Sか」、「そんなこと分かっているよ」で終わっていないか。当たり前のことが出来なくて、海外展開もM&Aも上手くゆく筈はない。経営者こそが率先して5Sを大切に考える必要があるのだ。



*1)素手で鶏肉を扱ったり、床に落ちた鶏肉をそのまま使用したり、さらには、消費期限が切れて、半年から1年以上経過してしまい、気味悪く青く変色した鶏肉まで商品として扱うなど、とんでもない問題を起こしていた事実が、2014年7月に発覚した。
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