中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

経営のこと、政治のこと、社会のこと、趣味のこと、人生のこと

品質管理ノート 第7回

2018年11月19日 | ブログ
人質管理

 1960年代頃の話ではないかと思うのだけれど、松下電器(現、パナソニック)の創業者松下幸之助氏が部下に語りかけたと言う「君な、品質管理は大事やけど、人質管理はもっと大事やで」という言葉は有名である。さらに幸之助氏は、「松下電器は人をつくっています。電気製品もつくっていますが、その前にまず人をつくっているのです」と言っていたと語り継がれている。

 先日、パナソニックのご出身で、在籍当時から松下イズムの伝道師の資格を得ていた中小企業診断士の方のセミナーを聴いたが、その中にもこの話は出てきた。

 ただ、幸之助氏の時代は「品質管理」は所謂狭義の範疇で捉えられており、モノづくりにおける品質をより良く維持するための活動で、顧客のためには何より大切である認識に変わりはないが、そのための人材育成は別のジャンルの課題であったであろう。

 現在のTQMでは、TQCの時代から、実は人材育成は品質管理に必須のものとして捉えられるようになっていた。TQCは「教育に始まり教育に終わる」などという言葉も生まれた。

 ただ、TQMにおける人づくり教育は、あくまで品質を管理するという視点を軸にするが、幸之助氏の「人質」には人間としての真っ当な生き方までも追及した「人質」であるように思える。後に幸之助氏は松下政経塾を創設して、政治家を育てる活動にも精力を傾けられたが、まさに政治の世界にも人質管理を実践したいと考えられたのであろう。残念なことにその部分に於いて夢は遠い。

 改善提案や小集団活動(QCサークル活動)の効能として、問題発見能力や解決能力、そして自身の頭で考える習慣。それはすなわち現場力の向上につながってゆくものとして語られる。しかし、自分たちの判断で仕事を進めることはいいことだが、過ぎれば上司を無視して勝手に権限を持って、管理職でもない従業員が超勤管理やグループで業務の割り振りまでを行うようになったりするから注意が必要だ。

 これに、もの言えぬ上司が加われば職場で企業の目的から外れた共同体化が一気に進む。筋の通らぬ職場となる。上司が部下の顔色を覗わねばならないなど、場合によっては必要なこともあろうが、部下は、勤務中は原則上司の管理下になければならない。大企業の中堅管理職だけでなく、幹部社員もやたら現場の社員に気兼ねすることが常態化している様を見てきた。パラハラは論外だが、嫌われたくなく多勢に無勢に恐れを成して、言わねばならないことを職場の長が押しとどめるなどみっともないことだ。

 外交などでも、きちんとものの言える人物が当たらないと、尖閣問題ではないが、敵国に付け込まれてしまう。今はロシアの北方領土と日露平和条約のことで、ロシア側の術中に嵌らないか懸念がある一方、前進であると評価する向きもあるから素人には分かり難い。

 幸之助氏の「人質」とはまさに背筋の伸び、信念のある、曲がったことの大嫌いな人材を指すように思える。このような人材が営む企業に品質問題は無縁であろう。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 品質管理ノート 第6回 | トップ | 品質管理ノート 第8回 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ブログ」カテゴリの最新記事