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品質保証再考第7回

2010年02月19日 | Weblog
TQCの考え方(3)

 TQCの考え方の3番目は、「プロセス重視」である。『「プロセス」とは、仕事を行う方法やしくみであり、良い「プロセス」が確立されていないと、良い結果を継続的に得るのはむつかしい。「プロセス重視」とは、結果のみを追うのではなく、結果を生み出すプロセスに着目し、これを管理し、向上させることで望ましい結果を得るという行動原則である』。すなわち、製品を検査によって篩分ける前に、しかりとした工程管理によって、元々不具合品が生まれにくい仕組みを作るということである。

 プロ野球の野村監督語録に「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議の負けなし」*3)という名言があった。勝負事は相手がころんで勝つこともあるが、負けるということは必ず自分に弱みがあってのことだ。勝負事は勝っても負けてもその経緯(プロセス)を検証し、次につなげなくてはならないという戒めの言葉と思えるが、分野は異なっても基本となる考え方は共通するものだ。

 4番目は「標準化」である。『「標準」とは、プロセスに関する物体・性能・能力・配置・状態・動作・手順・方法・手続き・責任・義務・権限・考え方・概念などが、時間とともに変わらないように定めた取り決めである。多人数で構成される集団で仕事をする場合、各人が勝手に行動すると結果のばらつきが大きくなり、効率も良くない。「標準化」とは、その時点で最も優れた方法を標準として定め、「標準書」として文書化し、これに則って行動するという行動原則である』。とガイドブックにあるけれど、ISO9000が導入されるまで、その管理は不十分であった。標準書を作るには作っていたけれど、時間の経過とともに実際のやり方が変わっていたり、管理する標準書の範囲をマスターリストによって管理するというような仕組みもなかった。運用の面で甘さがあったことは否めない。品質システムの構築という面においてISO9000に学ぶところは大きかった。

 5番目は「源流管理」である。後工程でいくら立派な管理を行っても、設計の段階でミスがあったり、原材料に見えない欠陥が潜んでおれば、保証すべき品質を維持することはできない。結果として、後工程で一生懸命不具合品を量産してしまうことにもなり、メーカーの損失は甚大となってしまう。製品設計管理や購入する原材料や部品の管理が重要であるということだ。

 私は従来の日本的品質管理の素晴らしさは、前工程の不具合であっても気づいた従業員が、すぐさま取り上げてフィードバックするシステムが暗黙のうちに醸成されていたことにあると思っている。QC工程図や標準書に、不具合をそれぞれどの工程にフィードバックしなくてはならないか規定していても、それだけでは不十分だ。従業員一人一人が「何かおかしい」と思える高い感性を持ち、自分達の製品をみんなで作り込むのだという、ものづくりに寄せる情熱がなければ成り立たない。全社的品質管理は、どこまでいっても従業員の心から仕事に打ち込む気持ちに依存するものなである。


 *3) 松浦静山(江戸時代中・後期の大名。肥前国平戸藩の第9代藩主。心形刀流剣術の達人)の剣術書『剣談』からの流用。とのことです。
本稿は (社)日本品質管理学会編2009年日科技連刊“新版品質保証ガイドブック”を参考にその一部を引用(『 』内)しています。
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