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ものづくりへのオマージュその4

2008年07月11日 | Weblog
危惧

 唐津氏も橋本氏も日本人のものづくり労働者の質の高さを認め、誇りにさえ感じておられる。だからこそ、今後も日本はものづくりの伝統を大切にしなくてはならないと訴えておられる。世界の中で日本が勝負できるのは、日本人の資質からも、その最大の強みである「ものづくり」をおいてないと述べている。

 しかし、最近の日本企業の経営のあり方には、そのものづくりに黄信号を灯すような明らかな変調が見られる。一つは、QC活動における時間外手当の支給、不支給の問題が出てきたこと。二つ目は、名目だけの管理職問題。三つ目は派遣社員の問題。四つ目は年功査定を縮小した成果主義、能力主義的給与体系の問題。他、株主優先の考え方等々である。

 これらはすべて経営者が、アメリカ的経営手法である短期的な業績評価を重視した考えにより生じた結果である。確かに日本人は欧米人や中国の方々よりも、良い製品を作る努力を、その報酬如何によらず当たり前のようにやって来た。しかし、このところの企業経営のあり方を見た場合、そのような労働者の気質を利用するだけで、見返りを可能な限り節約しているように感じる。成果主義や能力主義への偏重は一部のエリート社員には手厚いが、その他大勢は置いていかれる。そうすることが、合理的な企業経営であると信じているようだ。しかしそうなれば、労働者が従来どおりの仕事のやり方を続けるであろうか。

QC活動は仮に時間外手当はなくとも、年功賃金で先の生活が保証される前提があり、頑張って昇給・昇格に結びつくなら成立する。管理職に抜擢してくれた。時間外手当がない分手取りは減るけれど、やりがいは増すし、次の昇格・昇給に結びつくのではないか。下心といえば悪く聞こえるけれど、働く者の側にも長期的な当然の期待感があって不思議ではない。

しかし、そのような期待を経営者側は無視する制度に切り替えていった。だから一部で法廷闘争にまで発展する。法廷闘争事例は氷山の一角である。人件費の変動費化は、財務的にはいいかも知れないが、長期的な人材育成に結びつかない。こんなことをしていては、日本のものづくりはある日突然瓦解しないか。そんな危惧を持ってしまう。

 なぜなら年金問題。社会保険庁の杜撰な仕事が問題になっているけれど、ものづくりではないにしても、社会保険庁の職員も同じ日本人であった。いかに日本人でもマネージメントが悪いと業務の品質が悪くなることを、それは証明しているのではないか。
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