「田母神さんの本」

2008年12月09日 | いつきの思い
上京し、会館に入るまでに時間があったので本屋に立ち寄った。

目的は「オバマ演説集」を購入するためだったのだが、本屋に入って最初に目に入り、手に取った本は、前航空幕僚長・田母神俊雄氏の「自らの身は顧みず」(WAC:定価1400円)だった。宿舎に戻ったら、ゆっくり読もうと思います。

田母神氏はアパグループの懸賞論文に応募し、最優秀賞を受賞した事がきっかけで、航空幕僚長を解任され、政府が問題がこれ以上大きくなるのを嫌ってか、定年退職させられた。

その際に、俗にいう「田母神論文」を読ませてもらったが、論文の内容自体は目新しい物もないが、国家観・歴史観を十分に持った普通の論文だと思う。田母神氏が言いたい事というのは、私も理解できます。

ただ、問題なのは、これを書いたのが現役の自衛隊トップだったという事だ。

今の自衛隊がいかに防衛上、身動きがとれない組織なのか等の現場の思いがあるは充分に承知してますが、それは文民統制下にある自衛隊組織の幕僚長が言うべき話ではなく、政治が片付けないといけない問題だ。

私は義理の父などが元自衛官で、親族に多く自衛隊関係者を抱えてますので、わりかし自衛隊には理解を示している方だと思います。

しかし、多くの自衛官の方と話してて気になる事がある。
それは、自衛隊関係の会合に呼ばれて、基地司令などの自衛官トップの方が「憲法改正は必要ですよ。」と話かけてくる事だ。防衛に理解を示してくれてるという事で、気を許してるのかもしれないが・・・。

これが、OBなどの関係者が言うのなら問題はないのだろうが、現役自衛官の方が口にすべき案件ではないと思う。彼らの気持は分かりますが、自衛隊は文民統制下にある組織なので、その組織がある種の意思を持つのは如何なものだろうか。

それらも、全て政治が解決しないといけない問題なのだ。軍隊というものは、他国でも国から与えられた使命を、与えられた条件で、着実に実行する事だけが求められるのではないだろうか。そこに彼らの組織的な意思というものは必要ない。


田母神論文は、自衛隊の話だけではなく、過去の歴史の話でも、自衛隊トップが発表する見解としては問題があるのではないか。

「アジアの解放は、日本の力だ。」といったような事も書かれていた。理解できる面はある。しかし、現実の問題としてどのアジアの国も「日本のおかげで、解放されました。」という公式見解ではないはず。(マハティール元首相の発言は、国の公式見解ではなかったはず・・)

他国からみたら自衛隊のトップは、軍隊のトップなわけだから、いかなる形で発表したとしても、国と軍隊の意見が割れるのは問題があるといっても仕方がない。

各個人個人が、それなりの国家観や歴史観を持つのは仕方がない事だし、許されるべきことだ。
しかし、組織のトップの発言や考えというのは重い。個人的な見解といった尺度で許されるものではない。

私自身、「村山談話」や「河野談話」には違和感があるし、いつかはその縛りから我が国を解放しないといけないと思う。

しかし、今の政府見解は、それらを踏襲するものである。それらを踏襲する国のトップと、その国の統制下の自衛隊トップの公式見解が違うわけだから、処分は免れるはずがない。

私は田母神論文の中身を批判してるのではなく、組織論上、文民統制上、田母神氏の論文は処分を受けてもしかたがなかったのではないかと思う。

そういう意味では、処分には不満があるかもしれないが、処分を受けて一民間人になった事で、田母神氏の経験から学んだ、自衛隊の問題点などの改善を提言していけるのではないだろうか。それが、我が国の安全保障を考える上で、良い提言になるのかもしれない。