和菓子のアン
坂木 司 著 光文社文庫 / 2012.10
デパ地下の和菓子店「みつ屋」で働き始めた梅本杏子(通称アンちゃん)は、ちょっぴり(?)太めの十八歳。
プロフェッショナルだけど個性的すぎる店長や同僚に囲まれる日々の中、
歴史と遊び心に満ちた和菓子の奥深い魅力に目覚めていく。
謎めいたお客さんたちの言動に秘められた意外な真相とは?
読めば思わず和菓子屋さんに走りたくなる、美味しいお仕事ミステリー!
もちろん、タイトルに興味を持って読むことに決めたクチです(笑)。
でもって、初めて読む作家さんだし、先入観を持たれたくないから名前以外公表せず…ときてるし、たぶん、お若い方だろうし、言葉使いも稚拙だろうし、対象年齢が低そうだな…という勝手なイメージを持っていたことを白状しちゃいます(大変、失礼しました)。
小さい頃から、練り切りと美味しいお煎茶で育った和菓子大好きな私としては、和菓子の知識を得られたこともあり、主人公のアンちゃんの性格も可愛いし、他の登場人物も個性的で楽しい存在だったし…、若干、どこがミステリー?と思う気持ちもありますが、予想よりかなり面白く楽しんで読むことができました。
最終話では、椿店長の悲しく切ない過去が描かれていて、しかも、それを本人の口から語らせない…という心憎い設定にホロリとしました。
こういうところは和菓子同様、繊細さを感じました。
主人公のアンちゃんはとてもきちんと育てられていて、大人をバカにすることなくひねくれてもいないし、今時…とはかけ離れた(心の声は今時かな?)、私のような年配受けするとても可愛い娘さんで、特に感心したのが、家でお茶を入れる時、きちんと湯冷ましをするところに、お母さんの躾なのか、言われずともお母さんのすることをきちんと見て自然と身に付いたのか、そういう細かい描写に感心しました。
他にも、椿店長のどこまでも完璧な女性でありつつ私服のセンスがどん引き…だったり、身長が高くてイケメンで取っ付きにくいのに性格は乙女…という立花くんも愛されるキャラクターだと思います。
登場人物それぞれがリアルで、実際にモデルがいたんだろうな…と思わせるくらい出来上がっているキャラクターたちにも感心しました。
取り敢えず、今回は私の大好きな和菓子がテーマだったこともあって楽しめた部分があると思いますが、他の作品も読んでみたいな~と思います。
それと、このアンちゃんのお話には続きがあるそうなので、そちらもとても楽しみです。
そしてそして、当ブログのカテゴリーを女性作家にしたことについてですが、読む前から女性だろうと思い込み、読んだ後にもやっぱり女性だろうと思い込み、そして、あとがきにあった水出し紅茶で女性作家と確信しました。
先入観があろうがなかろうがほとんど影響のない作風だと思いますが…、まぁ、どっちでもいいんですけどね(笑)。
あっ、ご多分に漏れず、和菓子を買ってきました。
やっぱり美味しい~。