作家の海老原は、政財界の大物・近藤の妾である小萩と恋愛関係になるが、背後にいる近藤の存在をいつも気にしている。そんな折、海老原の恩師が亡くなり、その娘・柏木照子が海老原を頼って来る。照子という清楚な女性に海老原は惹かれるが…。
七色の光 1950年/日本/春原政久
『原節子のすべて』の付録である、東京国立近代美術館フィルムセンターにも映画会社にもなかった幻のフィルムのDVDです。
昭和25年度芸術祭参加作品であり、昭和25年度キネマ旬報ベストテン第10位の作品だそうです。
原節子さんは主演ではありませんし、自殺未遂をしてしまうというちょっと引いてしまう役柄でした。
101分もあるワリにお話に深さが感じられないな~と思っていたところ、ラストはグググッと感じられるものがありました。
というのも、やはり、役柄はお妾さんではありますが、生き生きとサバサバとした杉村春子さんに惹き込まれる部分が多く、原さんの役とは違い強い女性を杉村さんそのものに重ねられたからかなと思います。
海老原先生がどっちつかずなのか、単純に優しいだけなのか、私の性格上、「ハッキリしなさいよっ!」と思わされる男性で、そうかといって、他の女性と親しげにしている海老原を見かけたからといって自殺未遂…というのも信じられないですし、ラストも、小萩の舞台の途中で席を立ってしまうようではダメでしょう。
やはり、強く生きたいですね。
この映画の原節子さんは、やはり、小津作品で見る原さんとは違いました。
原さんは常々、ダイコンと言われていたそうですが、そんなことはないと思いました。
私は小津作品でしか拝見したことがなく、「あ~、これが原節子なんだな~」というぼんやりとした印象しかありませんでしたが、こうして、他の監督の作品を拝見すると、原節子の風貌そのままで(当然ですが)、役である照子という弱い女性を難なく演じていて、表情も素晴らしいなと感じました。
今はあまり監督のカラーに染まる俳優さんはいらっしゃらないように思いますが(独自の解釈が強いと言いますか…)、原さんというのは、その点がお見事なのか、監督次第でどうとでもなるという頭の良さと柔軟性が感じられるように思います。
監督の指示通りというのか、監督の求めに応じた演技をというのか、ご自身自ら幅がないと仰るけれど、監督の色への染まり方は他には見られない稀な女優さんのような気がします。
ダイコンと呼ばれたのなら、それは監督の力不足であり、素晴らしいと思わせるのは監督の力であり、その全てをやれるのが原節子なのじゃないだろうかと感じました。