イワシの翻訳LOVE

はしくれトランスレータ「イワシ」が、翻訳への愛をつれづれなるままに記します。

「草食系男子」について珍走系中年が思うこと

2009年04月06日 16時57分35秒 | ちょっとオモロイ
近頃「草食系」という言葉をよく見聞きする。Wikipediaでは以下のように定義されている。

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草食系男子(そうしょくけいだんし)とは、2008年ごろよりメディアで取り上げられるようになった用語。一般的には、「協調性が高く、家庭的で優しいが、恋愛に積極的でないタイプ」の主に20代の若い男性を指す。
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言わんとすることはわかるし、実際そういう男子が増えているのだろうけど、この言葉にはもうひとつ「ひねり」が足りない。「肉食=攻撃的でガツガツしている。草食=気弱で消極的」というのは、いかにもステレオタイプなものの見方ではないだろうか。草食動物はけっして大人しいわけじゃない。ゾウを見よ、ゴリラを見よ、ウマを見よ。バッファローを見よ。みんな、元気がありまって猛々しく、一日中食べっぱなしでガツガツしまくりではないか。ゴリラのような男、ウマのような男は、恋愛に積極的ではないというのか。肉欲に対して淡白だというのか。ライオンなんかのほうが、狩りをしているとき以外は一日中ダラダラしていて、よっぽどやる気がなさそうではないか。

肉食動物のほうが草食動物よりも強くてたくましいというイメージは、自然の摂理の一面を捉えたものにすぎない。肉食動物はたしかに草食動物を捕食して生きているわけだが、それは生態系のバランスを維持するための調整弁のような役割を果たしているとも言える。たとえばライオンが主として狙うのは、子供や老いたもの、怪我をしたものなどだ。つまりミクロな視点で見れば、草食動物は肉食動物に襲われるがままに餌食になっているようにも思えるが、マクロな視点で見れば、それは優秀な遺伝子を残すために肉食動物の力を借りて自らを淘汰し、ふるいにかけていると考えることもできるのだ。そもそも成体になった草食動物は、簡単に肉食動物の餌食になるほど弱くもないし、臆病でもない。一日中、食べ、動き、エネルギッシュに活動して、生態系の中心として大きな活躍をしているのである。日本全国の親御さんは、むしろ「娘のお婿にするならぜひ草食系の男子に」と考えるべきではないかと思うのである。

まあ、僕の動物に対する理解なんて薄っぺらいものだけど、その僕から見ても、この「草食系」という言葉の使われ方には、自然の摂理に対する理解と尊敬を欠いた「草食動物=ネガティブなもの」という安直なレッテル貼りがなされているような気がしてならない。現代人が持ってしまいがちな、時代錯誤な自然観が反映されているのではないだろうか。うがった考えだとは思うけど。

なんだか妙に熱くなってしまったのだけど、もうちょっと人間らしく知恵のある言葉で、いまどきの若い男子を的確に表してほしいものだと思う。たとえば、ちょっと主旨がはずれるけど、暴走族を「珍走団」に呼び変えようというような。参考までに、Wikipediaの「暴走族」のページにある「珍呼運動」の項の定義をあらためて紹介しておこう。

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「暴走族」や「走り屋」という呼称を格好良いと考える人々を揶揄し、迫力のない「珍走団(ちんそうだん)」という呼称に言い換えることによって格好悪いイメージに塗りかえ、参加者や憧れを持つ少年少女らを減らそうという「珍呼運動(ちんこうんどう)」
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運動の名称はともかく、いやしくも何かの現象を新しい言葉で捉えて世の中に流通させようとするのなら、これくらいのインパクトを持った、想いの込められた言葉で勝負してほしいと思うのである。