イワシの翻訳LOVE

はしくれトランスレータ「イワシ」が、翻訳への愛をつれづれなるままに記します。

私は綿毛

2008年05月04日 22時16分54秒 | ちょっとオモロイ
残念ながら、太陽は十分に姿を現してくれていなかった。朝、勇んで天気予報をみると、いつのまにか「曇」のマークが幅を利かせている。ひどい。昨日一日おとなしく家にいてじっと我慢の子をしていたのも、今日から三日間、ピーカンの日々を満喫できると信じていたからなのに。

それにしても、最近、お日様のことばかりが気になる。気にしたって、どうなるわけでもないのに、気になる。おかしい。僕は元々天気なんて気にする人間じゃなかったはずだ。若い頃は、挨拶代わりに天気の話をするようなやつは、うさんくさいと思ってた。そんな心にも無いこと言わずに、もっと本質的なことを正面から語り合おうじゃないか、天気うんぬんでお茶を濁さないでくれ、と反発していた。それが、いつのまにか自分もお天道様のご機嫌ばかりを気にする野郎になってしまった。っていうか、天気の話題って、実は人間存在にとって、結構本質的な話題だったのね、ということがわかってきたような気がする。

ともかく、晴れた曇ったであんまり一喜一憂ばかりしていたら、精神衛生上よくない。そんなことを自分にいいきかせながら、曇の合間から日差しがキラリと見えてきたところを見計らって、走りに出かけた。

多摩湖自伝車道をノロノロと行くと、道の両脇にさまざまな色とりどりの花が咲いていることに気づく。ツツジ、マーガレット、スミレ、パンジー。その他、名前のわからない花々。綺麗だ。一番たくさん目につくのは、タンポポ。まだ黄色い花もほんの少しだけあるにはあるけど、ほとんどはもう、真っ白。すっかり白髪になってしまった頭をてらうこともなく、無防備にニョキリと突き出している。「いや~、ワシももうおじいさんですわ。人間、トシには勝てませんわ」といった諦念とも満足感ともいうタンポポのセリフが聞こえてくるようだ。もう役目は果たした。子育ても終わった。定年まで勤め上げた。年金もちゃんと納めてきた。無事故無違反だった。いろいろあったけど、まあなんとかここまでやってきた。あとは風に吹かれてどこかに飛んでいくだけだ、みたいな心境なのだろう。あるいは、夢に破れ、人生に不満をいだいたまま、老いてしまったタンポポもあるのかもしれない。だが、そんなタンポポのことを、一体誰が責められるというのだろう。

一本の茎をポキリと折って、ふぅ~っと息を吹きかけて、綿毛を飛ばした。それほど遠くに行くわけじゃないけど、こうやって吹いてあげたら、自然の風に任せているよりは、意外な場所に行けるかもしれない。人助けならぬ、花助けになるのだろうか。つまり、タンポポは、人間にそうされることを、望んでいるのだろうか。それにしても、タンポポって上手くできている。年取ったら真っ白になって、自分の分身を風に乗せて遠くに飛ばして、そして終わりなんだから。人間もタンポポと同じような方法で種の保存を行っていたらよいのに、なんてことを思う。

人間の生殖機能もタンポポと同じだったらよかったねララバイ

「タンポポ人間」の世界では、年頃になると、男子の局部の先端に綺麗な黄色い花が咲く。やがて老いを迎える頃、それは真っ白な綿毛に変わる。そして、風が吹くと、その白い綿毛たちは、穏やかな春の空をふわふわと飛んでいく。そして男たちは、風にたゆたう自分たちの分身を眺めながら、みずからの一生に想いを馳せるのである。そこには、なんの葛藤もない。なんの迷いも無い。打算もないし、金や権力や見栄によってゆがめられたものもない。ただ、男たちの生は白い綿毛に生まれ変わって、空を飛んでいく。そして地上に降りた綿毛たちは、やがて芽を出し、地面に根を張り、ゆっくりと成長を始める。自分が生れ落ちた場所で、不満をたれることもなく、オギャーと産声をあげるのだ。そして勝手に育って、勝手に一人前になる。そしていつの日か大人になって、股間に世界に一つだけの花を咲かせるのだ。では、女性たちは何をするのか? 女性たちは、この「タンポポ人間」の世界では、こと生殖ということに関しては、特別な仕事は与えられていない。現実の人間界であまりにも大変な責務を背負っているがために、この新しい世界ではそれらからすっかり解放されることになったのだ。その代わり、男性の下半身が「綿毛化」しているのを見つけたら、それを茎の部分からポキっとへし折って、好きな場所に行って、ふぅ~っと息を吹きかけて、綿毛を飛ばす。それを自由に行ってもよい。その権利を、法律で認められているのだ。逆に、男性が男性のナニに息を吹きかけたり、ポキッと折ったりするときは、それなりの筋を通さなくてはならないのだった。って、ナニを書いてるんでしょうか私は。妄想終わり。

風に乗り私は綿毛タンポポのあなたに吹かれて舞い上がる心

生まれて初めてイカの塩辛なるものを作った。正確には、「作ったつもり」。だって、食べられるものになるかどうか、まだわからないから。ネットでいろいろと作り方を調べて、その通りにやってみた。スルメイカを二杯買ってきて、皮をむいて、足は吸盤を取って、細かく切って、ワタの部分を扱き出したものと混ぜる。そして塩をたっぷりかけて、冷蔵庫で二、三日置いておくのだという。その通りにやってみた。作り方は様々みたいで、それぞれ微妙にレシピが異なっている。大丈夫かな。なんだか不安。皮をむくのが大変で、作り方をあーでもないこーでもないとやっていたら、一時間くらいかかってしまった。刺身にすることは何回かやったことあるけど、塩辛は初めて。二杯のイカ、ロミオとジュリエットは、今、冷蔵庫の中で眠っている。なんとかうまく塩辛になってくれて、ビールのアテとして生まれ変わって欲しい。明日も天気はあんまりよくないらしい。まあいい。こういうときこそ、翻訳に打ち込むチャンスなのだから。

塩漬けのイカのロミオとジュリエット熟して食べたい二人の恋を