イワシの翻訳LOVE

はしくれトランスレータ「イワシ」が、翻訳への愛をつれづれなるままに記します。

腕の立つ翻訳者になるために

2008年02月27日 23時41分55秒 | ちょっとオモロイ
あの人に腕立て伏せ見つけられ

仕事に疲れてくると、一日に二、三回、何気ない顔をして会社の非常階段の踊り場に行き、誰もいないその場所でこっそり腕立て伏せをする。休日は家でやる。ランニングのときも、折り返し地点の公園で、儀式的にプッシュアップする。デスクワークの身には、最高の気分転換だ。ストレッチして、骨ポキポキ鳴らせて、おもむろに腕立てする。腹筋も、背筋も、スクワットも、やるにはやるけどあんまり継続しない。なぜか腕立てが一番自分に合っているのだ。そしたら今日、腕立てをしているところを、気になるあの人に見つかってしまった。

なんていうのはウソだ。でも、腕立てなら誰かに見つかってもまだなんとなく格好がつく。これが腹筋とか背筋だったらなんというかちょっとした息抜きにしてはアスレチック過ぎるし、スクワットだとマッチョ過ぎる。ブリッジをしていたら卑猥過ぎる。とは言え、スクワットをしているところを後ろからあの人にこっそりと見られているというのもそれはそれでそそられるものがある。

あの人にスクワット見つめられ

あるいは、あの人にいつのまにかスクワットの回数を数えられていた、なんてこともあるかもしれない。席に戻ったら、「二百回連続でスクワットやるなんてすごいですね」なんてメッセンジャーが飛んでくるかもしれない。

あの人にスクワット数えられ

ちなみにあの人というのは、なんというか妄想の世界の人だ。現実には、そんなドラマチックなことはない。夏場、踊り場の扉が開いているときに、腕立てしていたら宅急便のおっさんと目が合ったことがあったけど、そんなもんです。なるべく内側からは見えないように、隅っこでやっているので、おっさんには、地面スレスレで上下する僕の顔しか見えなかったはずである。不気味に思われたかもしれない。

宅急便のおっさんに見てみぬフリされ踊り場の腕立て伏せ

腕立て伏せって奥が深い。何回やっても底が見えない。ものすごく単純な動作の中に、全身の筋肉を鍛えるためのすべてのトレーニング要素が備わっている(なんてもっともらしいこと言いつつ、実はそれほど詳しくしらない)。腕相撲とか、槍投げとか、輪投げとか、その動作自体はものすごくシンプルでも、それを極めるのはものすごく大変だと思われる競技があるけど、それと同じものを腕立て伏せに感じる。シンプルなものだからこそ、極めるのは難しいのだ。僕はそれを「腕立て伏せ道」と呼びたい。しかも、いつでもどこでもできて、タダ。これは人生の宝物です。普段はめったにマジマジと見ることのない床や地面に顔面を近づけて、大地を両手で掴んでプッシュアップ。地球を身近に感じることができる。

自分ではなく地球を持ち上げろ

たとえば一日三十回腕立てをするとする。すると、一年で約一万回。けっこうな数になることに驚く。一日十キロ走れば、一年で三千キロ。誰かを十分訪ねていける距離だ。原書を一日三十ページ読めば、一年で一万ページ。これも凄い。ぜひやりたい。なんでもできる。毎日、英単語三十個覚えてもいいし、一冊文庫本買うのでもいいし、やっぱり初心に戻ってスクワット三千回やってもいい(新日本プロレスに入団したら、そのくらいはやらされるのだ)。極めつけは、一日に三千ワード訳して一年で百万ワード翻訳。よ~し、やってやろうじゃないのさ!! ともかく、怠惰な精神と肉体に渇を入れるためにも、腕立て伏せ。頭と体の筋肉を鍛えよう。腕立て伏せをするにつけ、椅子に座ってじっと翻訳してるより、こういう風にせっせと体動かしてる方が性にあってるのかな~、なんてことをちらりと思いつつ。

腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕

『The Informant』Kurt Eichenward
『Striptease』Carl Hiaasen
『昼顔』ケッセル著/堀口大學訳
『ミステリーの書き方』アメリカ探偵作家クラブ著/大出健訳
『わるい愛』(上下)ジョナサン・ケラーマン著/北澤和彦訳
『シャーロック・ホームズ 東洋の冒険』テッド・リカーディ著/日暮雅通訳