イワシの翻訳LOVE

はしくれトランスレータ「イワシ」が、翻訳への愛をつれづれなるままに記します。

「愛」なんて言葉を、たやすく使うんじゃねえ!!

2008年01月07日 22時54分05秒 | ちょっとオモロイ
僕にはとても尊敬している翻訳者の人がいる。その方は僕なんかよりもはるかに翻訳が上手くて、キャリアがあって、人間としても優れていて、とにかく素晴らしくて、僕は彼女のファンなのである。一応は同じ翻訳者なのに、その力量の見事さを目の当たりにしても、嫉妬心など不思議とまったくおこらなくて、いつもほれぼれするような気持ちになってしまう。とにかく、プロ翻訳者として、どこに出しても恥ずかしくない(という形容をぼくがするのはおこがましのだけど)、一流の翻訳者なのであり、ぼくの懐刀というか、切り札というか、彼女に翻訳してもらえばまず大船にのった気持ちになれる、そういうとても大切なひとなのである。で、たまたま今日、話の行きがかり上(ブログの話題になったので)、その方に恥を忍んでこのブログのことを知らせたところ、さっそく貴重な時間をムダにして?読んでいただき、翻訳Loveという言葉について、恐れ多くもお褒めのお言葉をいただいた。

しかし、彼女はやはり上手だった。初めて知ったのだが、彼女のキャッチフレーズは、翻訳Loveの上をいく、「翻訳バカ一代」なのだそうだ。う~ん、まいった。Loveなんて甘ったるい言葉じゃない。バカ一代。マス大山。ゴットハンドなのだ。本当に、翻訳の世界に命をささげている人でなければ吐けないセリフだと思う。一本とられた! という気持ちになった。ひさしぶりに聞いたこのバカ一代という硬派な言葉を前にして、Loveといううたい文句を使っている自分がなんだかものすごく軟派な存在に思えてきた。

ちなみに、この「翻訳Love」っていうのは、実は、元々プロレスラーの武藤敬司が提唱していた「プロレスLove」の影響を色濃く受けて誕生した言葉で(ようは、パクッたのです)あるのだが、このプロレスLoveっていうのは、でも単純にプロレス愛を謳っているだけじゃなくて、何年か前、それまで磐石だと思われていたプロレス界に総合格闘技やらなんやらのいろんな黒船が襲来して、業界に激震が走っていて、地盤がガタガタになりかけていて、誰もがプロレスなんて、という気持ちを持ち始めていたところに、あえて原点回帰という意味をこめて、武藤がプロレスの本当の素晴らしさ、楽しさをアピールするために叫んでいた言葉であり、そんな彼の本当にプロレスを愛する気持ちが込められているという、プロレスファンならば当時を思い出せば目頭がちょっと熱くなるようなメッセージだったのである。なので、あえて言わせてもらえれば、僕は単純に愛なんて口当たりのよい言葉を使っているつもりはなくて、翻訳という茨の道を歩んで血まみれになり、ギザギザに傷ついた魂で、あえて叫んでいる「Love」のつもりなのである。

人はみな、プロレスラーと同様、それぞれキャッチフレーズを持っているというのが僕の仮説だ。翻訳者のみなさん、あるいは業界関係者みなさん、やっぱり自分のキャッチフレーズって、ありますよね?

というわけで、仕事始めというか会社始めというか、そういう日にあって、「バカ一代」を含めやはりガツンといろんな風に吹かれて気合も一段と入った一日だったのである。3時間しか寝ていないから異常にしんどかった。シャバの空気はやっぱり厳しい。

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