原題は直訳では「四百の打撃」です。1950年代後半にフランスに起きたヌーベルバーグ(新しい波)の記念碑的作品です。トリュフォーは、この映画をとったとき、27歳でした。
12歳の少年アントワーヌ・ドワエル(ジャン・ピエール・レオー)は狭いアパートで邪険な母(クレール・モリエ)と継父(アルベール・レミー)との三人暮らし。 幼かった頃、アントワーヌは両親の喧嘩から彼が未婚の母親の子で、母が中絶するかどうかで祖母と口論になり、祖母の口添えで生まれたとの事実を知っていました。生まれてこの祖母のもとに里子にだされた彼は八歳の時に両親のもとに引き取られましたが、親は子育てに関心がなく、つまらないことで始終子どもを叱りました。
アントワーヌの家庭はまずしく、そもそも「家庭」という環境がありません。いきおい、学校もさぼりがち。楽しくありません。
何気ない大人の言動が知らず知らずに子どもの心を傷つけ、寂しさに閉じ込めていくことをこの映画は、訴えています。警察から護送車で少年審判所に送られるとき、アントワーヌは夜の街の様子をじっとながめています。何とも言えない寂しげな顔が印象的です。
また、最後刑務所からの脱走のシーン、夢中で走って逃げて海岸にたどりつきますが、そこでアントワーヌの顔がストップモーションで大写しになります。その眼差しは寂しげで、心の空白を訴えているようであり、何かを求めてすがるようでもあります。
アントワーヌ少年の多感な心情がみずみずしく詩的に引き出され、余韻の残る映画です。
トリュフォー監督自身の少年時代を想起させる内容の映画と言われています。
第12回(1959年)カンヌ映画祭監督賞。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます