シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

ジェームス・アイボリー監督「日の名残り(The Remains of The Day)」(イギリス、1993年)☆☆☆☆★

2019-09-15 23:01:04 | イギリス


原作はノーベル賞作家、カズオ・イシグロの同名の小説です。

3つの見どころがあります。一つ目は、執事スティーヴンスと女中頭ケントンとの実ることがなかった密かな愛。二つ目は執事の折り目正しい仕事の内容が丁寧に描かれていること。三つ目はダーリントン卿の館で要人の間で秘密裏に議論される第一次世界大戦後の国際情勢です。これら三つの要素が見事に調和しています。

舞台は1950年代のイギリス。今はアメリカの大富豪ルイスの執事を勤めるスティーヴンスは、かつてはナチのシンパであった名門貴族ダーリントン卿につかえていました。ナチのシンパだったことから戦後、ダーリントン卿が世間から糾弾され失意のうちに世を去った後、アメリカの大富豪ルイス氏がその邸宅を買い取り、スティーヴンスは執事としての才能をかわれ、邸宅にとどまっていたのです。

新しく女中頭を雇うにあたり、スティーヴンスはかつてその邸宅で女中頭として働いていたケントンに来てもらうべく、一人車に乗ってウェスト・カントリーへ向かいます。道すがら、彼は1930年代のダーリントン卿の邸宅を回想します。

登場するのは執事として働くスティーヴンス(アンソニー・ホプキンス)、女中頭として雇われたケントン(エマ・トンプソン)とスティーヴンスの父。ダーリントンを名づけ親とする彼の親友の子供で新聞記者のカーディナル(ヒュー・グラント)。ドイツ、フランス、アメリカの要人。そして邸宅の大勢の従僕、使用人たちです。

この映画は「女と男の愛情」のひとつの形を示しただけでなく、1930年代後半のヨーロッパの国際情勢を視野に入れ、ダーリントン邸で開催されたドイツに対する外交姿勢をめぐる会合がエピソードとして取り込んでいます。

映画の品位を感じます。
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