シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

豊田四郎監督「夫婦善哉」(東宝、1952年、121分)☆☆☆☆

2020-12-31 13:05:00 | 日本・1950年~


織田作之助による同名小説の映画化です。「夫婦善哉」とは、主人公である蝶子と柳吉が食べに行く法善寺境内の汁粉屋の名物である「ぜんざい」にひっかけています。

売れっ子の芸者・蝶子(淡島千景)は化粧問屋の息子の柳吉(森繁久弥)と駆け落ち同然の生活をしています。柳吉は問屋を継ぐ資格をもっているのですが、店によりつかなくなったため勘当されました。ふたりの生活は苦しくなっていきます。

蝶子は臨時雇いの芸者になって生活費を稼ぎますが、柳吉はそれを遊びに使ってしまいます。

柳吉は妹から無心したお金と蝶子の貯金とで関東煮(おでん)の店を開きます。しかし、柳吉は肝臓結核に。店はすぐに手放さざるをえません。柳吉が全快すると、ふたりは今度、借金をしながらカフェを開きます。

最後の場面、ふたりが法善寺にお参りし、いつものように「夫婦善哉」に入っていくところが情緒きわまるところで、しがないふたりが精いっぱい生きていくようすがにじみ出ます。

森繁久弥の軽妙かつ絶妙の演技、ダメ男なのに、世話を焼きたくなるのはどうしてか? また、可愛いらしい和服が似合い、勝気な役どころの淡島さん。ふたりは大阪の人情、雰囲気をかもしだしていて、いい映画です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

豊田四郎監督「波影(なみかげ)」(東京映画、1965年、102分)☆☆☆☆

2020-12-31 10:44:04 | 日本・1960年~
 
 
水上勉による同名小説の映画化です。

舞台は若狭湾近くの小浜・三番町、そして主人公のふるさとである「泊」。時代は昭和9年ごろから戦争直後までです。

小浜にある柾木家で働く雛千代(若尾文子)は廓(くるわ)という特殊な世界でも、もちまえの明るさを失うことなく、吉太郎(山茶花究)にも、女将の「まさ」(乙羽信子)にも健気につくし、すかれました。

昭和16年、柾木家に世津子の兄忠吉(中村賀津雄)が怪我を理由に除隊され帰って来ます。陰気な性格で人見知りの忠吉に、雛千代は何かと声をか
け、世話をやきます。

戦後、柾木家は転業を迫られます。忠吉は家業を嫌い、母親まきと口論の日々。あげくのはてに「柾木家」に放火しました。警察に逮捕された忠吉に雛千代はよりそい、将来の更生を誓わせます・・・。

一方、京都女専で就学していた世津子(大空真弓)は卒業をひかえ、教員になることを夢見、雛千代は常に彼女を励ましました。しかし、彼女の希望は夢やぶれます(家業を学校側に知られたため)。誰よりも世津子の教員姿を期待していた雛千代は、・・・・。

雛千代を演じたる若尾文子さんは「仏のような善女」を好演しています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする