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小説「霊南坂の星条旗」 その26 by FUNAYAMA 

2007-08-23 10:51:15 | Weblog
晩餐会に出す料理には、それが西洋料理でもよく日本の陶器が使われた。
「船山さん、今夜のスープにはこの九谷焼を、と考えているのですが、どうかしら?」
アリスの優れた美的センスは殆んど貞吉が口をはさむ余地がないほどだった。メイン・ディシュには備前焼の皿を用いるなど、趣向を凝らし、日本情緒の巧みな調和と美的雰囲気を醸しだして、客の目を楽しませていた。
このアメリカ大使館の晩餐会には宮家の方々がしばしば姿をみせていた。アリスは特に秩父宮妃と気が合うように見えた。会食以外にも秩父宮妃はアリスを訪ね、女性ならではの話題に咲かせていた。
妃殿下は欧米のファッションに興味をもたれ、帽子を新調するときは必ずアリスのアドバイスを受け入れ、アリスが持っているファッション雑誌『ヴォーグ』の情報を参考にされるなど微笑ましい交歓が見られた。
この情報は天皇家にも達し、貞明皇太后は秩父宮妃とアメリカ大使夫人アリスの親交ぶりに好感を抱かれていた。
 グルー大使は日本の上流階級に属する、いわゆる穏健派と呼ばれる人々との交流を深めていた。彼らから得る情報は日本分析のデータにもなっていた。
ともあれグルー夫妻の誠実な人柄は、相手にアメリカ人を意識させない心安さを与えるのか、家族ぐるみで交際する日本人も多かった。例えば吉田茂の娘で、牧野伸顕の孫にあたる麻生和子。樺山愛輔の娘、白洲正子。来栖三郎の娘ヤエたちが、エルシィを交えて公邸に華やいだ明るい雰囲気をつくっていた。
夏になると、軽井沢がグルー家の恒例の避暑地になった。憲聖といわれた尾崎顎堂翁の令嬢が大使館に勤務していた関係から、別荘の手配には尾崎家の尽力があった。
アリスは浅間山鬼押し出しで採れる浅間葡萄(ブドウ)をたっぷりと仕入れて、客に出すデザートの欠かせない材料にしていた。東京の公邸でも美しく紫に彩られた浅間葡萄入りのババロアやアイスクリームは、招待客の間で殊のほか評判だった。
貞吉の子供たちにも軽井沢にわざわざ民家を借りいれ、避暑地の夏を楽しませ、また子だくさんの貞吉に洋服や食品をさり気なくプレゼントするのだ。
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