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小説「霊南坂の星条旗」 その23  by FUNAYAMA

2007-08-20 11:12:14 | Weblog
グルー家が着任した当時の東京には、先にも述べたように、不況に苦しむ人々が多くいた。
「どうすれば、あの人達を助けられるでしょうか?」
大使夫人という立場上、表立ったことはできず、自分にはささやかな個人的なことしか出来ないと悩むアリスだった。
「船山さん、ちょっと出かけましょう」と、貞吉を誘い、車で街に出ては、肩を落として力なく歩いている人を見かけると車を止め、不自由な脚をかばいながら降りて近づき、
「どうぞ元気を出して」と、
失礼にならないようにお金をそっと渡して、勇気づけるのだった。
ある冬の日、雨に打たれ、寒さに震えながら霊南坂上をよろめいている哀れな子犬がいた。見兼ねたアリスは子犬をそっと抱き上げ、邸内に連れてきた。アリスの手厚い看護のお陰ですっかり元気を取り戻し、邸内をはしゃぎ回る愛犬に育てられていた。
サーシャと名づけられたこの柴犬は不思議とアリスにしか懐かなかった。ところがこのサーシャもやがて戦争と言う名の巨大な渦に巻き込まれていくのだが::::。
大使夫妻は美術骨董品の蒐集が趣味だった。
前任地のトルコで手に入れたミミズクの絵柄の、アリスが大事にしていた花瓶を、貞吉はうっかりして割ってしまった。高価な花瓶だ。さすがの貞吉も青ざめた。
しかし、アリスはこう言った。
「あれは私の気に入らない花瓶でした。どうやって処分しようかと迷っていたところでした。その役を船山さん、あなたが引き受けてくださったのよ。私のほうこそお礼を言わなければなりません」
その言葉に心打たれた貞吉が忠誠の念を新たにしたのは言うまでもない。
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