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小説「霊南坂の星条旗」 その25 by FUNAYAMA 

2007-08-22 10:42:17 | Weblog
グルー家の食事は質素だった。朝はコーヒー、トースト、スクランブル・エッグとベーコンといったきわめて当たり前なメニュウである。
卵入りのグラタンが大使の好みなので、夕食によく用意された。ときには大使の健康を気づかう夫人の考えで、オックス・テールとオニオンを煮込んだ料理も並ぶこともあった。
食後のデザートには寒天入りのフルーツがよく出されたが、寒天は頭の疲れを癒し、働きをよくするというのが、グルー家の愛用する理由だった。
ゲストを迎えた晩餐会は別として、総じて普段の食事は贅沢から程遠いものだった。
晩餐会を公邸で催すのも、大使夫妻の大きな務めの一つだ。
「誰一人として時間に遅れてくる日本の方々はいらっしゃらないのね」
アリスはそんなとき、いつも日本人の招待客がきちんと約束を守り、外国人と違って時間の正確なことに感嘆していた。
どのようにしてもてなすのか、大使夫人としての任務がそこにあった。
「何気ない言葉遣い、何気ない振る舞いがときとして相手に誤解を与え、時には国交の破綻にもなりかねない事態に発展することさえあるのです」
と、細心の注意を払ってアメリカ外交官の役割を果たそうとするアリスの誠意に満ちた姿勢を、貞吉たちは充分に感じ取っていた。
「大使夫妻のもてなし振りには、外交官の義務を超えた人間味の溢れた暖かいものがある」
一度でも晩餐会に招かれた客は、そう感想をもらした。
食後には、よく音楽や映画の鑑賞会が催されたが、グルーは日本では未公開のフィルムをアメリカから取り寄せて、招待客を楽しませていた。
アリスの発案で、食後のひとときを過ごす招待客にジグゾウ・パズルが薦められ、これが人気を呼んだ。
このように晩餐会はいつも和やかな雰囲気に包まれ、
「この公邸には日米間に横たわる暗雲は見られない」と、招待客たちは話し合ったものだ。
晩餐会は通常八時ごろから始まり、お開きは二時間半後というのがグルー家のルールだった。アリスは必ず開宴三十分前までには身なりを整え、階下の広間に降り、客を出迎えるために待機した。
「こうすれば早めにお見えになるお客様にも礼を逸せずにすむでしょう」と、いうのだ。
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