週刊朝日 2019.2.21 19:07書評#話題の新刊 中村智志
新装合本 牙王物語
田中 豊美,戸川 久美,戸川 幸夫
978-4794811073
1956年から毎日新聞に連載された動物文学が甦った。主な舞台は北海道の大雪山連峰。サーカスから逃げたオオカミを母に、北海道の猟犬を父に持つキバはヤマイヌのリーダーとして君臨する。一方で傷を手当てしてもらった牧場の娘、早苗になつく。その二面性が読者を揺さぶり続ける。
キバの家族や子分。早苗の両親や友人たち。アイヌの猟師の父子。人を襲うヒグマ、片目のゴンなど大雪山の生き物たち。キバに敵意を持つ、あるいはキバで儲けようと企む人間。個性豊かな脇役に揉まれて成長したキバは、1954年秋、洞爺丸台風が北海道を襲った夜に一世一代の勝負をかける。
人間と動物、動物同士の関係は緊張感に満ちている。死は身近で、現代のペットブームとは対極だ。生命の気高さ、自然との向き合い方を教えられる。(中村智志)
※週刊朝日 2019年3月1日号
https://dot.asahi.com/ent/publication/reviews/2019022100090.html?page=1
新装合本 牙王物語
田中 豊美,戸川 久美,戸川 幸夫
978-4794811073
1956年から毎日新聞に連載された動物文学が甦った。主な舞台は北海道の大雪山連峰。サーカスから逃げたオオカミを母に、北海道の猟犬を父に持つキバはヤマイヌのリーダーとして君臨する。一方で傷を手当てしてもらった牧場の娘、早苗になつく。その二面性が読者を揺さぶり続ける。
キバの家族や子分。早苗の両親や友人たち。アイヌの猟師の父子。人を襲うヒグマ、片目のゴンなど大雪山の生き物たち。キバに敵意を持つ、あるいはキバで儲けようと企む人間。個性豊かな脇役に揉まれて成長したキバは、1954年秋、洞爺丸台風が北海道を襲った夜に一世一代の勝負をかける。
人間と動物、動物同士の関係は緊張感に満ちている。死は身近で、現代のペットブームとは対極だ。生命の気高さ、自然との向き合い方を教えられる。(中村智志)
※週刊朝日 2019年3月1日号
https://dot.asahi.com/ent/publication/reviews/2019022100090.html?page=1