くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「映画化決定」友井羊

2018-11-17 09:10:32 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 うーん……。
 正直、冒頭のお墓参りと思わせ振りな伏線を読んで、ハルの死はないだろうと思っていました。「イサクになるかもしれない」とか、わざわざ結末を変えるとか、死をイメージさせる映画部での演出も、これで本当にそういうエンディングだったらどうしようと不安になったくらいです。
 でも、友井さんだし、ラストで違う展開を期待したのですが……。

 「映画化決定」(朝日新聞出版)。
 高校生の「ぼく」(佐藤ナオト)は、教室に置き忘れた自作のまんがを、クラスメイトの木﨑ハルに読まれてしまいます。ハルは映画部の中心メンバーで、自主製作では名を知られた監督。
 「映画化決定ね!」と告げられて驚くナオトでしたが、原作者として手伝うことを条件に了解します。
 そのまんが「春に君を想う」は、ナオトにとって別れた父親との思い出が色濃く出た作品でした。
 撮影が進むうちに、父親のことを知るべきだと感じるようになったナオトは、しばらく会っていなかった祖父母に連絡をとります。ハルも一緒についていき、二人でいろいろなことを話します。
 映画づくりの場面は新鮮ですし、脇役キャラがはっきりしていて読みやすい。特にナオトの幼なじみで、ヒロイン役を演じる杏奈がかわいいです。
 原作と、映画での演出、実際にできることとのせめぎあいが興味深いですね。
 ハルは映画の醍醐味は編集だと語り、ナオトが想像していた以上の作品を作り上げます。そして、上映会当日に姿を消してしまう。

 で、以下ネタバレ含むのですが。
 ハルは、ナオトがこだわるハッピーエンドを敢えて曲げ、ヒロインの死で終わる作品を作りました。タイトルも、「永遠に君を想う」。
 ハルの死を信じきれないナオトですが、彼女の口から出た映画監督の名前を手がかりに探します。一度死んだと思われながら、やがて劇的に復活を果たした人物なのだそうです。
 その印象を強めるために、ハルはわざと死を強調した作品を作ったことに気づくのでした。
 ハルと再会したナオトは、これからずっと一緒にいることを宣言し、二人のこれまでのことをまんがに描いたのでした。(まんがのタイトルはっきり出ていませんが、「映画化決定」だと思います)

 冒頭のお墓参りは、ラストシーンのさらに数年後のエピソードですね。
 再会した時点で単行本出版まては至っていないナオトが何冊か出していますし。
 ハルは、復活することはできずに亡くなったということなのでしょう。

 作中に実在のまんががあれこれ出てくるのが楽しい。わたしが読んだことあるのは「海街diary」ぐらいですけどね。

「麦ばあの島」古林海月

2018-11-13 19:48:17 | コミック
 図書館のまんがコーナーを通ったとき、この本が目にとまりました。
 古林海月「麦ばあの島」(すいれん舎)。ハンセン病をテーマにした作品です。全四巻。
 十九歳の聡子は、望まぬ妊娠をしたと堕胎を決意します。姉のしおりは不妊治療で悩んでおり、自分が育ててもよいと話しますが、聡子は聞き入れません。しかし、帰る途中で具合を悪くし、病院の近くに住む麦さんに助けてもらいます。
 麦さんは大正十二年生まれ。自分の半生を聡子に話してくれました。
 幼いころに家を出た母と同じ病気で入院することになった麦。当時のハンセン病は、周囲から差別の目にさらされ、家族も迫害されました。
 麦と同時期に療養所にきた恵子は、呉服屋のお嬢さんでしたが、病気の発覚で店が立ちいかなくなり両親は自殺。気持ちがすさんでおり、すぐに悪態をつきます。
 また、同じ年頃の千代は何かと面倒をみてくれますが、病気が進行して亡くなります。
 麦は療養所で付き添い役(患者作業)をしている大石と結婚。やがて妊娠に気づいた二人は、島を逃げ出そうとしますが、恵子が担当医師の三井に密告したため、堕胎することに。
 災害によって百人もの犠牲者を出した出来事や、現在でも根強い差別意識、それでも一人の人間として親しんでいく若い女性の姿が胸を打ちます。
 家族との確執も語られます。 
 よその療養所から移ってきて、患者と再婚した母を許すことができない麦。
 窮地を救われて、自分の過ちを悟った恵子。
 病気になっても姉妹の絆を大切にしてくれた姉。麦の病気のせいで居場所を失ったと恨む弟。
 ハンセン病に関わる本は結構読んだと思うのですが、一巻の巻末に記された参考文献に圧倒されます。四ページびっしりですよ! (このうち読んだことがあるのは四冊でした)
 ハンセン病を知らない人も多くなりました。特に若い世代。機会を捉えて伝えていかなければならないと考えています。
 

「いだてん 金栗四三」

2018-11-12 05:41:34 | 芸術・芸能・スポーツ
 大河ドラマの先行出版でしょうか。近藤隆夫「伝説のオリンピックランナー いだてん 金栗四三」(汐文社)。
 わたしは「かなぐりしぞう」だと思っていましたが、ふりがなによれば「かなくりしそう」でした。
 熊本の造り酒屋の四男として生まれます。四三という名前は、父が四十三歳のとき誕生したからだとか。
 学校までの道のりを走って通ったため、次第に足が速くなり、さらには呼吸の仕方を工夫すれば苦しくないことに気づきます。 
 東京師範学校に入学し、校内の長距離走大会で一年生ながら三位。また、東京で行われた大会を目にし、その盛況ぶりに驚きます。
 そこでオリンピック予選に出場したところ、当時の世界記録を破る速さで優勝。(残念ながら公式には認めてもらえなかったようですが)
 出場を校長(嘉納治五郎!)から打診されますが、ストックホルムへの渡航には多額の金がかかるのです。
 なんとか資金を集めますが、代表選手は金栗と短距離の三島弥彦の二人。
 真夏の大会ということもあり、外国との力を実感させられるオリンピックとなりました。
 しかも、金栗は走路途中で倒れ、民家で介抱されたのちに棄権届けもせずに帰国してしまうのです。(後に五十五周年記念イベントでゴールを果たします)
 箱根駅伝を企画し、女子スポーツの興隆にも寄与した人生が、興味深かったです。

 「いだてん 東京オリムピック噺」といえば、来期の大河ドラマですね。脚本宮藤官九郎、主演中村勘九郎。しかも、明治ことば指導は香日ゆらさんです!(「先生と僕」の文庫買いましたー。単行本も持っているのですが……)
 ドラマについて検索してみました。
 金栗の人生と、東京オリンピック誘致、さらに落語界にも及ぶ物語のようですね。
 キャストを見ると、池波志乃さんが実のおばあさんの役をするとあって、現代への繋がりを感じました。
 三島弥彦が結構な名家の息子さんでびっくり。(確かに遠征費捻出できるくらいだから、お坊ちゃんだよねぇ)
 しかも、この方、徳冨蘆花「不如帰」の関係者らしい。
 「不如帰」といえば、結核を患った浪子が婚家から追い出される話ですよね。
 夫の武男のモデルが、弥彦の兄だそうな。(ドラマで演じるのは小澤征悦)
 ちなみに弥彦役は生田斗真です。四三より年上なんですが……。
 でも、これだけ調べても多分ドラマは見ない……。(家では裏番組を見ているので)
 

さわや書店フェザンORIORIに行く

2018-11-11 20:29:43 | 〈企画〉
 盛岡に行ってきました!
 駅ビルのフェザンにあるさわや書店に行ってみたかったのです。本館三階のORIORI店を訪れて、個性的な品揃えに感激!
 さわやさんは、山ほどのポップというイメージがあったのですが、こちらの店舗にはありませんでした。(おでんせ館の店舗には大量にありました。)
 まず、大好きなマスキングテープを発見して七本もつかんでしまうわたし……。「濱紋様」や「BGM」の品物を見るのははじめてです。特に二十四節気テーマが気に入ってしまいました。全部ほしいー! あとどこで売っているのか。
 おもしろいのは、「せっかく書店で本を買うんだもん。ネットじゃできない買い方をしようぜ!」という文庫展示。帯で推理するってことですね。結構冊数があって、何冊かは書名もわかりました。
 わたしが買ったのは、宝島社文庫で、「不思議な世界の終着駅には、やさしい料理が待っている」という帯がついている本。
 確かに自分では選ばないタイプの本でした。(書名は敢えて秘す)
 それから、東直子、佐藤弓生、千葉聡編著「短歌タイムカプセル」(書肆侃々房)、漢和辞典編集の仕事を描くまんが「じしょへん」(KADOKAWA)を買いました。
 お昼はぴょんぴょん舎で焼き肉でしたー。
 盛岡に行っても町歩きをするでもなく、あとはモールで買い物したくらいです。

「西洋骨董洋菓子店」よしながふみ

2018-11-10 19:19:40 | コミック
 よしなが先生の作品は大分読んだと思っていますが、この作品なかなか読む機会がなくて。
 いや、以前一巻は読んだ記憶があります。小野の「魔性」ぶりに引いたのかな。(わたし、BLは範囲じゃないので……)
 でも、今回は途中でやめられないおもしろさ! でした。伏線また伏線! 計算されたストーリーと、個性的な四人のやりとり、そして美味しそうなケーキ!
 翌日また最初から読み直してしまったほどです。

 衝動的に会社を辞めた橘圭一郎は、ケーキ屋を始めることにします。両親が探してくれたパティシエは、高校の同級生だった小野。卒業式の日、彼から告白された橘は、こっぴどい言葉を彼に投げつけたことがありました。
 小野は腕のいいパティシエですが、勤めた店で次々と問題を起こし(男性たちが彼を巡っていざこざを……)、少人数の店ならなんとかなるかも、と「アンティーク」(元は骨董屋だった店舗なので)にやってきたのでした。
 網膜剥離で現役を引退したボクサーのエイジ、橘のお目付け役(?)千影の四人が営む店は、やがて人気の店に。
 
 橘がなぜケーキ屋を始めたのか。
 徐々に明かされていく真実は、思いもよらない展開となります。彼が探していた人物は非常に近くにいながら、すれ違っていく。
 個人的に好きなのは、橘の幼なじみの本間かなー。
 
 ふと、かつて滝沢秀明主演でドラマ化してたよね?
 と思い出して検索してみました。うわー、もう二十年近く前なのね! タッキーはエイジ役だったそうですが……えっ、主役は橘じゃないんだ、と意外でした。
 ちなみに橘役は椎名桔平。千影は阿部寛で、よしながさん自身が彼をモデルに描いたとおっしゃったとか。
 小野役は藤木直人。テレビで「魔性」を放送できるの? と思ったところ、兄夫婦との確執に変更されていたらしい。ふははは。

「グリーングリーン 新米教師二年目の試練」

2018-11-03 19:32:43 | 文芸・エンターテイメント
 農業高校を舞台にした新米教師小説の第二弾。あさのあつこ「グリーングリーン 新米教師二年目の試練」(徳間書店)。
 最近また読むのが遅くなってきたわたしですが、これは結構すぐ読めました。
 舞台は鹿児島なんですね。今回は、鶏の解体を目にした真緑が倒れてしまったところから始まります。
 自己嫌悪する真緑は、大家の藤内さんに誘われて花見に参加しますが、そこで知り合ったイケハタのおばあちゃんはどうやら喜多川農林の教師だったらしいのです。
 語り口が豚の二百一号にそっくりだと感じた真緑。でも、二百一号はどうやら雄らしいと知り、勢いで豚の去勢を見学することになります。
 また気絶するのでは……と恐る恐る出かけたのですが、そこにいたのは、なんと松田くんで……。

 今回は松田くんとの仲が進展しますよー。
 豚との絡みよりも、家畜の命と食、教師の在り方みたいな面が大きかったと思います。
 続編もあるのでしょうか。

 あと、最近読んだのは大山淳子「原之内菊子の憂鬱なインタビュー」。
 その顔を見ると、自分の話をとにかく聞いてもらいたくなる女性、原之内菊子。彼女をインタビュアーとして雇うことにしたのは弱小編集部(所属二名)。
 そこの若手男性が児童文学マニアで、至るところでケストナーとかアンデルセンとかの蘊蓄が出てくるのがおもしろい。
 彼のお母さんは、菊子の顔を見てもぶれずに接してくれ、亡くなった娘の部屋で暮らすように言います。
 彼女を取り巻く人々が、みんな個性的です。

 なんかうまくまとめられないなー。
 調子悪いです。