くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「なないろ金平糖」伽古屋圭市

2015-06-09 05:52:08 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 宝島社文庫の新刊棚で見つけて、おもしろそうだったので買いました。伽古屋圭市「なないろ金平糖 いろりの事件帖」。
 帯から推察するに、サイコメトラーものかな、と。しかも、大正浪漫ミステリーだそうな。
 表紙カバーがすごく可愛くて(イラストは、じみさん)。てっきり女学生だと思っていたけど、いろりは先年実科高女を卒業した十八歳。自宅の金平糖販売を手伝っています。
 ふとしたことから超能力を授かったいろりは、金平糖を食べることで力の制御を解き、残留思念を読んだり過去視をしたりできるようになる。
 また、愛猫のジロと会話することもできるんですよ。このジロが結構頼りになってかっこいいんですよ。
 ある事件で知り合った絹という女の子と親しくなります。彼女はすごく慕ってくれるのですが、秘密を伝えていいのかどうか悩むのです。
 しかし、なんだか物騒な予知夢を見るようになり……。
 有名な超能力者事件(「ゴーストハント」にも取り上げられた話題ですよね)も出てきました。
 「帝都探偵謎解け乙女」も気になっています。
 

「空を飛ばない鳥たち」

2015-06-08 19:03:45 | 自然科学
 飛べないのではなく、「飛ばない」のです。地球に住む鳥類たちの中でも、「飛ばない鳥」にスポットをあてたもの。
 「空を飛ばない鳥たち 泳ぐペンギン、走るダチョウ翼のかわりになにが進化したのか?」(誠文堂新光社)。監修上田恵介。
 飛ばない鳥のタイプは、大きく分けて4つ。「地上を走る鳥 走鳥類」(ダチョウとかヒクイドリとか)「水中を飛ぶ鳥 ペンギン類」「飛ぶことをやめた島で暮らす鳥」(ヤンバルクイナやカグー)。それから、人間が改良した「家禽」(ニワトリとかアヒル)ですね。
 そのほかに、ミフウズラやヘビクイワシなどは、飛べるのに、飛ばない。
 飛ばない鳥は、環境に適応したためにその変化によって絶滅しやすいのだそうです。例えば、生息地の破壊。そして、天敵の侵入。
 ジャイアントモア、モーリシャス・ドードー、スティーブンイワサザイが紹介されています。また、今現在絶滅が心配されているダチョウやフクロウオウム。
 乱獲、森林伐採、環境汚染、外来種の持ち込み。絶滅につながる人間の活動に、歯止めが必要ですよね。

「最果てアーケード」小川洋子

2015-06-07 07:30:02 | 文芸・エンターテイメント
 来年度中学校教科書が改定になります。どの教材が残ってどんな新しい教材が入るのか。気になったので、教科書会社のホームページを検索しました。
 大きく変わるのは説明文で、文学教材にはそれほどの違いはないようですし、定番といわれるものは残ります。
 しかし。
 三年生の文学に、小川洋子「百科事典少女」という作品が入るらしい。
 えー、小川さんのあのシュールな世界観を、教える自信、わたしにはないです!
 「博士の愛した数式」は中学生にも読めるでしょう。でも、「猫を抱いて象と泳ぐ」とかああいう感じは難しい。しかも、なんというか、感覚では捉えられるものでも、それを授業として具体的に教えていかなければならないのです。
 とりあえず、帰りに本屋に寄ってみました。新刊文庫の棚に「最果てアーケード」があって、開いてみたらそこに「百科事典少女」が掲載されていたのですよね。

 でも、わたしは単行本で読みました。講談社刊。まんが原作として小川さんが描いたものだそうです。掲載雑誌立ち読みしていたんだけどなあ!
 で、先に「百科事典少女」を読もうかとも思ったのですが、やっぱり連作は順番通りに読まないと。
そう思って通して読んだのですが。
 ますます心配になりました。
 なんというか、非常に「死」のイメージが濃いのです。遺品のレースを扱う店、百科事典は「し」の項目だけで一巻分だし、両親も亡くなっている。果ては遺髪レースですよ。そして、自分の髪をステンドグラスの模様に編んでもらう。
 ドアノブ屋さんの秘密の部屋にやってくる、この女の子は、もう亡くなっているの?? その割りには配達人を引き受けていたりするし、頭の中は疑問符だらけです。
 まだ一読なので、読み切れていないのでしょうか……。
 「百科事典少女」ひとつ取っても、この父親の悼み方を充分伝えられる自信がありません。
 もともとまんが原作とのことなので、探してみようと思います。

「百物語」杉浦日向子

2015-06-06 04:18:45 | コミック
 ヨークシャーテリアを飼ったので、「コドモのころの二階堂アン」が見たくなり(このフレーズで、わかる人はわかる)、引き出しに入れたまんがを取り出していたら、そこに入っていました。杉浦日向子「百物語」(新潮社)。
 「百日紅」が映像化され、また注目がありそうな杉浦さん。江戸の空気を描いたまんががすごく好きです。
 文庫では一冊にまとまっていますが、単行本は三冊です。愛蔵版は二冊かな。もうこれを一気に、読んでしまわないうちは眠れん! と思いまして。
 大体は一話七ページ(+表紙)の構成ですが、二話がセットになっていたり、短い中に三つのエピソードが入っていたりと、緩急取り合わせたおもしろい構成です。
 「赤い実」とか「人魚譚三話」とか幻想的な作品が昔から好きなのです。細かい点など忘れていることも多くて、読みふけってしまいました。
 何気なく読んでいた「盆の話」が、気になります。
 お盆を迎えて、死んだ母親の霊魂も帰ってくるはずと、姉娘が妹たちに言い聞かせます。盆の間は良い子にしておいで。
 その夜、姉娘はネズミの姿になった母親が、オスネズミと睦まじくする様を見て愕然とし、泣き崩れます。
 翌日、おっかさんの好物だったずんだ餅を供えてほしいと近所の方が来ますが、姉は仏壇にあげようとせず、手づかみで食べ始めるのでした。
 仏罰があたるという妹に、
「罰が当たるのなら、姉ちゃんはきっと猫に生まれ代わるよ」
 という作品なんですが。
 何度か読んでいたのに、気づいていませんでした。ずんだ餅! とすると、この話は仙台藩近郊が舞台なんですね。余りにも身近すぎて意識していなかったんです。
 換骨奪胎をしたり、ちょっとアレンジしたりする話も結構あるんです。とすると、只野真葛あたりが原点? 
 他にも仙台が関わる話があり、そのあたりを探してみたいように思いました。
 

「天皇の料理番」杉森久英

2015-06-02 20:50:28 | 文芸・エンターテイメント
 小学生の頃、わたしが憧れていた女性は檀ふみさんです!
 「連想ゲーム」見てました。それから、「天皇の料理番」が好きだったんです。テーマソングも覚えています。堺正章さんの「帰ってきたよ。五年ぶりさ、この街も」という歌詞。フランス語の歌は何て言ってるのかわかりませんでしたけどね。
 ラストで、出世して世の中の美食も思うままの主人公が、自分の運命を変えたカツレツを食べて、その素朴さなおいしさに涙を流す場面や、天皇陛下の食事の下準備に使った凧糸を取り忘れていたエピソード、覚えています。もう三十年以上経っているのにね。
 だから、この本も何度も読もうとはしました。
 ただ、若い娘時代には読みにくかった。冒頭ぱらぱらめくって、今の自分には無理だなと諦めたものです。
 だって、篤蔵、強情っぱりで。出家すると大騒ぎしたうえ、いよいよ剃髪となったらすごく嫌がるし。
 今回、佐藤健さん主演のドラマ化で随分売れているようですが、読んだ人はこの小説の高浜篤蔵という男とのギャップに嫌にならないの?(わたしはこのドラマ見ていないのでマチャアキとしか比較できないんですが、なんぼなんでも、佐藤健さんをこんなべらんめぇな人格にはしないでしょう。かなりの演出があると考えるのですが)
 集英社文庫上下には、ドラマの写真とこんなコピーがついています。「かつて料理で、国をも動かした男がいた」「愛と夢こそ、全ての原動力だ」。
 ドラマはそういう視点で作られていると見ていいですよね?
 でも、篤蔵はプリンス・オブ・ウェールズや各国来賓の晩餐会に尽力しますけど、別に国を動かしてはいないと思いますよ? どの場面のことなんでしょう。しかも、宮様の成人のお祝いに招かれなかったことを相当悔しがっていますが。
 最初の妻を郷里に残して家出する。華族会館をやめたあと勤めた店の奥さんと深い仲になる。フランスではフランソワーズという女と親しみ、宮内省に入ってからは下宿先の娘さんと恋仲に。あああ、檀ふみの役柄が崩れていく……。
 大体、カツレツ食べたのも軍隊のコックさんの料理で、わけありと思えた彼は戦死してしまうし。わたしの記憶は間違ってる?? と思いつつ、最後のページを見たら亡くなった場面でした。
 あっ、でも、ドラマとは別物と考えればおもしろいと思いますよ。戦時中は宮中でも食糧の確保に苦しんだんだなー、とか。晩餐会のメニューも載っていますし。鵜飼を外国の方々に楽しんでもらおうと企画したけどまだ稚鮎しかいなくて鯉やら鮒やらで代用したり。
 念願の一冊(文庫なので二冊ですが)を読めて、なんだか肩の荷が降りました。