くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「先生のホンネ」岩本茂樹

2010-11-20 22:15:52 | 社会科学・教育
わかる。
こういう生徒指導上の序列とか各人の捉え方とか、身に覚えがあります。かなり類型的にまとめられていますがね。
梓高校という中堅進学校を舞台に、カチューシャの扱いを巡る一学年の教師集団を描く第一部。初担任に気負う角田先生(26歳)、厳しい熱血漢鈴鹿先生、教育困難高すれすれの学校から転勤してきた菅井先生、生徒から慕われている北谷先生、校長の覚えがめでたければ出世の道が開けると考える学年主任の田中先生などそれぞれの考え方から生徒を注意します。
第二部では失恋のショックで部活をやめてしまった少年の進路を巡って、二学年の先生方が話を聞く。第三部では再びカチューシャ問題が語られますが、なんと、今度は男子生徒がカチューシャをしてきたというのでした!
この男子佐々木は、東大進学を狙えると期待される生徒。彼がそんなことをするからには、成績がらみの理由があるのだろう。三学年の先生は、そう考えて佐々木には指導をしません。すると数日後、別の男子がしてくるようになる。厳しい指導をと息巻く一学年との温度差が出てきたり……。
岩本茂樹「先生のホンネ 評価、生活・受験指導」(光文社新書)です。出張でおもしろそうな本を紹介されたので、買いに行ったら同じ棚に並んでいました。
岩本先生は、教師生活三十年。その中で感じたことなどをドラマ仕立てにした本です。「理想の教師とは、一人一人違うものだ」というテーマ。納得です。
例えば先刻名前を列記した先生方。誰しも自分がそれまで体験してきたことを軸に、まじめに生徒と向き合っている。多少の欲や計算もありますが、別にドラマの「悪役」なわけではない。指導をうけた女子生徒にしてみれば、信じていた担任が掌を返したようになり、ショックでしょうけど。
わたしが学校現場にいてよく思うのは、教師という職の「何」をやりたかったのかはそれぞれが違うということです。同じ教科を選んでいても、「教育」や「教科」や「部活」や、その人が教育活動の中心に据えているものは違うのです。
だから、筆者が様々な個性のいろいろな先生がいることに意義があるのだとの考えはよくわかります。
「理想の先生」とは、誰にとっても同じではない。万人が共感する教師像があるわけではありません。そこにあてはまらないイメージを大切にしたい子もいるのです。
ジェンダーや不登校など、様々な問題も取り上げられます。教科の特性にもふれています。太宰についての考えも興味深かったですね。「人間失格」と「津軽」と。岩本先生は同じように二作を読んだのでしょうか。

「命をつなぐ絆の話」鮫島浩二

2010-11-18 19:42:40 | 工業・家庭
先日、母方の祖母が亡くなりました。そんな時期にこの本を読んだので、血縁のようなものを感じます。
「命をつなぐ絆の話」(アスペクト)。「産婦人科医が出会った母と子の奇跡の物語」とあるように、鮫島先生の患者さんの体験談をもとに構成された作品です。
以前、「その子をください 特別養子縁組で絆をつむぐ医師、17年の記録」(アスペクト)を読んでとても印象的だったものですから、こちらも迷わず図書館から借りてきました。
不妊治療を通して、悩み苦しみ、我が子をこの手に抱く喜びまでの日々が描かれます。
例えば、抗リン脂質抗体症候群という病気であることから不育症になった方。流産を繰り返し、治療しながら出産にこぎつけたお母さん。ダウン症の赤ちゃんを育てるお母さん。若くして出産。シングルマザー。長女の子供(つまり孫)と末っ子が同時期に誕生。
かけがえのない子供を抱くその喜びが、至るところから感じられますね。
子供って、望まれて生まれてくるのだなと実感します。思春期の子供たちと毎日付き合っているのですが、彼らのもつパワーの大きいこと。様々な過程を経て大人になって、また新しい命が生まれる。
巻頭の「わたしの特別な人」という詩がとてもいいです。あなたはたったひとりだけ。そんなあなたを大切にしてほしい。だれもかわりにはなれないのだから、というメッセージが含まれていると思います。
それにしても、鮫島先生が書かれているにしてはご自身の病院を讃えるような場所があって不思議に思っていたのですが、ライターの方が関わっているのですね。
命をつなぐ。わたしも子供たちを抱きしめていきたいと思いました。
鮫島先生の詩「わたしがあなたを選びました」も読みました。やがて、子供たちも親になっていく。いのちは、続いていくのですね。

「あっというまに天才だ!」影井秀

2010-11-17 02:24:05 | 哲学・人生相談
テンション高いなあ。でも、わかる気はします。集団意識としても個人内意識としても、高揚感がある方が長続きしますものね。かといって自分がそんなテンションで勉強したかというと、そうではないんですが。(だから大成しないのか?)
あるクラスで作文を書かせているとき、教卓の上にあったのです。影井秀「あっというまに天才だ!」(ディスカバー文庫)。
すみません、途中まで何の本なのかよくわかりませんでした……。詩集か宗教か名言集? という感じ。須永博士とかナカムラミツルとかそんなイメージですかね。著者は「言葉を大事にしてきた」と書いているのでそう感じたのかもしれません。
中盤あたりで、「もしかして、受験について熱く語ってる?」とやっと気づいた次第です。だって「進化しろ」とか一般論としてよくあるし。(すみません、もっといろいろ印象的なフレーズがあったはずなんですが、覚えていません)
ラストの著者紹介でぶっ飛びました。勉強法は一切教えず、スケジュール管理と気持ちの持ちようを伝えて合格を目指す「東大コーチの会」の代表なんだそうです。
でもですね、えーとえーと、コーチングってこんなハイテンションなんでしたっけ? わたしもコーチングの本を二冊持っているんですが……。どちらもさらーっと眺めただけで挫折したのは、やっぱりテンションについていけなかったからなんでしょうか。あー、でも、わたしの持っている「もしもウサギにコーチがいたら」はこんなタイプじゃないですよ。
著者は何度も読み返して自分の好きな言葉を見つけてほしいそうなので、一回で感想を書くのはよろしくないかと思いますが、受験生の皆さんは呼びかけとして「YOU」は許容範囲なのですか。(わたしならごめんです)
添えてある自筆文字が、わざとなんでしょうけど、書きなぐりでちょっと嫌です。「キエライク」って何だろう、と本気で考えました。この「ラ」はもしかして「テ」?
わたしも字は余り上手じゃありません。でも……。相田みつをや榊原莫山は基礎ができているので、多少崩し書きをすることで味が出るのです。
小説も出しているというので、読んでみたい気がします。とりあえず、もう少しボリュームのあるものを読まないと判断しきれないというか……。これまでの著作や講演の内容をチョイスした側面もあるのかもしれません。
とにかく著者のアップショットが多いので、もしかしてファンブック? とも思われます。東大生という側面がなければ、ロック歌手としての道もありそうな感じ。
わたしには合わないけど、悪くはないと思います。思春期の、ましてや受験生なら強く励まされる人の方が多いでしょう。
結構勉強の妨げになるのは自分のやる気が継続しないことのようにも思います。モチベーションを上げることで頑張れるのは、いいことですね。
てことで、がんばれ受験生!

「疑心」今野敏

2010-11-16 04:56:53 | ミステリ・サスペンス・ホラー
今回はなんと、竜崎さんが恋! ですよ。とはいえ、あの竜崎さんが不倫関係に陥ったり、冴子さんが辛い思いをしたりするはずはないので、ご安心ください。
今野敏「疑心」(新潮社)、「隠蔽捜査」の三冊めになります。
アメリカ大統領の警備本部がおかれ、部長になった竜崎につけられた秘書官畠山。女性キャリアである彼女の颯爽とした仕事ぶりから、だんだん気になって仕方なくなるのでした。
そのために夜は眠れず、かといって昼は重大任務。さらに、大統領を狙うテロリストに協力する日本人がいるとの情報が入ってきて……。
相変わらず竜崎さんがぐちぐち悩みながらも、最後は思ったより深刻にならずに落ち着くところに落ち着くのですが。
今回は結構文学的でした(笑)。高校時代に読んだ「こころ」を思い出したり禅に救いを求めたり。
いつもの彼らしくなく、娘の恋愛問題に一喝したり。
あー、でもまだあの彼と付き合っていたんですね。「隠蔽捜査」で、お父さんには都合がいいのかもしれないけどまだまだ結婚する気はない、といっていたので、彼はただのお友達なのかと……。
それにしても、テロリストの名前がある芸人と同じだったので、どうもわたしの頭の中は「そんなの関係ねぇ!」でいっぱいになってしまいました。(犯人当てではないので、ここが分かっても全く問題なしです、念のため)
「疑心」と聞くと、わたしはすぐ「暗鬼」とつなげたくなるのですが、これは竜崎さんにとって自分が信じられなくなるということなんでしょうか。
なんかこの前立ち読みした雑誌に、「隠蔽捜査3・5」が出ていると書いてあったのですが、わたしの行きつけの図書館にはありませんでした……。引き続き「隠蔽捜査4」も連載中とのこと。ああ、今野さんのほかのシリーズに手を出すべきなんでしょうか。

「スージーの贈りもの」中川志郎

2010-11-15 07:41:37 | 自然科学
息子の音読が「ビーバーの大工事」になりました。先日、宮教大の相澤秀夫先生の模擬授業をうけたのですが、小二の説明文として奥が深いですね。読点は読みの句切り符号ではなく感心を表しているとか、比喩もたとえて話すのは感動しているからだというお話、おもしろいです。
でも、「ビーバーの大工事」は中川さんのほかの文章とちょっとタッチが違うように思いました。息子の教科書を見て、小学校低学年の文章教材には作者紹介がないことにも気づき。(しかも名前もひらがな書きです)
久しぶりにモーレツに読みたくなって借りてきました。中川志郎「スージーの贈りもの 共に生きる地球の仲間たち」(海竜社)。
タウン誌「うえの」に連載されたエッセイを単行本にしたものだそうです。長く上野動物園や多摩動物公園で活躍された中川さんですが、ご勇退されてこの時期は茨城県自然博物館の館長さんをされています。今も同職なのでしょうか。行ってみたいような気が……。
スージーとは、上野動物園で人気があったチンパンジー。売店でキャラメルを買うことを覚えた賢い猿です。
そのスージーが、まだ若かった中川さんに自分のキャラメルをくれた。これは信頼と愛情の証。手にしたときの情感が伝わります。
わたしが中川さんの文章に注目するきっかけになったのは、道徳の教科書に載っていた「父の一言」です。上野動物園の採用試験に失敗して、失意のまま帰った中川さんに、お父さんはこう言いました。
「おまえのカワウソが、さみしがっているぞ」
世話をしていたルトラというカワウソのことを思い出し、飛ぶように動物園に戻った中川さんは、夢に再挑戦を誓うのでした。
このルトラのことも紹介されていました。「ガンバとカワウソの冒険」の映画と、絶滅が危惧される事実が。試験に失敗して、ルトラのもとを訪ねると、落ち込む中川さんの様子に戸惑いながらも、しきりにけづくろいをしてみせたそうです。
また、トキをめぐる考えや、長尾鶏やパンダの思い出、全国の動物保護に向けての動きも紹介されています。
なかでも驚いたのは、前沢の「牛の博物館」に中川さんがいらしたということ。わたし、好きなんです。レストランもおいしい料理が食べられますよ。
また、「私の動物園、キボコの国」という文章がとてもよかった。キボコというのは、スワヒリ語でカバのこと。ドイツのホテルでみつけた木彫りのカバをたいそう気にいった中川さんが、このカバを買うことになり、作者の女性に会います。ジンバブエ出身だというその女性は、ドイツで名乗る名前よりもアフリカ名の方が好きだと語ります。「この名で呼ばれるとアフリカが胸の中に甦るのです……」
中川さんの文章は、すうっと胸に入ってくる美しい文体です。この文章に引かれて、貪るように著作を読んだのはもう十年以上前。この本も当時読んでいます。それ以来、新作が出版されないのはさみしいなあ。絶滅危惧種の問題とか動物とのふれあいとか、今でもあせないエピソードが多いと思うのですが。
「上野動物園サル山物語」などの川口さんもちょっと登場していました。実はまだ上野動物園に行ったことがないわたし。次の機会には行ってみたいと思います!

「結婚相手は抽選で」垣谷美雨

2010-11-14 05:28:01 | 文芸・エンターテイメント
嵐望ですよ、ランボー、銀林嵐望。フランス文学者の父、着物スタイリストの母、姉と妹がいて、都心の豪邸に住み、本人は添乗員として世界を飛び回る。芸能人並にハンサムで気さく。でも、実はある秘密を抱えています。(それ、どうして奈々には匂わせなかったんでしょう……)
垣谷美雨「結婚相手は抽選で」(双葉社)。すみません、第一章を読んだあとちょっとほうっていました。(だって「獣王星」とか読んでしまって。でも、②が売ってない……)
そろそろ読まないと、と続きを読みはじめたら、おもしろい! つい、夢中になって読みふけってしまいました。
少子化対策として政府がうち出したのは、「抽選見合い結婚法」。三人断ったらテロ撲滅隊に送られるというものすごい法案。決定とともに駆け込みで結婚する人も多く、好みの相手と巡り逢える可能性を夢見て喜ぶ人もいます。
嵐望は二年付き合った奈々の中身がからっぽであることに気づいて別れを切り出し、お見合いをすることになります。奈々はどうしても好きになれそうにない相手としか出会えず、三人めになんとか断られようと嫌な女を演じます。その三人めが、龍彦。パソコンが好きで内気な男性。お人よしで気弱(同じか?)です。
看護師の好美は、母から依存されている生活から抜け出そうと一人東京へ。二度めのお見合いで出会ったのが、嵐望だったのです。彼女にとっては白馬の王子様。嵐望にとって好美は七福神(笑)。でも、二人は着実に愛を深めていく。
好美も奈々も、母からの依存という点では共通しています。でも、母と娘との繋がりが違う。嵐望は奈々との付き合いでそれがわかったのでしょう。どちらの母親も問題がありますが、娘のスタンスは異なります。さらに、一年後のエピソードを読むと、また考えさせられる面がある。
龍彦のパートも、結構わかる気がします。世の中のダサい男代表ともいえる三人組(龍彦・北風・鯨井)が、一人は学歴とルックスで早々に結婚を決め、一人は断られた女性から大逆転の誘いを受ける。もう一人もヘアスタイルを変えて恰好よくなりますが、喫茶店に居合わせた女の子のグループからは嘲笑されてしまう。
彼は考えます。マスコミは華やかで流行に目の色を変える女性を取り上げますが、そうではない堅実な女性もいる。しかし、そういう人が現れてもときめかないというところから、自分は口先では馬鹿にしていた派手なタイプの女性が好きなのだと気づく。
彼は最後までお相手には恵まれませんが、ちょっと成長している。断られた女性たちの言葉をプラスに受け取り、自分を変えていくのです。
エンディングが結構好きです。餅ピザ食べたい! あ、嵐望が作ってくれるガーリックトーストもおいしそうですね。
読み返すと、この日嵐望は好美をつれて「タイ料理」の店に行くつもりだったのですね。ここで、秘密を打ち明けるつもりだったのかも。

料理まんが四本

2010-11-10 05:35:46 | コミック
酒川郁子「美食の女神」①。「おいしい銀座」のラストがイマイチだったのですが、これはおもしろい。もとオーナーの孫が客室係としてホテルに勤め、お客さんの悩みを解決するドラマです。彼女の武器は絶妙な味を見分ける舌。眼鏡をはずしてお化粧すると、ゴージャスなお嬢さんに変身。今後の展開が楽しみです。シェフの男性とオーナーと、相手役っぽい人が二人出てきますが、どっちが中心なのでしょうね。
よしながふみ「昨日なにたべた?」④ 。ねぎのコンソメ煮を作ってみたいですね。ガッテン風卵焼きは毎朝お弁当に作っています。強火だとすっと作れていいなあ。あとは雑炊や林檎のキャラメルソースもおいしそう。
あるトピックでこの大先生のエピソードが紹介されて、こういう姑が嫌でたまらないというコメントがありましたが、いやー、それぞれの立場があるということだから仕方ないでしょう。お嫁さんを「悪」としているわけでもないし。わたしは、よしながさんってキャラ一人一人よく見つめている(造形している)なと感じました。
あと小林ユミヲ「にがくてあまい」①がおもしろかった。デビューコミックだそうです。アラサー独身OLが知り合った男は男子校の美術講師。料理上手な彼は実はゲイ。主人公がいくら素敵だと思っても振り向くすきはないのでした。でも、紆余曲折のすえ一緒に暮らし始める二人。彼女は彼の料理が、彼は彼女の実家で作る有機野菜が(そして、彼女のお父さんも)気に入ったのでした。
巻末にはレシピもついています。わたしが今まで考えたことのない調理方法もありました。
あ、スズキユカ「おうちでごはん」①②もよかったです。もともと③を持っていたので、発見できてうれしい。背景が気になっていたので。
大学生鴨川くんの作る家庭料理がいいのです。作れそうというか。
妹のスズナやアパートの住人たちと過ごす毎日がとても楽しそう。合宿で腕を振るおうとしたらいつもの鍋でないのであまりうまくできなかったエピソードがほほえましい。
しかし、本当に料理まんが好きですよねわたし……。

「新聞活用術」池上彰

2010-11-09 03:55:15 | 総記・図書館学
これはっ。中学生にもおもしろく読めるメディアリテラシー、新聞編ですね。ぜひ学校図書館に入れたい。池上彰「新聞活用術」(ダイヤモンド社)です。
同じニュースを取り上げていても、記事構成は全く違う。三紙ほどのトップ記事を比較すればいいのですが、具体的に説明してある文章を読むことで、さらに理解を深めることができます。
ここでは北京五輪で金メダルをとった内柴選手を取材しての記事や、オバマ大統領が訪日で行った演説の訳文をどう訳しているかを取り上げ、さらに新年の出版社広告から各紙のターゲットの違いに迫ります。例えば、講談社はA紙に書き下ろし百冊の企画、B紙には少年マガジン、C紙にコミックの広告を載せ、D紙では「クーリエ ジャポン」ほか大人向け雑誌三点というラインナップだったそうです。読者層がこういう部分に表れている。(その出版社が各紙の購読傾向をそのように捉えたということですね)
また、記事におけるデータの扱いや、数字に騙されないためにどう読んでいくかも参考になりました。
写真の果たす役割、コラムの文章、反論記事、事件を新聞はどう報道するのか。なるほどーと膝を打つ項目がたくさんあります。
何かを紹介する文章は、やはりその実物を手にとりたいと思わされるものですが、特に「2007年5月20日朝日新聞社会面」を読んでみたい! 江角マキコさんの手記について、池上さんが効果的にまとめています。紙面配置にも言及。そして、実際のお手紙の写真がついています。この文章を、読者が読み取れるのがいいのです。続きを原文で読みたいわー。
同社から「新聞勉強術」も出ているそうです。興味深い。

「江」下  田渕久美子

2010-11-08 02:41:54 | 時代小説
結構コラージュしている気がします。「おんな太閤記」と同じテーマであるということもありますが、「独眼竜政宗」「天地人」「春日局」「一豊の妻」といった大河が浮かんでくる場面があるのです。わたしもたまにしか見ないので定かではないのですが。
「江 姫たちの戦国」下巻です。スピーディーに読みました。お昼の準備までに十五ページくらい残していたので、魚を焼きながらもどかしくて。
信長、秀吉、家康。この武将たちを近くで見つめた浅井三姉妹。特に末っ子の江姫を中心に描くドラマです。
生涯に三度の結婚をした江。ついに伴侶である秀忠に嫁ぎます。五歳で登場した当初から、この子供と結婚するんだなーと思いながら読んでいたものですから、なんとも言えず……。
江の人生を描きながら、その背後では秀忠の人間的な成長を書いているようにも思います。秀忠は非常に淡々とした、この時代、しかも家康の家督に生まれたとは思えないほど執着心も功名心もない人物です。
家康に言わせれば、「あらゆることから適当な距離を置き、真剣には向き合やない」ふるまいをするそうです。それに対して、江は正反対の女。二人の夫婦としての深まりが、結構な見せ場であると思います。
田渕さんて、少女まんがの影響を色濃く受けているように感じるのは気のせいでしょうか。
「はー……」「きゃあっ」「えーっ」など、の台詞がなんとなくラブコメっぽい。初が京極家に嫁ぐくだりとか、江の記憶に残る手の話なんかも。
江の人生ではありますが、描かれるのが家康逝去までというのが、ちょっと残念。やっぱりこの時代の華はここまでなんでしょうか。下巻表紙カバーは白髪の江ですが、その部分は省略なのですね。
江は子沢でが、いちばん印象に残るのは長女完子(さだこ)でしょうか。二番めの夫秀勝の忘れ形見であり、秀忠に嫁ぐために淀君に預けられた娘です。千姫、家光、国松、和宮、みんな江の子供たちなのですね。(初の養女になった初姫、あと子々姫や勝姫もいます)
それにしても、治長と淀の間にある親密さを、おねは疑いますが、結局この伏線は不発だったなーという感じでした。
ガラシャや利休のエピソードもよく知られているだけにインパクトがあります。ただ、こういうドラマはどうしても主人公礼讚で。天衣無縫の割には誰からも好かれてしまうという江に、何となく納得ができないわたしなのでした。
でも、歴史のうねりと、その中で力強く生きる姿や、「本日只今を生きる」という姿勢は、おもしろく読めました。ドラマになったら、ついつい見てしまうかも。

「江」上 田渕久美子

2010-11-07 08:14:54 | 時代小説
「猿の眼にも涙っ!」
いやはやまったく、破天荒な姫さまです。田渕久美子「江 姫たちの戦国」上巻(NHK出版)を読みました。
「おもしろいよー。来年の大河ドラマ、絶対人気が出るから読んでみない?」
先輩からお借りして半月。わたし、長編にのめり込むまで結構時間がかかるのです。で、ほかの本を読んでいるうちに、しばらく積みっぱなしでした。すみません……。
読み始めたら読み始めたで、いろいろと都合の悪いことが重なり、でも、なんとか軌道に乗ってきましたよ。下巻もペースアップできそうな予感がします!
わたしは浅井の三姉妹では特にお初が好きなので、この物語の解釈には結構「あれっ?」という感じなのですが、どちらかというと苦手な方の茶々が魅力的で、楽しんで読みました。
主人公の江は、「赤毛のアン」タイプではないでしょうか。言いたいことをつるっと口に出してしまうけど、みんなに愛される。戦国時代に天下人たる秀吉に喧嘩を吹っかけるようなことを言って、それでも可愛がられるなんて、当時の時代背景からは考えられない設定だとは思いますし、「秀吉様」とか「家康様」とか呼びかけるなんてあってはならないことなんですが、ドラマとは時代ものを使った現代人を描くものです。仕方がない。
そう思って読むといろいろと「現代だからこそわかる伏線」が見えてきます。
この人と結婚するんだなーとか、あー、歴史上の事実をそういうふうに捉えたかとか。どうも「歴史の陰に江の一言あり」っぽくて残念なのですが、まあ、大河ですから。
この巻で好きな場面は、お市の方が越前北の庄で勝家とともに死を選ぶところ。茶々には短刀、初には元結、そして江には信長の形見である「天下布武」の印を与え、浅井と織田の血筋を残すように語るのです。そして、秀吉に「邪心を抱くことなく」娘たちの後見をするように文を書く。
先輩は、「秀吉がすごくかわいい男に見えてくるよ」と語っていたのですが、うんうん、わかります。
茶々が産んだ子供は本当に秀吉の血をひいているのか、例えば石田三成あたりの子ではないかというような話題はよくありますが、ほだされるというかなんというか、茶々の気持ちはよく伝わってくる。
この時代の人物では「おね」(わたしの心の中ではやはり「ねね」なのですが)が好きなので、江とのふれあいや優しさに満足です。
おそらく、テレビにするのであれば、もっと細かいところまで描かれるのだと思います。姉妹の乳母たちが婚姻まで姿を現さない(名前すらない)のがちょっと気になりましたが、映像なら出てきますよね。
江の乗馬シーンもいいと思います。勝家が上の者の立場を示す部分もすばらしい。映像を見てから読むとさらにおもしろいのかも。
では、明日は下巻でお目にかかれますように(笑)。